村上隆 Photo by Museum of Fine Arts, Boston ©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
今年開館90周年を迎える京都市京セラ美術館から、2023年度の主催展覧会の内容が発表された。
まず注目したいのは2024年2月スタートとなる「京都市美術館開館90周年記念展「村上隆(仮称)』」(2024年2月3日~6月30)。マンガやアニメといったポピュラーカルチャー、ファッションアイコンなどの引用やそれらとのコラボレーションを通して、アートの価値や本質的な意味を問いかけてきた村上隆。事実上、欧米の文脈がメインストリームになっている現代美術のシーンにおいて、日本に根ざした様々な要素を独自の視点で用いながら国際的な存在感を示してきた彼の活動を振り返る絶好の機会になるだろう。京都とその歴史を参照した新作も構想中とのこと。

秋の注目展覧会は「京都市美術館開館90周年記念展『竹内栖鳳(仮称)』」(2023年10月7日~12月3日。前期は11月5日まで、後期は11月7日から)。近代京都の日本画界にきわめて大きな影響を与えた画家・竹内栖鳳。「写生」を重視しながら、抜群の筆力で生き生きとした作品を生み出し、近代京都日本画の礎を築いていったその歩みを、同館所蔵の重要文化財《絵になる最初》など、若手時代から円熟期までの代表作から辿る大回顧展となる。


収蔵品をテーマにそって特集するコレクションルームでは、「日本のモダン」という切り口で昭和初期の美術や工芸を特集する「魅惑の昭和モダン」(3月10日~6月18日)、伝統的な制作技法を踏襲し、意匠を凝らした型絵染の作品を手がけた稲垣稔次郎の個性的な表現とその遊び心に触れる「人間国宝 稲垣稔次郎―遊び心に触れて―」(6月23日~9月24日)が春と夏に開催。


秋と冬には、同館で開催された「美大作品展」で発表した、高さ8メートルに組み上げられたダンボールの構築物が時間経過とともに崩壊していく様子を撮影した《Tardiology》で知られる野村仁と、彼が師事した辻晉堂、堀内正和の作品を起点とし、戦後彫刻が歩んだ《Tardiology》にいたる道程を紹介する「Tardiologyへの道程」(10月27日~12月17日)、大正期から昭和期にかけて変化していった日本画の表現に注目する「昭和前期の日本画と古典」(12月22日~2024年2月25日)が開催される。


このほかにも、新進作家の育成・支援に力を入れるミニ個展ザ・トライアングルでは、米村優人(6月20日~9月24日)、山本雄教(10月13日~2024年2月12日)、嶋春香(24年3月5日~6月23日)の3名が新作を発表する。次代のアーティストたちの活動に注目だ。


今回紹介したのは美術館の主催企画だが、2023年度には「生誕100年 回顧展 石本 正」(2023年4月4日~5月28日)、「マリー・ローランサンとモード」(4月16日~6月11日)、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(6月27日~9月24日)、「井田幸昌展 Panta Rhei|パンタ・レイ―世界が存在する限り」(9月30日~12月3日)、「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 ー 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」(2024年3月20日~7月7日)も開催される。あわせてチェックしたい。