公開日:2007年6月18日

企画展「ばらばらになった身体 Body in Pieces」

国立近代美術館2階のギャラリー4で、コレクションによる企画展「ばらばらになった身体 Body in Pieces」が開催されている。

所蔵品の中から、人間の身体をモチーフとした作品を集め、「頭部」「手」「トルソ」「ばらばらになる身体」という4つの側面から構成した展示、とだけ聞くと、スマートで無難な切り口にも思えるが、その刺激的なタイトルと企画のステイトメントに、より深いメッセージが隠されている。
たとえば、頭部。頭部だけを身体の他の部分から切り離して作品化する動機として、「被写体の面影を永遠に留めておきたい」ということ以上に、『愛する人のもっとも重要な部分を手の中に納め、二度と失われることのないように完全に所有したい』ほどの想いが込められていると思って見ると、恐ろしいほどの執着、所有欲の結晶に見えてくる。
一方、頭部のないトルソからは、欠落感ゆえに、目の前にないものをより強く求める心理が引き起こされる。
中には、他者ではなく、自分自身をモチーフとした作品もある。
いずれにせよ、身体をモチーフとした作品を観たときに、自分自身の姿を留めておきたいという欲求を感じるにしても、愛する人の不在を埋めたいという切なる想いを感じるにしても、「個」の意識が確立した時代の見方であることには違いない。
そして、現代。溢れかえる人波におぼれて「個」の維持に不安を覚え、身体もろとも『ばらばらに』なってしまうような感覚を表現した作品。
「人は見かけによらない」というものの、身体は私たちの誰しもが所有しているものであって、私たちは、まずこの身体を通じて他者に認識されるのだという免れ得ない事実を再認識する機会となるかもしれない。

見どころは、写真家スティーグリッツが、恋人であり画家であったジョージア・オキーフを撮った写真、河原温の『浴室』シリーズ全作など。
15日から開催される、同館と大原美術館のコレクションによる「モダン・パラダイス展 大原美術館+東京国立近代美術館――東西名画の饗宴」と併せて楽しみたい。

Rei Kagami

Rei Kagami

Full time art lover. Regular gallery goer and art geek. On-demand guided art tour & art market report. アートラバー/アートオタク。オンデマンド・アートガイド&アートマーケットレポートもやっています。