
草間彌生。「わが永遠の魂」シリーズ作品を制作中の東京のスタジオにて。2014年 © YAYOI KUSAMA
水玉や網目の作品で世界的に知られ、文化勲章も受けた前衛芸術家の草間彌生さんが8月14日、都内病院にて多臓器不全のため亡くなった。97歳だった。
草間さんは1929年、長野県松本市の旧家に生まれた。幼少期から幻覚や幻聴に悩まされ、網目や水玉をモチーフにした絵画を制作。京都市立美術工芸学校で日本画を学び、松本や東京で個展を行って評論家の瀧口修造らに評価されたが、より自由な制作環境を求めて1957年にアメリカに渡った。

無数の網目でキャンバスを覆い尽くした「ネット・ペインティング」を1959年にニューヨークの画廊で発表し、一躍脚光を浴びた。次いで男根状の突起物で表面を覆ったソフト・スカルプチュアや、鏡面や電飾を使い無限的な空間を提示するインスタレーションを制作。同一モチーフの反復により自身のオブセッションや畏怖の対象を作品に昇華する作風を打ち立て、前衛アーティストとしての地位を確立した。映画制作やファッション分野にも進出し、ジュージア・オキーフやアンディ・ウォーホル、ジョゼフ・コーネルらと交流。1960年代後半に興ったヒッピーカルチャーを背景に公共の場で裸体に水玉を描き反戦・平和を訴えるなどの「ハプニング」を多数行い、ベトナム戦争に揺れるアメリカ社会に衝撃を与えた。

1973年に活動拠点を東京に移し、コラージュや版画を制作。小説や詩も執筆し、1983年に小説『クリストファー男娼窟』で野生時代新人文学賞を受賞した。だが精神状態が悪化し、病棟に住み外部のスタジオと毎日往復しながら制作するようになった。
1993年のヴェネチア・ビエンナーレで日本館初の個展を行ったのを機に再評価が進み、90年代後半にニューヨーク近代美術館や東京都現代美術館が回顧展を開催。2011年以降、欧米や南米、アジア各国で巡回展が行われ、世界的にブレイクした。2009年から新たな絵画シリーズ「わが永遠の魂」に取り組み、瀬戸内海の直島などの野外彫刻、ルイ・ヴィトンをはじめ異分野とのコラボレーションも手がけるなど活発な活動を展開。つねに社会の既成概念に挑み、創作に打ち込んできた軌跡と独創性に満ちた作品は国境を越えた共感を呼び、「世界のクサマ」として注目され続けた。

朝日賞(2001)、フランス芸術文化勲章オフィシエ(2003)、高松宮殿下記念世界文化賞(2006)など国内外での受賞多数。2009年に文化功労者、2016年に文化勲章を受けた。近年の国内の主な個展に「クサマトリックス」(2004、森美術館)、「草間彌生 永遠の永遠の永遠」(2012~14、国立国際美術館など)、「草間彌生 わが永遠の魂」(2017、国立新美術館)、「草間彌生 版画の世界ー反復と増殖ー」(2022〜、松本市美術館)、「INFINITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」(2025、エスパス ルイ・ヴィトン大阪)など。2017年に草間彌生記念芸術財団が運営する「草間彌生美術館」が東京都新宿区弁天町に開館し、初代館長に建畠晢が就任した。
葬儀は近親者のみで執り行った。後日、お別れの会が開催される予定。