公開日:2023年6月3日

渋谷の建設現場で朝海陽子、須藤絢乃、⻄澤千晴、平田尚也が作品を発表。「渋谷二丁目アートプロジェクト」第二弾がスタート!

2024年にオープンする商業施設「渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)」の仮囲いでアーティストが作品を発表中

展示風景

渋谷駅東口エリアにあり、長らく建設工事が行われていた渋谷2丁目17地区。東急が主体となって建てられるこのビルの名称が「渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)」となることが5月30日発表された。24年度上期の開業までもうしばらく工事が進められる同所の仮囲いで現在、朝海陽子、須藤絢乃、⻄澤千晴、平田尚也の4名が作品を発表している。

左から前期作家の朝海陽子、平田尚也、須藤絢乃、⻄澤千晴、後期作家の村松 佑樹、勝又公仁彦、安田知司

これは、50軒のギャラリーが加盟するCADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)が21年に開始したプロジェクトによるもので、21年にはCADANのメンバーギャラリーが「都市の移り変わり」をテーマに現代アーティストの作品を選出。今回はビル名称の「AXSH(アクシュ)=握手」をキーワードに作品が選ばれている。

5月30日〜8月まで展示するアーティストは前期は前述の4名、9〜11月の後期には勝又公仁彦、村松佑樹、安田知司、やんツーの4名が参加予定だ。

朝海陽子は、2014年より撮影を始めた「ウェイファインディング(道を探す力)」がテーマのシリーズから《gaze II, from wayfinding series》(2014)を展示。写真に収められた人物はどこか遠くを指差しているが「どこを見ているかはみなさんの想像におまかせしたい。人が絶えず行き交い移動する渋谷の街なかで、本作が立ち止まって周囲に目を留めるきっかけとなればうれしい」と話す。

朝海陽子《gaze II, from wayfinding series》(2014)

須藤絢乃は、架空の映画スチールを想定した写真作品《VITA MACHINICALIS》(2018)を展示。異質な空気に包まれる明け方の東京都心に、まるで3DCGのような美しさを見出したことがきっかけで生まれた本作は、再開発が進み未来的な様相を見せる渋谷の夜中〜夜明けにふさわしい作品に見える。

須藤絢乃《VITA MACHINICALIS》(2018)

⻄澤千晴は、1970年代生まれの自身の思春期の頃と現代を比較し、現代の社会が抱える危うさや儚さを表現した《Double thinking our life-b》(2020)を出品。渋谷の混沌とした街並みに絵画の世界が重なる。

⻄澤千晴《Double thinking our life-b》(2020)

平田尚也は、ポリゴンと画像で構成した仮想の物体たちが複合的に構成された《Hanged Man》(2018)を展示。平田は今回の展示に際して「私たち自身が過去からの情報を引き継ぐこの宇宙の表現型だという気がしてきます。都市や施設というのもまた、そこを利用する人々の集団的な表現型、大きな複合体となるのでしょう」とメッセージを寄せている。

平田尚也《Hanged Man》(2018)
展示風景

作品と変わりゆく街の期間限定の共演。渋谷を訪れた際には立ち寄ってみてほしい。

野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

のじ・ちあき Tokyo Art Beatエグゼクティブ・エディター。広島県生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、ウェブ版「美術手帖」編集部を経て、2019年末より現職。編集、執筆、アートコーディネーターなど。