
「YJA(Young Japan-based Artists)」会場風景より、左から䑓原蓉子《さようならの儀式》(2024)、《不自然な景色》(2024)、《ようこそ、我が家へ》(2024) © Yoko Daihara. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo
䑓原蓉子(だいはら・ようこ)は、独学で制作を始め、都市の自然や日常の風景をもとにドローイングを構成し、テキスタイル作品に変換するアーティスト。その手法は「ウーブン・ペインティング(織られた絵画)」とも呼ばれ、細胞や植物、食といった身近な生と死のイメージを、メディア間の転移というプロセスで描いてきた。
京都市京セラ美術館で9月6日まで開催中の「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート展」の関連プログラムである「YJA(Young Japan-based Artists)」。1990年代の英国において革新的な創造性を生み出した「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」の精神を、現代的な視点から再解釈するこのプログラムで、䑓原は顧剣亨(こ・けんりょう)とともに作品を展示している。
作品の背景にある思いやテーマについて、話を聞いた。
主にカーペットや絨毯の製造技法として知られる「タフティング」は、タフティングガンという専用のハンドミシンを使って、フレームに張った布地に毛糸を打ち込むことで絵柄を描き出していく。䑓原蓉子は、このタフティングを使って作品を生み出すアーティストだ。2019年頃よりこの技法を始めたという䑓原は、タフティングを始める以前から、編み物をきっかけに毛糸に触れるようになった。

「幼い頃から祖母の影響で編み物をしていました。その頃からいまも毎日続けていることなのですが、ただの四角を延々と編んで、ほどいて、また編むんです。心を落ち着かせるためにそれを始めて、毎日この動作を繰り返していました」。
当初、セーターなどにも挑んだという䑓原だが、編み図が複雑で手に馴染まず、もっと気軽に毛糸を使えないかと考えていたときに、タフティングに出会った。
「タフティングはどこから毛糸を打ち込んでもいいし、かたちも好きにできるので、私には合っていました」。
タフティングで絵を描く場合、その画面における線の太さの最小は、毛糸1本分となる。それは、たとえば鉛筆で線を1本引くよりも、圧倒的にはっきりと骨格を持ったものとなるし、編み物のように縦横に糸を組み合わせて図像を描くよりも、おおらかな表現となる。

「制作プロセスでは、まず水彩絵の具やiPadで絵を描きます。その絵をタフティングの下地となる布に描き、最後に上から毛糸で描いていきます。なので、1枚のラグを作るときに最低でも3回は同じ絵を描きます」。
下絵では、その時々に使用される画材にあわせて、サイズも様々に異なる。イメージは何度も描かれるなかで変化していくという。
「制作のなかで私がコントロールできる部分はごく僅かで、毛糸は止まっていてはくれないし、iPadは使い方をよくわかっていないし、絵の具や筆は扱いが難しいです。それをなんとかコントロールしようとするけれど、できないということが重要で、面白いと思っています」。