「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」展、記者発表会より、左から東京都庭園美術館副館長の牟田行秀、担当学芸員の方波見瑠璃子、ヴァン クリーフ&アーペル パトリモニー&エキシビション ディレクターのアレクサンドリン・マヴィエル=ソネ、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパンプレジデントの山本晃子、本展のセノグラフィーを担当する西澤徹夫。
東京都庭園美術館では「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ」が9月27日からスタートする。会期は2026年1月18日まで。
本展は、旧朝香宮邸(現在の東京都庭園美術館)の設計や装飾にも大きな影響を及ぼした「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)」の100周年を記念して行われる特別展。フランスを代表するハイジュエリー メゾン、ヴァン クリーフ&アーペルの「パトリモニー コレクション」と個人蔵の作品から厳選されたジュエリー、時計、工芸品を約250点、さらにメゾンのアーカイブから約60点の資料が展示される。

6月19日に開催された記者会見では、同館副館長の牟田行秀、担当学芸員の方波見瑠璃子、ヴァン クリーフ&アーペル パトリモニー&エキシビション ディレクターのアレクサンドリン・マヴィエル=ソネ、本展のセノグラフィーを担当する西澤徹夫が登壇し、展示構成や本展の見どころを語った。
20世紀前半のヨーロッパやアメリカにおいて、工芸、建築、ファッションなどの分野で広がったアール・デコという装飾様式は、直線や幾何学模様を多用した、優美な装飾性と機能性を併せ持つスタイルとして知られる。当時の生活や人間の装いに対する欲求を反映するジュエリーを通じて、アール・デコの美意識に迫ることが本展のコンセプトだ。
第1章「アール・デコの萌芽」では、1925年のアール・デコ博覧会においてグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924)をはじめとして、1910〜20年代半ばの作品が展示される。薔薇の花をモチーフとした、幾何学性と豊かな色彩をあわせ持つブレスレットは、アール・デコの造形性や装飾原理を解き明かすための鍵として位置付けられる。

つづく第2章「独自のスタイルへの発展」、第3章「モダニズムと機能性」では、メゾンが博覧会以降に探求した独自のスタイルを体現した作品や、同時代の芸術思潮であるシュルレアリスム、モダニズムの影響を感じさせる作品が紹介される。女性用の口紅、パウダーコンパクト、ライター、ノートなどを収めるケースである《カメリア ミノディエール》(1938)は、洗練されたデザインと高い機能性を両立した、アール・デコ期のヴァン クリーフ&アーペルを象徴する作品のひとつだ。

新館のホワイトキューブを舞台に展開される第4章「サヴォアフェールが紡ぐ庭」では、メゾンの「サヴォアフェール(匠の技)」の数々が「庭園」というコンセプトのもとに紹介される。同メゾンが創業当初から取り入れている動植物モチーフの作品群は、私たちが日常的に目にする小さな植物や動物に対する、新しい見方を示すことだろう。
担当学芸員の方波見と、ヴァン クリーフ&アーペルのマヴィエル=ソネは、展示構成を考えるうえで同館の建築がインスピレーション源になったと話す。旧朝香宮邸の随所に見られるアール・デコ様式の装飾やデザインと、ジュエリーの共通点を見出すことで「キュレーションは自然と決まっていった」と語った。
また、旧朝香宮邸の内装や素材に着想を得たセノグラフィー(空間演出)も本展の大きな見どころとなるだろう。ヴァン クリーフ&アーペルの詩情豊かなジュエリーと、同館の建築が織りなす展示空間は、いったいどのような景色となるのか。展覧会の全貌に期待が膨らむ。