
会場風景
台湾の台中市立美術館で、真鍋大度の個展「RELATIONAL TIME - Life Beyond Simulation(關係時態:超越模擬的生命形式)」が開幕した。会期は2027年1月3日まで。真鍋にとって初となる海外での大型個展で、同館の3つの展示室それぞれに合わせた新作を展示している。人工生命、AIエージェントの集団、ショウジョウバエの神経回路という異なる素材を扱いながら、どの部屋も訪れるたびに違う姿を見せる。

1976年、東京生まれの真鍋大度は、大学で数学を学ぶかたわら、プログラミングやDJの活動を始めた。その後、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)で音楽と音響設計を学び、のちに長く協働することになる石橋素と出会う。2006年にはライゾマティクスを設立し、坂本龍一やPerfume、ビョークとの共作、リオデジャネイロ大会の閉会式で行われた東京への引き継ぎセレモニーなど、ポップカルチャーと先端技術の両方にまたがる仕事を手がけてきた。

真鍋は以前から自身の実験映像をYouTubeで公開しており、その始まりは約20年前に投稿された筋電センサーのテスト動画にさかのぼる。筋肉が収縮するときに生じる微弱な電気信号で外部の機器を動かし、身体を楽器のように扱うという内容で、ロボットダンスを思わせる動きに合わせて音が鳴っていく。本展のキュレーターを務めるのは、香港の微波国際新媒体芸術祭(Microwave International New Media Arts Festival)のプログラムディレクター、鄺佳玲(ジョエル・クォン)。キャリアの初期にネット上で真鍋の実験映像に出会って衝撃を受け、以来その活動を追い続けてきたという。
展覧会のタイトル「RELATIONAL TIME - Life Beyond Simulation」には、機械が1秒で数千通りの未来をシミュレーションできるのに対し、人間が信頼や記憶を築くには時間がかかるという対比が込められており、関係は時間をかけてはじめて生まれるという考えが展示全体の土台になっている。真鍋自身は本展について次のように語っている。
「生成AIが知性や創造性を急速に塗り替えていく時代に、アーティストはかつてない問いに直面しています。しかし人間の身体や神経系は、コンピュータの処理とはまったく異なる時間のスケールを生きています。この展覧会は、人間の知覚を機械の速度に溶け込ませるためのものではありません。互いの違いを保ったまま、私たちの神経のリズムと計算のロジックを作用させ合うことを目指しています」


会場となる台中市立美術館は、SANAAが設計した複合施設「台中緑美図」の中にある。展示室の天井高は4mから10mにおよび、作品の音響システムはすべて日本から運び込まれた。日本、香港、台湾のチームが技術面の調整を重ね、建築空間そのものを展示の一部として取り込んでいる。