アート、本、博物の複合文化施設:角川武蔵野ミュージアムがグランドオープン

11月6日、アート・博物・本の複合文化施設・角川武蔵野ミュージアムがグランドオープンした

poster for Ken + Julia Yonetani “That’s Why I Want To Be Saved”

米谷健 + ジュリア 「だから私は救われたい」

関東:その他エリアにある
角川武蔵野ミュージアムにて
98日後終了

In Main Article 2 フォトレポート by Art Beat News 2020-11-10

建築家・隈研吾が建築デザインを手がけた、多面的な石の外壁が強い存在感を放つ「角川武蔵野ミュージアム」。オープン前より各所で話題となっていたこのミュージアムが11月6日、ついにグランドオープンを迎えた。

角川武蔵野ミュージアムは、美術館と博物館、図書館としての機能が癒合した、国内では他に類を見ない文化複合施設。編集工学者の松岡正剛(館長)、博物学者の荒俣宏、建築家の隈研吾、芸術学・美術教育の神野真吾による監修のもと、メインカルチャーからポップカルチャーまで多角的に文化を発信することを目的に誕生した。

展示、イベント、施設まで見どころ盛りだくさんの同ミュージアムの様子を見ていこう。

隈研吾が設計

建築家の隈研吾が、かの新国立競技場と同時に設計を手がけていたのが、KADOKAWAと埼玉県所沢市の共同プロジェクトの「ところざわサクラタウン」。ホテル、レストラン、書店、オフィス、神社などが共存する“コンテンツモール”であるこのプロジェクトのランドマークが、「角川武蔵野ミュージアム」だ。岩を多面的に組み合わせたデザインは、自然や文明の姿を表出させる「迷路的な地球」をイメージしたもの。近づいてみると、一つひとつが異なる質感の岩肌の表情に驚かされる。

5階建てのミュージアム。1階グランドギャラリーは1000平米、4階、5階のアートギャラリーはそれぞれ340平米もの面積を有する。

3つのオープニング展

オープニング展として行われているのは3つの企画展。現代アートの展覧会「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」、荒俣宏が監修する妖怪がテーマの「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020 YOKAI PANDEMONIUM」、コンクールで選ばれた475の妖怪絵が集まる「みんなの妖怪絵 角川武蔵野妖怪絵コンクールから」。

なかでもおすすめは、アーティストにとって日本初大規模個展となる「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」だ。

米谷健+ジュリアは、2009年にヴェネチア・ビエンナーレのオーストラリア代表の1組として選出されるほか、「シンガポールビエンナーレ 2013」(シンガポール国立美術館)、個展「The Last Temptation」(オーストラリア国立美術館、2015年)、「ホノルル・ビエンナーレ2017」の参加など、国際的な活動を展開するアーティスト。現在は京都の農村を拠点に、無農薬農業を兼業しながら作家活動を行なうふたりの代表作をまとめて見られる大規模個展となる。

米谷健+ジュリアがこれまで主に発表してきたのは、一見すると美しいが、その裏には社会問題や環境問題へのメッセージが込められた作品の数々。例えば、ウランガラスが放つ幻想的な緑の発光が印象的なシャンデリアのインスタレーションシリーズ「クリスタルパレス」(2012-)。福島第一原発事故を受けて制作が始まった本作はシャンデリアの一つひとつに原発保有国の名前がつけられており、その原発からつくられる電力の総出力とシャンデリアの大きさを比例させている。

いっぽう、全長約9mに及ぶテーブルに豪華に並べられたワイン、食べ物、食器などが西洋の晩餐会を彷彿とさせる巨大インスタレーション作品《最後の晩餐》(2014)は、じつは素材すべてが「塩」。オーストラリアでの大規模農業における過度な灌漑が引き起こした塩害をテーマに、環境破壊に加え、食の安全性への疑念と不安をもとに制作された日本初公開作だ。

また、展示に加えて《コロナ時代のアマビエ》プロジェクトが発足した。SNSを中心に話題となった妖怪「アマビエ」をモチーフとした作品を、会田誠、鴻池朋子、川島秀明、大岩オスカール、荒神明香らがリレー形式で発表していくというこのプロジェクト。1月までは会田の《疫病退散アマビエヱ之図》が二階フロアにて大きく展示されている。会田はアマビエというお題に対して「まずは誰か一人がストレートなイラストをやるべきではないかと思い、トップバッターを名乗り出ました」と述べている。

約5万冊の書籍を所蔵

空間を占拠する大量の本──「エディットタウン」と称される4階は、「ブックストリート」「本棚劇場」「荒俣ワンダー秘宝館」など、本や編集がテーマのフロアだ。

松岡正剛が監修し、「日本の正体」「男と女のあいだ」「脳と心とメディア」といった9の文脈に沿って2.5万冊の図書が並ぶ「ブックストリート」、高さ8メートルの巨大本棚に個人蔵書が一堂に並ぶ「本棚劇場」など、本の量に圧倒されるフロアでもある。「荒俣ワンダー秘宝館」は、巨大マンモスの牙、美しい昆虫標本など、古今東西の資料が入り混ざり、百科事典の内容が散りばめられたような様相を呈している。

続く5階はがらりと雰囲気が変わり、埼玉・千葉・東京にまたがる武蔵野地域の魅力を掘り起こし、発信する「武蔵野回廊/武蔵野ギャラリー」。東日本大震災で被災した地域の再興を目的とした家具が並ぶ部屋に、民俗学者の赤坂憲雄が監修・選書した本が並ぶ。

館長の松岡正剛は、同ミュージアムを「21世紀型の複合文化ミュージアム」であると同時に、「創造力が想像力を換気するミュージアム」だと話す。所沢に突如現れた“コンテンツモール”の顔でもあるミュージアムは今後どのような展開を見せるのだろうか?

神社やチームラボの常設作品も

また、「ところざわサクラタウン」オープンにあわせて、敷地内には新たに「武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみやしろ)」が誕生。国文学者であり、元号「令和」の発案者であるとされる中西進が命名したこの神社も、隈研吾のデザイン監修によるもの。

アート好きなら注目したいのは、天野喜孝が描いた天井画。「かつて見たシスティーナ礼拝堂の『天地創造』や大徳寺本坊にある狩野探霊『雲龍図』に衝撃を受けて以来、天井画制作は私にとって長年の夢でした」と語る天野が、角川のシンボルである鳳凰を雌雄一対で描き下ろしている。また、拝殿の両サイドに座る狛犬は、 繊細で柔和な幻獣、動物の木彫を手がけてきた土屋仁応が神社のために制作した作品となっている。

また、「ところざわサクラタウン」と隣接する東所沢公園内に、文化・芸術をテーマとする「武蔵野樹林パーク」が誕生。ここではチームラボの常設展示「チームラボ どんぐりの森の呼応する生命」が行われている。

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