最終更新:2021年10月21日

「見て遊べる」秋のデザインイベント、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」レポート

東京ミッドタウンで、“デザインを五感で楽しむ”をコンセプトにしたイベントが開催中。(文、写真:角尾舞[ライター、キュレーター])[AD]

秋の恒例行事となった「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2021」が、11月3日(水・祝)まで開催中。また、アルスエレクトロニカと共同で「未来の学校 -OPEN STUDIO-“みらいのピクニック展” わたしたちの新しいコモンズ」も同時開催している。
いまだ感染症対策は欠かせないため、触って遊べるものは少ないが、これまでとは違う角度ながらも子供との会話もはずむ作品が東京ミッドタウンに集まった。

今年のテーマは「デザインの裏 – Behind the Scenes of Design -」 。デザインの裏側というと、制作背景や過程などを思い浮かべるが、三者三様の「裏」を解釈した作品が集まった。

未来をひらく窓―Gaudí Meets 3D Printing

会場風景より、光をテーマにした「太陽と月の窓」と鈴木啓太

建築界の巨匠、アントニ・ガウディの窓を新しい視点でとらえた「未来をひらく窓―Gaudí Meets 3D Printing」は、YKK APがプロダクトデザイナーの鈴木啓太(PRODUCT DESIGN CENTER)と制作した、未来の窓のプロトタイプの提案。

「窓は四角い」というイメージがあるが、これは近代以降に建築部材も大量生産が主となり、規格が統一されたから。ガウディが活躍していた時代の窓は手仕事で作られていたため、形状も様々だった。しかし、現代の生産技術のひとつである3Dプリンティングなどの造形技術を使えば、規格にとらわれない窓を作ることも可能なのだ。

今回、ガウディ建築の協力のもと、光、風、そして音をテーマに3種類の窓が会場に登場した。ガウディは自然の法則を取り入れた建築家として有名だが、それは形状だけではない。建築の内部と外部をつなぐ役割である窓においても、太陽の高度から窓の位置を考えたり、風の通り道を設計したり、聖堂の鐘が街に響くような開口部を設けたり。そのようなガウディの窓からインスピレーションを受けて、鈴木は新しい窓を設計した。

たとえば作品のひとつである《音の窓》は、内側にカーブがかかっているホーン型の形状のため、室外から室内へと音を拡張して取り入れられる。セラミックを出力できる3Dプリンタで造形した後に、陶芸家の山田隆太郎が釉薬をかけた。楽焼と同じ技法で仕上げており、一点ずつ表情が異なる。

3Dプリンタだけで完結するのではなく、様々な職人とあえて協業するかたちにしたのは、職人を束ねて新しい作品を生み出した、ガウディのクリエイティブディレクター的側面へ敬意を示したものだという。

「ガウディが生きた時代のカタルーニャは、不安定な情勢が続いていました。それはいまのコロナ禍にも少し通じるものがあります。不安定な時勢で『自然』という普遍的な拠り所を求めていたのではないかとも感じ、それはコロナ禍で生きる自分も同じでした。それが今回の『人と自然を繋ぐ触媒としての窓』というコンセプトへ昇華していきました」と鈴木は話す。

ちなみに、鈴木はTOKYO MIDTOWN AWARD 2008で審査員賞を富士山グラスで受賞したことがキャリアの起点にもなっている。今年のTOKYO MIDTOWN AWARD 2021では、トロフィーをデザインした。

会場風景より、鈴木啓太がデザインしたTOKYO MIDTOWN AWARD 2021のためのトロフィー

unnamed -視点を変えて見るデザイン-

会場風景より、noiz《unnamed -視点を変えて見るデザイン- 》。子供の遊具を思わせる、カラフルな作品たちが並ぶ

芝生広場には、建築・デザイン事務所のnoizによる《unnamed -視点を変えて見るデザイン- 》が登場。一見しただけでは単管とパネルが組み合わされているだけのオブジェだが「ある視点」を見つけると、思わずニヤッとしてしまうシルエットが現れる。いまのタイミングにフィットした「触らなくても楽しめる遊具」とも言えるだろう。noizが得意とする、コンピュータでシミュレーションして生み出された造形だ。

会場風景より、noizの豊田啓介と平井雅史

「カルチャーや時代を飛び越えて、言葉や文字の説明がなくてもわかる『子供のおもちゃ』をトリックアートの題材に選びました。固まったかたちではなく、見る視点によって変わるものです。1つのオブジェに対して、インターナショナルでボーダーレスな2つのかたちを埋め込んでいます」とnoizの豊田啓介は話す。

正面から見るとなにかわからないけれど……?

