公開日:2025年8月6日

森美術館の2026年スケジュールが発表。ロン・ミュエク展、森万里子展など、時間と人間の本質を問う

ロン・ミュエク展(2026年4月29日〜9月23日)、森万里子展(2026年10月31日〜2027年3月28日)が開催予定

ロン・ミュエク イン・ベッド 2005 所蔵:カルティエ現代美術財団 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館 2025 撮影:編集部

森美術館の2026年度スケジュールが発表された。戦争や自然災害など世界各地で混迷や不安が拡がるなか、人間とは何か、感情とは何か、我々はどこから来て、どこへ向かうのか——こうした根源的な問いを、現代アートを通してあらためて考察する展覧会群が企画されている。

ロン・ミュエク展(2026年4月29日〜9月23日)

2026年春から秋にかけて開催される「ロン・ミュエク展」は、具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家の日本での16年ぶりとなる個展だ。

ロン・ミュエク イン・ベッド 2005 所蔵:カルティエ現代美術財団 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館 2025 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

ロン・ミュエク(1958年オーストラリア生まれ、英国在住)は、1997年にロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展への参加で注目を集めて以来、世界各地で個展を開催してきた。人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねて制作されたミュエクの作品は、孤独、脆さや弱さ、不安、レジリエンスといった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現している。実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さく造られるその彫刻は、スケールの相対性や知覚に対する先入観への挑戦でもある。神秘的でありながら圧倒的な存在感を放ち、私たちと身体との関係、そして存在そのものとの関係を問いかける。

ロン・ミュエク 枝を持つ女 2009 所蔵:カルティエ現代美術財団 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館 2025 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

本展は、作家とカルティエ現代美術財団との長きに渡る関係性によって企画されたもので、2023年パリの同財団での開催を起点とし、ミラノとソウルを経て、森美術館で開催される。日本では、2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、2度目の個展となる。大型作品を中心に、初期の代表作から近作まで10点余りを展示。フランスの写真家・映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドによる作家のスタジオと制作作業を記録した貴重な写真作品と映像作品も併せて公開し、作家の制作を包括的に紹介する。

森万里子展(2026年10月31日〜2027年3月28日)

美術、哲学、科学を統合させ、未来を展望する作品を発表してきた森万里子(1967年東京生まれ、ニューヨーク、東京および宮古島在住)。国内では24年ぶりの美術館での個展となる本展は、30年以上にわたる実践を総覧する大規模展となる。

森万里子 エソテリック・コスモス:ピュア・ランド 1996-98

1990年代、ポストヒューマンやサイボーグ的アイデンティティを演じる作品で国際的に注目された森。その関心は、近未来的な世界観と日本のアニメ文化を融合させた美学から出発し、日本の自然信仰、仏教といった古代思想や精神世界へ、さらには縄文、ケルトなどの古代文化へと徐々に拡張してきた。同時に、量子論、宇宙物理学、神経物理学にも接点を求め、第一線の科学者やエンジニアとのコラボレーションも実現。2000年以降は、没入型の空間体験を促す大型インスタレーションの制作にも取り組んでいる。

森万里子 Wave UFO 1999-2002 展示風景:「森万里子:Wave UFO」ブレゲンツ美術館(オーストリア) 2003 撮影:リチャード・リーロイド

森の作品に共通するのは、過去と未来を横断する時間の超越性だ。この探求は、仏教的な宇宙観を起点に、あらゆる物事の相互関連性を希求する「Oneness」というコンセプトへとつながっていく。2010年には、自然環境と人類のつながりを考えるパブリックアートを六大陸に恒久設置することを目指し、ファウンデーション公益財団を設立。すでにブラジルと宮古島でプロジェクトを実現している。

本展は、2002年に東京都現代美術館で開催された「森万里子 ピュアランド」展以来の大規模個展となる。インタラクティヴなインスタレーション、彫刻、ビデオ、写真、ドローイング、パフォーマンスなど約80点が一堂に会し、初期から最新作まで代表作を網羅。作品資料やアーカイヴも初公開される。ヒューマニティーやエコロジーという全世界共通の課題に対し、示唆に富んだ内容となるだろう。

森万里子 トムナフーリ 2006 撮影:リチャード・リーロイド

3年にいちどの「六本木クロッシング2025」も開催

これらの展覧会に先立って、3年にいちどの、日本の現代アートシーンを定点観測的に概観する展覧会「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」も開催される。これまで若手からベテランまで多様なアーティストを、ユニークなテーマのもとに紹介してきた同展が、今回はサブタイトルを「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」とし、"時間"という抽象的でありながら普遍的なテーマに挑む。会期は12月3日から2026年3月29日まで。

A.A.Murakami ニュー・スプリング 2017 展示風景:「Studio Swine x COS, NewSpring」 ミラノサローネ 2017

参加作家にはA.A.Murakami、ケリー・アカシ、アメフラシ、荒木悠、ガーダー・アイダ・アイナーソン、ひがれお、廣直高、細井美裕、木原共、金仁淑、北澤潤、桑田卓郎、宮田明日鹿、Multiple Spirits、沖潤子、庄司朝美、シュシ・スライマン、和田礼治郎、マヤ・ワタナベ、キャリー・ヤマオカ、ズガ・コーサクとクリ・エイトが名を連ねる。詳細はニュースをチェック

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