1万人が回答:文化芸術への公的支援はどうあるべき?レポート調査が発表へ

文化政策、アートビジネスに関するコンサルティングを専門に行う一般社団法人芸術と創造(代表:綿江彰禅)が、日本人1万人を対象に、新型コロナに関する公的支援、あいちトリエンナーレ問題等に関する世論調査を実施

In Art Beat News by Art Beat News 2020-06-11

文化政策、アートビジネスに関するコンサルティングを専門に行う一般社団法人芸術と創造(代表:綿江彰禅)が、このたび、日本人1万人を対象とした新型コロナに関する公的支援、あいちトリエンナーレ問題等に関する世論調査を実施した。

芸術文化をテーマとした世論調査としては前例のない規模となる今回の調査。主な3つの質問「文化芸術に係る公的支援について」「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公的支援について」「行政による文化芸術に係る助成・補助や主催事業における関与について」についての調査結果は以下の通り。

 

文化芸術に係る公的支援について

▼文化芸術は重要だと考えている人は多い。しかし、国・自治体の予算を文化芸術に優先的に「振り分けるべきではない」の考えのほうが「振り分けるべきである」の割合を上回る。

「人々にとって文化芸術は重要かどうか」という問いに対しての回答は、「どちらかというと重要である」(48%)、「重要である」(24%)と、過半数の72%が重要視の傾向。しかしながら、「国・自治体の予算を『文化芸術の振興・保護』に優先的に振り分けるべきかどうか」については、「振り分けるべきではない」(43%)が「振り分けるべきではない」が「振り分けるべきである」(34%)を上回る。

なお、「振り分けるべきである」(34%)の中でも、「どちらかというと(優先的に振り分けるべきである)」が29%、「優先的に(振り分けるべきである)」は5%にとどまる。

▼分野間の比較では、医療・福祉・介護、防災・減災、子育て、教育などに優先的に公的支援を行うべきとの意見が多数。「文化芸術の振興」を挙げた人は少数(6%)。

「国・自治体の予算を優先的に振り分けるべき分野」で一番回答の多かった分野は、医療・福祉・介護体制の充実が61.3%。次いで、防災・減災の41.7%、子育て環境の充実の35.7%、教育の充実の29.2%。選択肢の20項目中、「文化芸術の振興」は「観光産業の振興」と並ぶ5.5%で15位となっている。

▼文化芸術の中で公的支援の優先度の高い分野のトップは「美術(絵画・版画・彫刻等)」

「国・自治体の予算を優先的に振り分けるべき文化芸術の分野」の回答トップは、美術(絵画・版画・彫刻等。※工芸・陶芸、写真、メディアアートは含まれない)と伝統芸能(歌舞伎、能・狂言、日本舞踊、琴、雅楽等)が同割合の15.3%。次いで、文化財(各分野において保護対象とするもの)の12.2%、工芸・陶芸の11.5%、地域の祭り・年中行事等の11.2%。

▼文化芸術に関する趣味・仕事・経験などを持つ人が文化芸術に予算を「振り分けるべき」と考える傾向。40代、高年収、高学歴の人や“小さな政府”を志向する人は「振り分けるべきではない」との考え。

「振り分けるべき」と考える回答者は、「自身が文化芸術業界の仕事をしている(していた)」の36.1%をはじめ、文化芸術に関する仕事を行っている親族・友人がいる(いた)、幼少期〜大学での文化・芸術体験など、文化芸術に関する趣味・仕事・経験などを持つ者が多くを占めることが大きな特徴だ。

対して、40代、高年収(700万円〜)、高学歴(最終学歴:大学院)の人や「小さな政府」を志向する人は「振り分けるべきではない」との考え。なお、ここのでの小さな政府とは、「社会保障等の行政サービスは充実していないが、国民(含む法人)の税負担は小さな社会を目指す」の定義を指す。

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公的支援について

▼新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、文化芸術に従事している団体・個人への公的支援は52%が賛成、25%が反対

国・自治体が「文化芸術に従事している団体や個人」に特定の支援を行うことについては、賛成(52%)が「反対」(25%)を大きく上回る。なお、国・自治体が広く「特定の業種」の支援(給付金の支給・ 助成・融資・義務の免除等)を行うことについては、賛成(65%)が 「反対」(18%)をさらに大きく上回る。

▼文化芸術のジャンル別では、舞台芸術の興行(音楽・演劇・ミュージカル・演芸等)>映画(映画館・映画配給・映画制作等)>美術展の開催(含む画廊・ギャラリー)の優先度

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い優先的に支援すべき分野では、医療・介護(50.1%)、外食業・飲食業(29.1%)、宿泊業(24.3%)、保育(22.5%)、物流サービス(18.8%)、鉄道・航空(17.2)、スーパーマーケット(11.4%)が上位。

そのなかでは文化芸術は、舞台芸術の興行(音楽・演劇・ミュージカル・演芸等。公立施設は除く)が10.1%、映画(映画館・映画配給・映画制作等)が5.4%、美術展の開催(ギャラリーを含む。※公立施設は除く)が3.8%となっており、優先度としては低めにとどまる。

 

行政による文化芸術に係る助成・補助や主催事業における関与について

この調査は、「あいちトリエンナーレ2019」への補助金交付・不交付などの問題を受け、行政が事業にいかに関わるべきか、また展示内容はどうあるべきかについての結果も発表している。

▼行政による“助成・補助を受けた事業”では以下のように考える人が多かった

1:外部の有識者等による審査会で 助成先が決定されるべき(51%)
2:国・自治体は来場者の安全性の観点から事業内容に指示すべき(48%)
3:国・自治体は助成の趣旨から事業費の使い方を指示すべき(41%)
4:行政は政治的な観点から事業内容に指示すべきではない(40%)

また、作品内容について「政治的な主義・主張が含まれる作品の展示」は自由に行われるべきか否かで意見が拮抗し(行われるべき:33%、行われるべきではない:31%)、「不快な表現が含まれる作品は展示されるべきではない」と考える回答者が多かった。

▼行政が全ての事業費を負担する“主催事業”では以下のように考える人が多かった

1:政治家(首長含む)は展示・上演の中身に関与すべきではない(52%)
2:外部の専門家に一切の展示・上演内容を任せるべき(36%)

助成・補助を受けた事業に続き、ここでも「政治的な主義・主張が含まれる作品の展示」については、行われるべきか否かで意見が拮抗し(行われるべき:32%、行われるべきではない:34%)、「不快な表現が含まれる作品は展示されるべきではない」と考える回答者が多い点が、大きな共通点として挙げられる。

▼「あいちトリエンナーレ」の認知と関与について

「あいちトリエンナーレ」に関しては、様々な議論が起こったことを52%の回答者が認知しており、「あいちトリエンナーレ自体を知らない」が38%、「あいちトリエンナーレは知っているが、議論がなされていたことを知らない」が10%と続く。

議論を認知する回答者のうち過半数が「国・自治体が政治的な観点から事業の内容に関与すべきではない」と考える傾向にあり、これは「あいちトリエンナーレ自体を知らない」回答者による「国・自治体が政治的な観点から事業の内容に関与すべきではない」という意見の約2倍程度の比率を占めていることも特徴的だ。

今回のレポート詳細はPDFで公開されているが、「一般社団法人芸術と創造」は本調査のフルレポートを後日発表予定。TABでも続報を追って公開する。

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