公開日:2025年7月14日

【アート×企業×環境】画家・岩名泰岳と三重県の企業が「堆肥」を絵具に。工場に10mの巨大壁画、循環型社会の可視化を図るアートプロジェクト

株式会社エム・シー・エスが、三重県の島ヶ原支店工場内で自社製造の堆肥を絵具として用いた壁画を制作。エコロジー×アートの新たな実践

堆肥壁画全体像(2025 年 7 月 4 日)

食品廃棄物が壁画に

三重県伊賀市在住の画家・岩名泰岳がアートディレクターを務め、地元企業である株式会社エム・シー・エスの従業員とともに、堆肥を絵具として用いた巨大な壁画作品を完成させた。

堆肥壁画

設置場所は、同市島ヶ原にあるエム・シー・エスの島ヶ原支店内。食品廃棄物を堆肥化処理する環境企業である同社が、自社製造した堆肥を直接的なマテリアルとし壁画を制作。アートを通じて循環型社会への意識を喚起することを目指した。

制作風景

完成した壁画は、縦約2m、横約10mに及ぶ大作で、岩名とエム・シー・エスの従業員9名とともに約1ヶ月をかけて制作された。現場で日々働く視点から従業員が壁に絵を描き、岩名が壁画として仕上げた。微生物の営みや宇宙的なスケールを想起させる画面には、堆肥という素材そのものの変容性と、土地との共生を志向するイメージが表れる。

岩名泰岳 「堆肥壁画に関するドローイング」 2025 コンテ、紙
制作風景

壁画に用いられた堆肥は、風雨や紫外線によって徐々に剥落していく。だが、その堆肥は壁面下部に設置された花壇へと落ち、落花生やバジルといった植物の養分として再び活用される。描いて終わるのではなく、分解と再生を繰り返すアート作品そのものが、植物や土、そこから得られる食品の「循環」を身体的かつ視覚的に訴えかける。

壁画の下の植物
堆肥絵具

企業とアーティストが協働し、日常の労働と表現を架橋するエコロジカルなアートの実践となった。

堆肥壁画は、日曜を除く平日9時〜12時/14時〜17時のあいだ、誰でも予約不要・無料で見学可能。また、制作過程の映像やプロジェクトの記録は、エム・シー・エスの公式Instagram(@mcs.organic.compost)でも公開されている。

工場の風景
工場の風景

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。