森本啓太 Where we once stood 2025 © Keita Morimoto Courtesy of KOTARO NUKAGA 撮影:すべて編集部(諸岡なつき)
金沢21世紀美術館では、若手作家を紹介する個展シリーズ「アペルト」の第19弾として、森本啓太の展覧会「what has escaped us」が5月20日から10月5日まで開催している。展覧会は入場無料。担当学芸は同館の立松由美子、三浦大地。

1990年大阪生まれの森本は、16歳でカナダに移住し、オンタリオ美術大学で古典的絵画技法を学んだ経歴を持つ。森本の作品は、日本の現代都市を舞台に、見る者に既視感を抱かせる幻想的な世界を描き出す。夜の街角、自動販売機、ファストフード店の照明に照らされる若者たちなど、私たちの日常のすぐ隣にあるような、共感性が高いノスタルジックな風景を切り取る。

今回の展覧会では、森本が近年発表した《Between Our Worlds》(2024)などの作品を中心に、人工の光と影の表現を通して都市の虚構性と人間の孤独を描く最新作を展示。古典絵画の画家が現代都市を見たら公衆電話をモチーフに選ぶのではと描いた《This stays between us》(2024)も会場に並ぶ。
初めて挑戦したという立体作品《Wunderkammer》も見逃せない。「宝物が詰まったような、自分なりのヴンダーカンマー(驚異の箱)を作ってみたらどうなるか」という考えのもの制作したという。作品が発する光は午前中は黄色っぽく、午後は夕方のようなブルーに変わるそうだ。
森本はこれまで、フランスの大手画廊であるアルミン ・レッシュ ギャラリーでの展示やアートバーゼル香港など国際的な舞台でも注目を集め、今後はコペンハーゲンの美術館での個展も控えている。次世代アートシーンの旗手として期待される存在だ。
担当学芸の立松は「箱ものである美術館のなかに、驚きの箱(ヴンダーカンマー)である作品が詰まっている、入れ子構造的な側面を持つ本展を楽しんでほしい」と述べた。