
オオノ開發にて、《最終処分場 -自然と産業、人とつくる風景-》展示風景
製塩、学生服、デニム、造船、蓄電池、資源循環。瀬戸内の暮らしを支えてきた第一次・第二次産業は数多いが、その魅力は外から見えにくい。この課題に取り組むのが、今年初開催の「瀬戸内産業芸術祭 2026」である。会期は10月3日から31日まで。
岡山県(岡山市・玉野市・倉敷市)と愛媛県(東温市)の工場・産業現場7会場を舞台に、日本の産業と、それが育んできた文化への理解を深めることを目指す。展示の監修は会場ごとに分かれており、キュレーターの長谷川祐子が大倉佑亮、三宅敦大らとチームを率いて三国工業と藤クリーンの2会場を、建築家の妹島和世がオオノ開發を担当する。残るパワーエックス、トンボ、児島ジーンズストリート、ナイカイ塩業の4会場は、全体のキュレーションとブランディングを統括するクリエイティブディレクターの佐竹正基が監修する。
作品はすべて事前予約制で、ツアー形式か個別チケットで参加できる。工場見学と鑑賞が一続きになっている点が、一般的な芸術祭との大きな違いだ。

プレスツアーは、愛媛県東温市のオオノ開發からスタートした。会場は複合リサイクルプラント内の管理型処分場。参加者はまず増田信吾+大坪克亘によるバス停で、山田紗子が手がけたマテラカラーの現場服をまとい、バスに乗り込む。この色は、愛媛県産の天然鉱石「マテラパウダー(流紋岩末)」に由来する。約500万㎡の敷地を走る車窓にも、目的地の丘の上にも、橙がかったこの石を見つけることができる。


産業廃棄物の管理型最終処分場となる谷は、廃棄物と土が混ざらないよう地面と縁を切った、大きな鉢のような構造をしている。大きなスペースだが、およそ15年をかけて、廃棄物で埋まっていくという。ただし、この幻想的な光景そのものが作品なのではない。鑑賞者は西沢立衛が手がけたマテラカラーの丘に登り、そこから処分場の風景を眺める。自然と人工物、そして人の営みが重なり合う景色を見渡す体験こそが、《最終処分場 -自然と産業、人とつくる風景-》の本題である。

次に向かったのは、岡山県倉敷市の児島ジーンズストリート。ここは足袋や学生服で培われた裁断・縫製の技術を土台に、日本で初めてジーンズを生み出した「国産ジーンズ発祥の地」だ。約400mの通り沿いに地元メーカーの店舗が約40軒並び、国内外から多くの人が訪れる。歩くだけでも楽しいが、重要文化財・旧野崎家住宅の展示は見逃せない。


デザインユニット・SYMBOL PLUSによる空間インスタレーション《一粒の布》は、綿花から一着のジーンズへと受け継がれる児島デニムのものづくりがテーマだ。綿花畑を再現した空間に加え、通り沿いの工場やショップを巡るスタンプラリー形式のツアーが用意され、職人の手仕事と、地域に根づくものづくりの文化に触れられる。

会場となる旧野崎家住宅は、本芸術祭のほかの会場ともつながりを持つ。創業者の武左衛門は塩田開発のかたわら邸宅の建築にも力を注ぎ、一代で塩田161町歩と大庄屋の広大な屋敷地を築いた。その塩づくりをいまも引き継ぐのが、ナイカイ塩業だ。会場をたどるうちに瀬戸内の産業史が見えてくる点も、この芸術祭の見どころになっている。