公開日:2021年3月19日

原子炉の中に薬草スチーム:下山芸術の森発電所美術館「栗林隆展」が伝えること

富山の下山芸術の森発電所美術館で開催中の「栗林隆展」に原子炉が出現

日本国内のみならずインドネシアを拠点に、海外でも大型の体験型、鑑賞型の作品を発表してきた栗林隆。

東日本大震災から間もなく10年目を迎えるこの冬、長年リサーチを重ね温めてきたプロジェクトを、元発電所でもある富山・下山芸術の森発電所美術館の空間で実現させた。

展示風景より、栗林隆《元気炉》 撮影:筆者

その新作タイトルは《元気炉》。福島の原子力発電所の原子炉から着想を得た本作は、原子炉をかたどったインスタレーションの中にスチームが発生するもの。栗林のFacebookページでは「こんな時代に、皆をハッピーにさせ、ニコニコさせる、そんな馬鹿らしい、しかし最高な作品が出来ました」とコメントしている。

なお、《元気炉》の中に常時立ち入ることはできないが(不定期開催/日曜予定だが要当日確認)、タイミングがあえば作品内に入り、まるでサウナのような体験が可能となっている。美術館を訪れる際には念のため水着等のご用意を。

本格的な蒸気設備 撮影:筆者

作品内部への入口 撮影:筆者

栗林隆は1968年長崎県生まれ、93年武蔵野美術大学卒業、2002年クンストアカデミーデュッセルドルフ(ドイツ)マイスターシューラー取得。東西分断の歴史をもつドイツ滞在の影響もあり、「境界」をテーマに様々なメディアを使った作品制作を行ってきた。

シンガポール国立博物館(2007)、チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(2013)での個展をはじめ、シンガポール・ビエンナーレ(2006)など国際展への参加も多い。国内では瀬戸内国際芸術祭2019、北アルプス国際芸術祭などの芸術祭に参加するほか、十和田市現代美術館に《ザンプランド》(2006)が恒久設置。「ネイチャー・センス展」(森美術館、2010)などのグループ展にも数多く参加している。

作品中心部へ続く通路 撮影:筆者

展覧会概要:栗林隆展
会期:2020年11月21日〜2021年3月21日
会場:下山芸術の森発電所美術館
住所:富山県下新川郡入善町下山364-1
時間:9:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月(祝休日の場合を除く)、祝休日の翌日(土、日、祝休日の場合を除く)、年末年始(12月21日〜1月8日)
観覧料:一般600円、高大生300円、中学生以下無料
https://www.town.nyuzen.toyama.jp/gyosei/bijutsukan/3805.html

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