2022年9月1日から102日間という長期にわたって開催中の「東京芸術祭 2022」。国内外のアーティストらによる注目作がすでに公演されて好評を博しているが、同芸術祭はオンラインでも楽しめる。ここでは、ドキュメンタリー作品の配信や国際シンポジウムなど5つのプログラムを紹介していこう。
11月12日から12月11日に配信されるオンラインディスカッション「公共空間でつくる意味2」は、東京芸術祭とそれに先行して開催されてきた「フェスティバル/トーキョー」のなかで数年間にわたり継続されてきた「まちなか」でのプログラムについて、参加アーティストやディレクターらが語るイベント。公共空間で作品を作る魅力と価値とは何か、そこにある工夫や苦労について意見交換を行うという。登壇するスピーカーはアオキ裕キ(ダンサー・振付家)、ウォーリー木下(演出家・フェスティバルディレクター)、佐々木文美(セノグラファー)。
同じシリーズとしてオンラインディスカッション「映像のパフォーマンス2」も同期間に配信される。こちらは、舞台上に映像を取り入れた演出、ダンスをモチーフにした映像作品のジャンルである「ヴィデオ・ダンス」、演劇やダンスの創造のプロセスを追ったドキュメンタリー映画、チェルフィッチュを主宰する岡田利規が、舞台映像作家の山田晋平とともに取り組んでいる「映像演劇」などの、映像におけるパフォーマンス作品について議論するプログラム。スピーカーは、飯岡幸子(撮影監督)、飯名尚人(映像作家・演出家・プロデューサー)と木下千花(映画研究者)。上記2つのディスカッションでは、東京芸術祭FTレーベルプログラムディレクターの長島確と河合千佳が司会を担当する。
「映像特集・ひととつくるプロセス」では、珠玉のドキュメンタリー映画4本を通して、集団創作の現場に関わる「つくる人たち」の姿を捉え、プロセスのなかにある技、アイデア、思い、苦労、工夫、楽しさが、協働の様子を通して伝える。
作品は、今年の7月に亡くなった演劇界の巨匠、ピーター・ブルックのワークショップに2週間密着した『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』、路上生活者、元路上生活者がメンバーのダンスカンパニー「新人Hソケリッサ!」(アオキ裕キ主宰)を追った『ダンシングホームレス』、車椅子に乗った監督が、異なるバックグラウンドをもつ他者との表現活動の可能性を探った『へんしんっ!』、65歳以上のシニアが踊る舞台『コンタクトホーフ』をダンス未経験のティーンエイジャーでつくり直す過程を捉えた『ピナ・バウシュ 夢の教室』。料金は4作品セット視聴券500円(税込)。
10月18日に開催されたシンポジウム「なぜ他者と空間を共有するのか? ~メディア、医療、パフォーマンスの現場から~」、コロナ禍以降の他者と空間を共有することの可能性や模索をメディア、医療、パフォーマンスの専門家とともに議論。坂本史衣(聖路加国際病院QIセンター感染管理室 マネジャー)、ドミニク・チェン(情報学研究者)、MIKIKO(演出振付家/ ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰)が登壇。モデレーターは横山義志(東京芸術祭リサーチディレクター)、多田淳之介(東京芸術祭ファームディレクター)が務めた。
同シンポジムは日本語字幕バージョンをオンライン配信中。英語字幕も追って公開される。
最後に同シリーズのシンポジウムをもうひとつ。「芸能者はこれからも旅をするのか? ~コロナ後の国際舞台芸術祭における環境と南北問題~」では、COVID-19の世界的感染拡大によって厳しく制限された国境をまたいでの移動、それと同時に盛んになったオンラインでの国際交流を振り返り、移動・物流の環境負荷やリスク、経済や文化の南北格差の固定化などを議論した。登壇者はアウサ・リカルスドッティル(IETM事務局長、「パフォーム・ヨーロッパ」コンソーシアム議長)、マーティン・デネワル(フェスティバル・トランスアメリーク共同芸術監督)、ナタリー・ヘネディゲ(シンガポール国際芸術祭ディレクター)。モデレーターは前述した横山のほかに、長島確(東京芸術祭FTレーベルプログラムディレクター・ファーム共同ディレクター)が務めている。
このシンポジウムは、すでにYouTube上で公開されている(芸術祭会期終了まで配信予定)。
公共圏、パンデミック、作品創造など、舞台芸術の「いま」を構成する様々な視点に触れられる5つのオンラインプログラムにぜひアクセスしてほしい。