レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread
レイチェル・ホワイトリードによる新作の屋外彫刻作品《Artizon Conversations》が完成。東京・京橋のミュージアムタワー京橋とTODA BUILDINGのあいだに設置されている。
これは、2020年にミュージアムタワー京橋内に開館したアーティゾン美術館が、2010年頃からビルの建て替えと新しい美術館構想のなかで進めてきたプロジェクトの一環として制作されたもの。ミュージアムタワー京橋と、隣接するTODA BUILDINGが構成する「京橋彩区」の「まちに開かれた芸術・文化拠点」づくりという基本理念も踏まえながら街にふさわしい屋外彫刻のあり方について検討を重ねた結果、レイチェル・ホワイトリード、リンディ・リーの2作家への依頼を決定し、7月18日にホワイトリードの新作《Artizon Conversations》が完成した。

レイチェル・ホワイトリードは、1963年、ロンドン生まれ。1993年に女性として初めてターナー賞を受賞し、「ネガティブ・スペース(物体のあいだに存在する空間)」をキャスティング(型取り)する独自の手法による作品で国際的に評価されている。

このたびお披露目された《Artizon Conversations》は、椅子の座面と脚に囲まれた空間(ネガティブ・スペース)をキャスティングした彫刻によるインスタレーション作品で、椅子として座ることが可能。作品には日本国内で採取した希少な大理石が使用されている。椅子のネガティブ・スペースを樹脂でキャスティングした代表作《Untitled(One Hundred Spaces)》(1995)に続くシリーズとして位置付けられており、このシリーズの作品が公共空間に常設展示されるのは、世界で初めて。


オフィスビルが立ち並ぶエリアに設置された大理石の椅子。美術館は、慌ただしい日常のなかで、美術を通して豊かな隙間が立ち現れ、街に新たな会話が生まれることを願ってホワイトリードに依頼をしたという。
作家は《Artizon Conversations》について以下のようにコメントしている。
「今回の作品を設置する場所として提案いただいた、2つの建物の間の通り道は、常に建築物と彫刻との関係性に関⼼を寄せてきた私にとって、⼀度⽴ち⽌まり、誰かと話を交わす場所について思いを巡らせる機会となりました。静かな彫刻と⼈が活動する空間の交差するところ、つまり、ひとりきりになれる、もしくは親しい⼈と共にいることができる場所となることを想像しました。」
2025年6⽉ レイチェル・ホワイトリード


なお本プロジェクトの第2弾となる、オーストラリア出身の作家リンディ・リーの屋外彫刻は、2026年1月に設置予定。道教や禅への関心から「世界と人とのつながり」を表現するリーによる屋外彫刻の常設展示は、今回が日本初になるという。


また関連プログラムとして、2026年3月にはホワイトリードとリーを招いたトークイベントの開催も予定されている。