堆肥壁画全体像(2025 年 7 月 4 日)
三重県伊賀市在住の画家・岩名泰岳がアートディレクターを務め、地元企業である株式会社エム・シー・エスの従業員とともに、堆肥を絵具として用いた巨大な壁画作品を完成させた。

設置場所は、同市島ヶ原にあるエム・シー・エスの島ヶ原支店内。食品廃棄物を堆肥化処理する環境企業である同社が、自社製造した堆肥を直接的なマテリアルとし壁画を制作。アートを通じて循環型社会への意識を喚起することを目指した。
完成した壁画は、縦約2m、横約10mに及ぶ大作で、岩名とエム・シー・エスの従業員9名とともに約1ヶ月をかけて制作された。現場で日々働く視点から従業員が壁に絵を描き、岩名が壁画として仕上げた。微生物の営みや宇宙的なスケールを想起させる画面には、堆肥という素材そのものの変容性と、土地との共生を志向するイメージが表れる。

壁画に用いられた堆肥は、風雨や紫外線によって徐々に剥落していく。だが、その堆肥は壁面下部に設置された花壇へと落ち、落花生やバジルといった植物の養分として再び活用される。描いて終わるのではなく、分解と再生を繰り返すアート作品そのものが、植物や土、そこから得られる食品の「循環」を身体的かつ視覚的に訴えかける。

企業とアーティストが協働し、日常の労働と表現を架橋するエコロジカルなアートの実践となった。
堆肥壁画は、日曜を除く平日9時〜12時/14時〜17時のあいだ、誰でも予約不要・無料で見学可能。また、制作過程の映像やプロジェクトの記録は、エム・シー・エスの公式Instagram(@mcs.organic.compost)でも公開されている。
