写真家・川内倫子の個展、「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」が東京オペラシティ アートギャラリーで開幕する。会期は2022年10月8日から12月18日まで。
川内の作品は、柔らかい光をはらんだ淡い色調を特徴とし、初期から一貫して人間や動物、あらゆる生命がもつ神秘や輝き、儚さ、力強さをとらえてきた。身の回りの家族や植物、動物などの日常のなかにある儚くささやかな存在から、火山や氷河といった長い時を経て形成される大地の営みにまで、写真家の眼差しはそのすべてに等しく注がれている。
国内では約6年ぶりとなる今回の大規模個展では、この10年の活動に焦点を当て、未発表作品・新作を織り交ぜながら、作品の本質に迫る。
本展のメインとなる新作シリーズ「M/E」は「母(Mother)」「地球(Earth)」の頭文字であり、続けて読むことで「母なる大地(Mother Earth)」や「私(Me)」となる。アイスランドや北海道の氷河や雪景色、コロナ禍で撮影された日常の風景が、川内の視線を介して柔らかに結びつくことだろう。
中山英之建築設計事務所が会場デザインを担当した展示空間では、写真作品のみならず2018年に出版した写真絵本『はじまりのひ』を朗読したサウンドを取り入れたり、薄い膜状の構造体が登場するなど、展覧会全体でひとつの体験となることが目指されている。鑑賞者と作品との距離や、空間を移動する際の感覚までもが考え抜かれた会場で、ぜひ作品を堪能してほしい。