
五木田智央。六本木のタカ・イシイギャラリーにて
五木田智央の転換点と言える個展「Lush Life」が、六本木のタカ・イシイギャラリー 六本木と、タカ・イシイギャラリー 京橋の2会場で開催されている。会期は7月25日まで。
本展で発表されているのは、油彩による新作群だ。画面には、横たわる人物、夜の気配をまとった顔、シネマティックなムードが現れる。明確な物語が示されているわけではないが、いまの時代の空気を吸い込んだような暗さと、五木田作品ならではのユーモアが同居している。

華やかで、けれどどこか醒めている。ジャズ・スタンダードとして知られる「Lush Life」は、ビリー・ストレイホーンが10代で書いた楽曲だ。若さのただなかにありながら、すでに人生の喪失や孤独を知ってしまったかのような、達観した音楽。その早熟な陰影は、五木田の新作に漂うムードとも奇妙に響き合っている。
ただ、五木田は、このタイトルを音楽から直接取ったわけではないと話す。考えていたのは「豊かな生活」や「豊かな日常」という言葉だった。世界中で戦争が続き、日本社会にも不穏なムードが漂うなかで、かつて信じられていたような「豊かさ」はどこにあるのか? そうした言葉を調べていくうちに、「Lush Life」という語に行き当たったのだという。
「展覧会のタイトルって本当に難しいんですよ。絵のタイトルはわりとすぐ付けられるんですけど、展覧会全体となると、何十通りもメモに書いては『違う、違う』って。『Lush Life』には豊かな生活という意味もあるし、裏には“飲んだくれ人生”みたいなニュアンスもある。いろんな意味があって、これかなと思ったんです。英語圏の友達に相談したら『ぴったりだよ、お前に。毎日酒飲んでるだろう?』って(笑)」
