
マリウス葉 撮影:タケシタトモヒロ
11歳のときからアイドルグループの一員として活躍し、2022年のグループ卒業と同時に芸能界を引退したマリウス葉。その後、スペインの大学に留学し、PPLE(哲学・政治・法律・経済学)のコースで学位を取得した彼はいま、アートの世界に魅了されている。2024年には「Art Collaboration Kyoto」に「Tastemaker」として参加。その後も雑誌連載やSNSなどを通じて、訪れた展示の感想やアートの魅力を発信している。かつてはギャラリーに対して苦手意識もあったというマリウスをアートの魅力へと引き込んだものとはなんなのか。よく訪れる美術館のひとつだという東京・ワタリウム美術館で開催中の「没後20年 ナムジュン・パイク| じゅげむ展」(会期は11月23日まで)の会場で話を聞いた。
──マリウスさんがアートに深くのめり込んだのは、ベルリンのアートコミュニティとの出会いがきっかけだったそうですね。どんなところが魅力的だったのでしょうか。
姉がベルリンに住んでいるのもあって、2023年に9ヶ月ほどベルリンに住んでいたのですが、そのときにギャラリー・ウィークエンドのイベントがあったんです。そこで、アーティストやギャラリーで働いている人たちと仲良くなり、そのコミュニティのヒエラルキーのなさに圧倒されました。誰がアーティストで、誰がギャラリーで働いている人で、誰がコレクターなのか区別がつかなくて、みんながただそこに集まって、ひとりで見ている人もいれば、話をしている人もいたりして。
それまで、ギャラリーは自分が入れなさそうな空間だというふうにも感じていたんです。コレクターでもないし、買うためにアートを見てきていなかったので。でもそこでは、アートが商品として扱われるよりも、生きているものとしてあったというか。アートがその場にいる人たちをつなぐきっかけになっていて、アートだけでなく、見ている人たちみんなが主役、という感じがすごく好きだったんです。それに、ベルリンに来る前は自分が見られる側だったので、見る側に移ったこともすごく新鮮だったんですよね。

──昔はギャラリーのビジネス的な側面に抵抗感があって敬遠していたと過去のインタビューでも仰っていましたが、そうした印象も変わりましたか?
そうですね。以前は、アートは買うもので、お金持ちの趣味だという印象が、なぜか自分のなかで定着してしまっていたのかな。ベルリンにいた頃は、アイドルの自分が商品として活動していた後だったので、その反動ではないですが、なんでも商品化されてしまう世の中に少し葛藤を感じていて、自分のなかでも反資本主義的な気持ちが大きくなっている時期だったんです。ベルリンは、パリやロンドンと比べたら生活費も高くないですし、いろんな人が集まっていて、アートを商品化することに反抗するような空気も感じたので、入り口としては入りやすかったですね。

でも、いまはそのようなアレルギーはないです。どこにでも、広く知られていないアーティストはたくさんいて、作品が購入されたことがきっかけで保存されて、もしかしたらそれが数年後、数十年後、数百年後にどこかの美術館で公開されるかもしれない。アーティストもお金がないと生きていけないし、アートを買うことの重要性や、ギャラリー、コレクターの役目についても理解しています。密かに自分もいつかコレクターになりたいなって思っています。