公開日:2022年3月19日

民藝の父・柳宗悦が選んだ「美しさ」。日本民藝館で「美の標準—柳宗悦の眼による創作」が開催中

日本民藝館のコレクションを「柳の眼による創作」として展示。ときに力強く、ときに研ぎ澄まされ、ときにかわらしい、現代の感覚にも通じる多彩な美を楽しめる。

会場風景より

東京都近代美術館で今年2月まで開催された「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」展も好評のうちに幕を閉じ、近年あらためて注目を集めている民藝。その民藝の「父」とも言われる思想家、柳宗悦の審美眼を堪能できる展覧会「美の標準—柳宗悦の眼による創作」が3月20日まで日本民藝館で行われている。

会場風景より
会場風景より、左から《色絵人物図皿》(フランス、19世紀)、《スリップウェア 水注》(イギリス、18世紀)

日本民藝館は、民藝という美の概念の普及と「美の生活化」を目指すために宗悦が企画し、多数の賛同者の援助を得て1936年に開設された場所。言わば宗悦のお膝元でもある民藝運動の本拠地での展覧会となる。

宗悦が収集した同館の所蔵品は、時代や産地、用途などが異なりながら同一の美しさが通底。柳はその美を「不二美」「美醜なき美」などと呼び、「美の標準」として広く真価を問うたという。柳は初期の茶人達が見立てた井戸茶碗について、以下のように述べているという。

「『井戸』は朝鮮の作というより、茶人たちの直観の創作であった」(「禅美に就いて」1958)

会場風景より
会場風景より、《文字絵》(朝鮮半島、19世紀後半〜20世紀初頭)
会場風景より《文字絵》(朝鮮半島、19世紀後半〜20世紀初頭)部分

本展は、初期の茶人達が見立てた井戸茶碗と同様、同館のコレクションを「柳の眼による創作」として展示。ときに力強く、ときに研ぎ澄まされ、ときにかわらしい、現代の感覚にも通じる多彩な美を楽しめる。

会場風景より、《加彩舞女》(7世紀)、《古染付周茂叔文鉢》(景徳鎮窯、17世紀)

企画展に訪れたなら、同じ規模で展開される併設展も見逃せない。

たとえば、1階の第1室と第2室では陶芸家の河井寛次郎と版画家の棟方志功という、創作において師弟であったふたりの作品を展示し、第3室では染色工芸家の芹沢銈介の多彩な型絵染の世界を紹介。2階では陶芸家の浜田庄司が手がけた抹茶碗77点や、民藝運動の思想を海外へ普及させる立役者でもあるバーナード・リーチの素描や焼き物、宗悦の実践などが示される。

会場風景より、河井寛次郎と棟方志功共作の《火の願ひ》(1946)
会場風景より
会場風景より、浜田庄司《鉄砂刷毛目茶碗》(1937)
会場風景より
会場風景より、バーナード・リーチ《楽焼莵文皿》(1919)

野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

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