公開日:2023年4月8日

柳宗悦からMOGI Folk Artまで。「民藝 MINGEI― 美は暮らしのなかにある」が大阪中之島美術館で7月開幕、全国巡回へ。本展を通して結びつく暮らしのむかしといま

大阪中之島美術館で7月8日から9月18日まで開催。福島、広島、東京、富山、愛知、福岡にも巡回

竹行李 陸中鳥越 1930年代(写真上) 刺子足袋 羽前庄内 1940頃(写真下) いずれも日本民藝館蔵 Photo by Yuki Ogawa

民藝が示した暮らしのインスタレーション

約100年前に思想家・柳宗悦が説いた「民藝」を、「衣・食・住」をテーマにひも解く展覧会「民藝 MINGEI― 美は暮らしのなかにある」大阪中之島美術館で開催される。会期は7月8日から9月18日。

日々の生活のなかにある美を慈しみ、素材や作り手に思いを寄せる民藝のコンセプトは、今日の人々との暮らしとますます身近になっている。今回の展覧会では、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々約150件を展示。また、いまに続く民藝の産地を訪ね、そこで働く作り手と、受け継がれている手仕事も紹介する。

展覧会チラシビジュアル

日本各地や朝鮮半島などを調査・研究し、民衆の暮らしに息づくデザインの豊かさとそこから導かれる美や表現の可能性を見出していった柳宗悦は、1925年に民藝の概念を提唱し、36年には日本民藝館を開設した。一連の活動のなかでも、41年に同館で開催した「生活展」は、暮らしのなかで民藝を活かす手法をモデルルームのように提示する内容が当時珍しく、画期的だったという。いまで言うテーブルコーディネートを展示した画期的なものだった。今回の展覧会では、実際に出品された作品を中心に、「生活展」の再現を試みる。

日本民藝館「生活展」会場写真 1941

また、日本のみならず朝鮮半島の各所、中国や欧米などで柳が収集した陶磁、染織、木工などあらゆる工芸品や、絵画、家具調度などの品々を「衣・食・住」に分類して紹介。そして、柳が亡くなったあとの展開も追っていく。濱田庄司芹沢銈介外村吉之介が1972年に出版した『世界の民芸』では、欧州各国、南米、アフリカなど世界各国の品々を通して、各地の気候風土、生活に育まれたプリミティブなデザインに視野を広げた。さらに民藝運動により注目を集めた日本各地の産地から大分(小鹿田焼)、兵庫(丹波布)、岩手(鳥越竹細工)、富山(八尾和紙)、岡山(倉敷ガラス)の5つをピックアップし、現在も作られている民藝の品々や、そこで働く人々の“いま”を紹介する。

スリップウェア角皿 イギリス 18世紀後半‐19世紀後半 日本民藝館蔵 Photo by Yuki Ogawa
蓑 岩代檜枝岐 1930年代 日本民藝館蔵
木綿切伏衣 北海道アイヌ 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
八尾和紙(富山) Photo by Yuki Ogawa

展覧会後半では、セレクトショップBEAMSのディレクターとして長く活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしてきたテリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Art ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションも登場。柳が説いた生活のなかの美、民藝とは何か、そのひろがりといま、そしてこれからを展望する展覧会となるだろう。

MOGI Folk Art ディレクターのテリー・エリスと北村恵子 Photo by Yuki Ogawa
(上から)緑黒釉掛分皿 因幡牛ノ戸 1931頃/流描皿 河井寛次郎 京都 1927-28頃/藍鉄絵紅茶器 濱田庄司 栃木 1935頃 いずれも日本民藝館蔵 Photo by Yuki Ogawa

なお、全国巡回は以下の通り。

福島会場
いわき市立美術館 2023年10月8日(土)~12月17日(日)

広島会場
東広島市立美術館 2024年2月10日(土)~3月24日(日)

東京会場
世田谷美術館 2024年4月~6月頃(予定)

富山会場
富山県美術館 2024年7月~9月頃(予定)

愛知会場
2024 年10月~12月頃(予定)

福岡会場
2025 年2月~4月頃(予定)

*レビューはこちら

*世田谷美術館(東京)のレポートはこちら

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