2022年度のターナー賞を、ヴェロニカ・ライアン(Veronica Ryan)が受賞したことが発表された。ファウンド・オブジェクトや工芸品を組み合わせたインスタレーション、彫刻で知られるライアンの受賞は黒人女性として史上2人目。
1956年に英国領モントセラト島に生まれたライアンは、現在ニューヨーク(米国)とブリストル(英国)を拠点に活動。ライアンは、ブロンズ、石膏、大理石、テキスタイル、ファウンド・オブジェクトなどの多様な素材を用いて、歴史とそこに属する人々の心理の記述を実践している。そして、そこで示されるのは直線的な単純な物語ではなく、有機的なかたちによって表現された変位、断片化、疎外感のメタファー、物語の複数性である。
代表作として知られる《Along a Spectrum》はブリストルのスパイク島で制作された作品で、知覚と病理のスペクトラムが探求されている。新型コロナウィルスによる地球規模のパンデミックにおける心理的影響について考察した同作では、粘土やブロンズだけでなく、縫製された布、お茶で染色された布、様々な種や果物の石、皮が詰め込まれたかぎ針編みの釣り糸で作られたポーチなどが用いられ、病理学、個人的な物語・歴史が語られている。
今年度の受賞候補者は、ヘザー・フィリップソン(Heather Phillipson)、イングリッド・ポラード(Ingrid Pollard)、シン・ワイ・キン aka. ビクトリア・シン(Sin Wai Kin)の3名。ライアンを含めた4名の展示はテート・リバプールで来年3月19日まで見られる。