公開日:2025年9月27日

【開幕レポート】六本木アートナイト2025が開催! 主要会場の見どころを徹底解説。今年は韓国の気鋭アーティストにフォーカス

会期は9月26日~28日。今年のテーマは「都市とアートとミライのお祭り」

会場風景より、《あなたは一人じゃない》

大人気アートイベントが今年も開催

「都市とアートとミライのお祭り」をテーマに、六本木の街で開催されるアートイベント「六本木アートナイト2025」が9月28日まで開催中だ。

美術館や文化施設、大型複合施設、商店街など六本木全域を舞台に、インスタレーション、パフォーマンス、音楽、映像、トーク、デジタルアートなど、約30組のアーティストによる50以上のプログラムを展開する。なかでも注目されるのは昨年から始まった特定の国・地域に焦点をあてる「RAN Focus」。去年の台湾に続き、今年は国交正常化60周年を迎えた韓国に焦点をあてる。

会場風景より、イム・ジビン《JOY》

ここでは、主要会場で開催されている展示の概要と見どころをエリア別に紹介。ぜひ、本イベントを訪れる際の参考にしてみてほしい。

会場風景より、シャオ・シュアン・タン&メーガン・タンの作品

六本木ヒルズ

スタート地点は、本年の「RAN Focus」に選出されたキム・アヨン、カン・ジェウォンの作品が並ぶ六本木ヒルズアリーナだ。

キム・アヨンは、森美術館「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展で紹介されたことも記憶に新しい、気鋭の映像作家。今回は、同展覧会に出品された《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022)の続編のひとつが広場の中央で公開されている。女性の身体の力、そして抽象的で根源的な時間性をテーマとした作品だ。

会場風景より、キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・アーク:0度のレシーバー》

すぐ隣に並ぶのはカン・ジェウォンの巨大彫刻。ジェウォンはデジタルで生成した彫刻を物理的に再現したシリーズを手がける作家だ。こちらは金属のように見えるが、じっさいは空気で膨らませた風船でできており、中は空洞になっている。

会場風景より、カン・ジェウォン《Exo2_crop_xl》

展示は六本木ヒルズ内、セレクトショップESTONATIONの前にもある。《Prism-Aureola》は小野海が日常生活のなかで自然と人が交わる瞬間に着目し制作した彫刻作品だ。

小野海《Prism-Aureola》(部分)

屋内外の様々な場所に作品が散りばめられ、会期中は無料でそれらを楽しめるのが、本イベント最大の特徴。もし迷ったり分からないことがあったら、六本木アートナイトTシャツを着用したスタッフに尋ねてみよう。

会期中は、六本木アートナイトTシャツを着用したスタッフが点在している

同館を象徴する屋外彫刻、ルイーズ・ブルジョワ《ママン》の近くには、その空間に溶け込むかのように、彩り豊かな花が植え込まれている。こちらも、シンガポール出身のシャオ・シュアン・タン&メーガン・タンによるアート作品だ。「人は皆、そっと、けれどたしかに世界に足跡を残していく」という作家の思いから生まれた本作は、廃棄されたアクリルを花のかたちに生まれ変わらせたもの。夜になると静かにライトアップされ、昼とはまた異なる表情を見せる。

会場風景より、シャオ・シュアン・タン&メーガン・タンの作品
シャオ・シュアン・タン&メーガン・タン

麻布消防署用地〜六本木交差点

ハリウッド・ビューティー・プラザのショーウインドウは、インドネシア出身のアーティスト、アリ・バユアジの作品によってジャックされている。今回は海洋プラスチックゴミをアップサイクルして作られた糸をもとに織り上げたテキスタイルを中心に、自然、伝統、そしてサステナビリティが交差するバユアジの多彩な表現が紹介されている。

