System of Culture
2017年に3人組のアートコレクティヴとして結成され、現在は小松利光のアーティストネームとして活動を継続しているSystem of Culture。写真を主な表現の媒体とし、膨大な情報とイメージに溢れる現代社会をメタ的な視点からとらえ、美術史を参照しながら実験的な作品を制作している。
そんなSystem of Cultureの最新作「Pieces of Narratives」が、MAHO KUBOTA GALLERYでの個展「Exhibit 8 : Pieces of Narratives」(会期:11月12日〜12月27日)で発表されている。本作は31枚の写真によるインスタレーションで構成される。可能な限り作家の主観を排除して制作されたこれらの写真は、鑑賞者自身が紡ぐ物語の断片として並んでいる。これまで伝統的な西洋絵画の静物画を再解釈するシリーズなどを手がけてきたSystem of Cultureが、本展で提示しようしているものはなんなのか。写真史家・評論家の打林俊を聞き手に迎え、その意図を読み解く。【Tokyo Art Beat】
こんにち、写真はどのような文脈にあっても物語との不可分な関係を切り結んでいるように思える。それは、かの美術批評家のクレメント・グリーンバーグが言ったように、写真が「透明なメディア」であることの延長ともいえるだろうし、写真がアートから商業、報道に至るまで必要不可欠なインフラメディアであるからだともいえるかもしれない。
その枠組みの中で、写真を表現手段として用いている作家の誰しもまた、イメージと物語の関係から完全に逃れられないだろう。だが、それは現代美術としての写真に課せられたひとつの重要な側面であるともいえる。
2024年にSystem of Cultureが出版した、これまでの作品を網羅的にまとめた作品集『Book 2』を開いてみよう。最初に掲載されている《Still Life Breakfast》は代表作といってもいいものだが、伝統的な西洋絵画の静物主題のような構成を取りつつも、サプリメントと思しき錠剤やエナジードリンクが配置されている。奥にはふたの開いたウィスキーのボトルがあり、わたしたちはその伝統的絵画構成への挑戦とともに、そこから物語を掬い上げてしまう。ページをめくっていくと、ほかにもこのようなデペイズマンともいえる手法をとった作品は多く見られるし、あるいは空に浮かぶ炎や、人間の身体を静物モチーフと同様にほとんどモノのように配した作品もしばしば見られる。ただ、それは物語を鑑賞者の解釈に任せるというよりは、明確な物語の提示がなされている観がある。

そもそも、静物はSystem of Cultureがもっとも重要と考えている主題だが、静物写真の概念拡張がその根底にあるのだろうか。
「自覚的ではなかったけれど、写真に撮れば全部静物になってしまうという考えはあります。また、静物はモチーフを自由に組み合わせること、光のコントロールがしやすいことなど、モチーフの特性によらない表現、実験の基盤であると思っています」

