今日的に表現する伝統工芸:パナソニック汐留美術館で「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」開催

7月18日より開催、伝統の工芸と手仕事を受け継ぎ表現しなおす現代の作品を紹介する特別企画をレポート。

In フォトレポート by Art Beat News 2020-07-21

パナソニック汐留美術館で特別企画「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」が2020年7月18日から9月22日の期間で開催中だ。

日本の美意識を映し出す現代の工芸作品を紹介する本展。既存の形にとらわれず、工芸素材や技法を駆使し独自の表現を見せる出展作家は、安達大悟、池田晃将、桑田卓郎、坂井直樹、佐合道子、髙橋賢吾、舘鼻則孝、新里明士、橋本千毅、深堀隆介、見附正康、山本茜の12名。いずれも1970年以降に生まれた現代のアーティストの作品の中から、今日までに受け継がれてきた日本の手仕事や工芸の新しい兆候と可能性を見出す展覧会となっている。

本展タイトルの「和巧絶佳」は今日の日本の工芸的な作品にみられる3つの傾向「和」「巧」「絶佳」からなる造語。展示構成もこの3つの要素に分けられている。

第1章 「和」の美

第1章は日本の伝統文化の価値を問い直す「和」の美を見出す作家を紹介。レディー・ガガが愛用するヒールレス・シューズで有名なファッションデザイナーであり、現代アーティストの舘鼻則孝、陶芸の枠を超え現代アートやファッションの分野でも活躍する桑田卓郎、アクリル絵具と透明樹脂を重ねた立体的な金魚の作品で知られている深堀隆介の3人の作品が展示されている。

もともと花魁の高下駄から着想を得ている舘鼻のヒールレス・シューズ。今回展示の、赤いクリスタルガラスが散りばめられているヒールレス・シューズ《Homage to Taro Serirs: Heel-less Shoes / Shoes of Sun》では躍動感ある複数の突起が特徴だ。これらの突起は触手をイメージして制作されており、作家曰く生命感を表しているという。

舘鼻が初期の頃から制作しているシリーズ《Hairpin》は巨大な髪飾りを表現したもの。この作品の下には椿を模した《Camellia Fields》が置かれ、2つの作品は呼応しあうよう。

多種多様な容器に入れられ、まるで生きているかのような立体的な金魚を表現する深堀隆介。作家自身たくさんの金魚を飼い、その観察に時間を忘れて見入ってしまうそう。器の中に透明な樹脂を流し込み、その表面に金魚のフンや金魚などをレイヤー状に描いていくという手法を独自の採用している。今にも動き出しそうなこれらの金魚たちは実は全て実在しないイメージの中の金魚だという。

第2章 「巧」の美

第2章は手わざの極致に挑む「巧」の表現を紹介。石川県南部で発展した九谷焼を学び抽象的な文様を精緻に描き出す見附正康、螺鈿などの漆の伝統技法とレーザーの現代テクノロジーを組み合わせる池田晃将。そして、重要無形文化財「截金」の保持者であり、ガラスで截金を挟む作品を制作する山本茜、アルミニウムの現物鋳造で繊細な作品をつくる髙橋賢悟の4人の作品が展示されている。

今回の展示作品は『源氏物語』から着想を得て制作したという山本。平面に施される截金は、ガラスの中に溶着されることで立体的な表現へと転化。制作中に液体となるガラスを滞留させないようにするなど細やかな工夫が施されている。

アルミニウムを使用した作品を制作する髙橋。小花で動物の頭部を形成する展示作品は、生と死を表現している。小花のテクスチャーはそれぞれ微妙に異なっており、何100年も経過するとよりマットになっていくという。

第3章 「絶佳」の表現

第3章は、工芸素材の美の可能性を探る「絶佳」の表現を展示。東京文化財研究所にて漆工品の修復にも携わった経験があり螺鈿や蒔絵を用い作品を制作する橋本千毅、伝統の絞り染めなどを生かし現代のテキスタイルを表現する安達大悟。そして鍛造という技法を用い鉄の新しい表現を追求する坂井直樹、陶磁器を学び光を利用し繊細な文様がうまく浮き出る器などを制作する新里明士、鋳込み成形などの技法を用い自然を再解釈した精緻な作品をつくる佐合美千子の4人の作品が紹介されている。

出品作家の舘鼻は「日本の工芸を過去の文化としてだけでなく、今の時代的なものを発表していく使命感がある」と言う。伝統の工芸を捉え、現代に表現しなおした作品の数々が見られる本展に注目したい。

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