会場風景より、アリ・バユアジの作品
アリ・バユアジ

次の目的地、六本木交差点に向かう道すがらにある、工事現場とその仮設壁も展示会場のひとつだ。

会場風景
会場風景

麻布消防署仮庁舎の建設予定地であり、現在は空き地となっているこの空間には、島田正道による《Birds fly around with you》がインストールされている。円形の輪に配された羽ばたく鳥のオブジェが、輪の中を人が歩くとセンサーが感知して光るという、鑑賞者に参加をうながすインタラクティブな作品だ。

会場風景より、島田正道《Birds fly around with you》(部分)

六本木交差点前には「六本木アートナイト」の文字が燦然と輝き、イベントの開催を街中へと伝えるネオンが。こちらはアートディレクター/デザイナー奥山太貴が手がけたものだ。

会場風景より、奥山太貴《現在地 feat.六本木アートナイト》

東京ミッドタウン(六本木)

このエリアでぜひみて欲しいのは、今回「RAN Focus」でピックされたアーティスト、イム・ジビンの作品。こちらは、館内外の3ヶ所に展示されている。

会場風景より、イム・ジビン《HELLO》

ジビンは、クマの風船の造形物 「ベアバルーン」を都市の至る所に設置し、鑑賞者が日常のなかで自然にアートと出会うプロジェクト《EVERYWHERE》で知られる。《あなたは一人じゃない》は、2018年平昌冬季パラリンピック競技大会でも設置された作品で、白いクマと黒いクマが互いを抱きしめる姿を通じて、連帯と調和、慰めのメッセージを伝えている。

会場風景より、《あなたは一人じゃない》

館内にはほかにも小林麻里子《世界の心臓》や、TOKYO MIDTOWN AWARDの受賞作なども並んでいる。今年の受賞者は、岩佐美和子、岡田希乃風、善養寺歩由、山﨑結以、吉田桃子、リブの6名。それぞれ異なる手法や関心を持つ若手作家がノミネートされている。

会場風景より、小林麻里子《世界の心臓》
会場風景より、岡田希乃風《nemui》

おそらくここまで見たところで、いちど体力の限界を感じてくるはず。履きやすい靴と水分補給用の飲み物を用意しつつ、適宜休憩を入れながら会場を回ることをおすすめしたい。

国立新美術館ほか、同時開催展にも注目

ミッドタウンから国立新美術館までの道中にある、天祖神社の鳥居横には、フォン・チェン・ツオンが手がけた巨大な木製インスタレーションが配されている。ツオンは伝統工芸を主な関心とし、失われつつある東洋の伝統にインスパイアされ、手作りの美しさと文化的なストーリー性を融合させた作品を制作している。

会場風景より、フォン・チェン・ツオン《Sailing Castle: Roppongi》

六本木アートナイトの楽しみ方は、なにも街中で展示されているアートだけでない。国立新美術館や、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館など、近隣の美術館で開催されている展覧会を回れることもイベントの醍醐味だ。

現在、国立新美術館ではSANAA設計の空間でブルガリのジュエリーの名品を楽しむことができる「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」が開催中のほか、森美術館では建築家・藤本壮介の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」サントリー美術館では鮮やかな芝居絵屏風で人々を魅了した絵師・絵金の異彩を紹介する展覧会「幕末土佐の天才絵師 絵金」が開催中だ。

また、会期中に開催されるパフォーマンスイベントにもぜひ足を運びたい。韓国の伝統芸能をルーツに打楽器の演奏とアクロバティックなパフォーマンスを繰り広げる「TAGO」や、K-BALLET TOKYO、谷桃子バレエ団という日本を代表するバレエカンパニーによる作品発表、草野絵美が「竹の子族」をAI生成で再構築するインスタレーションなど街のあらゆる場所を使ってパフォーマンスが繰り広げられる。

「TAGO」によるパフォーマンス

日本、そしてアジアの現代アートの現在を目撃することのできるアートの祭典。ぜひ今週末は六本木を訪れてみてほしい。

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