ある視点を見つけると、かわいいモチーフが現れる

ヒントは芝生に書いてある。ぜひ残りの5つは「子供の視点」で隠れた姿を探してほしい。

ウラファベット

会場風景より、《ウラファベット》と大日本タイポ組合の2人(左:秀親、右:塚田哲也)

ミッドタウン・ガーデンの小道には、木々のなかに色鮮やかなフラッグが掲げられた。塚田哲也と秀親による大日本タイポ組合の《ウラファベット》は、イラストの作品。彼らの作風通り文字を題材にしている。普段は和文をモチーフにすることが多い大日本タイポ組合だが今回はタイトルの通り「六本木なのでアルファベットにしました」と塚田は言う。

フラミンゴの身体を反転すると……?

たとえば、フラミンゴやニワトリ、クロネコが虹とUFOと共にいるこの1枚。フラミンゴやひよこの身体に注目すると、何かが見えてくるかもしれない。

「何が起きているのか、言わなくても想像してもらえたらよいと思いました。ただきれいな絵だなと思って見ていると、何か文字っぽいものが見えてくる。不思議がる心と気付きが、作品のねらいです」と塚田は話す。じっくり眺めていると「ひょっとして?」と思う瞬間があるはずだ。想像しながら裏に回ると、文字と単語が答えあわせできる。なんの文字が隠れているか、ぜひ歩きながら考えてみてほしい。外苑東側から入るのがオススメだ。

未来の学校 -OPEN STUDIO-“みらいのピクニック展” わたしたちの新しいコモンズ

東京ミッドタウンがアルスエレクトロニカと共同で開催する「みらいのピクニック」は、アート作品を通じて、私たちの新しい日常を見つめ、これからのコモンズについて考える。ミッドタウン・ガーデンの芝生エリアに3つの作品が登場した。

会場風景より、《Rope》とアルスエレクトロニカ フューチャーラボの久納鏡子

《Rope》は、イーフ・スピンセマイユの作品。長さ12m、太さ30cmの巨大なロープは、アーティストと一緒に世界のあちこちを旅している。一時的に様々な場所に置かれ、人々が自由に座ったり、遊んだりすることができる。そしてその日にあった出来事はRopeが自分で(!)日記に書いている。引っ張って移動させることもできるが、ひとりではなかなか動かせない。その場での会話やコミュニケーションも生み出してくれるかもしれない。

会場風景より、《Air on Air》。ウェブサイトにアクセスし、マイクに息を吹きかけて参加する

《Air on Air》は、インターネットを介して「息」を届けるインスタレーション。ウェブサイトにアクセスして、マイクに向かって息を吹きかけると、ミッドタウンでシャボン玉が生まれる。

移動に制限がかかってしまったコロナ禍において、その場に行けない人やオンラインで集う人を、どうつなぐかをテーマに制作したという。この装置を使えば、世界中のどこからでも六本木のミッドタウンにシャボン玉を飛ばすことができる。そこにいない人の存在を、シャボン玉を通じて感じることができる作品である。

インタラクティブメディア研究者・アーティスト筧康明と、プログラマの赤塚大典、そして筧が主宰する研究室(東京大学/慶應義塾大学)のメンバーである藤井樹里、吉川義盛、伊達亘、reckhahnが制作した。

会場風景より、不思議なかたちのピクニックシート

ひょうたんのような、アメーバのようなかたちのピクニックシートは、となりの人と自然に距離を作って座ることのできる形状である。質問に対して、ハッシュタグをつけてSNSに投稿すると、意見がミッドタウンに届くようになっている。東京ミッドタウンとアルスエレクトロニカによる、新しいピクニックの提案である。

この2つのイベントのほかにも、TOKYO MIDTOWN AWARD 2021 の受賞作品や、DESIGNART TOKYO 2021の出展作品である、進藤篤による《BLINK》とM&T(池田美祐、倉島拓人)による《L.F.M》が、ミッドタウン館内で展示されている。様々な「裏側」からデザインを楽しめるイベントに、感染症対策をしながら出かけたい。

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