公開日:2021年1月20日

受賞者は志賀理江子、竹内公太:中堅アーティスト対象の「Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023」

「Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023」の受賞者が決定

日本の中堅アーティストの海外での展開や、さらなる飛躍を促すことを目的とした現代美術の賞「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」。その第3回となる「TCAA2021-2023」を、志賀理江子、竹内公太の2名が受賞した。

2018年度にスタートしたTCAAは、2018年に東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 東都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペースによって創設された、海外での展開も含めた更なる飛躍とポテンシャルが期待できる国内の中堅アーティストを対象とした新たな現代美術の賞。受賞者の選考は、選考委員によるアーティストのリサーチやスタジオ訪問により、制作の背景や作品表現、キャリアステージへの理解を深めた上で行われ、受賞者は海外での活動支援のほか、東京都現代美術館での展覧会およびモノグラフ(日英)の作成など、2年間に渡る継続的な支援を受けられるというもの。第1回は風間サチコ、下道基行、第2回は藤井光と山城知佳子が受賞した。

左から志賀理江子、竹内公太

今年の受賞者のひとり、志賀理江子は1980年愛知県生まれ、宮城県在住。2004年ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業。近年の主な展覧会に、個展「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、2019)、「ビルディング・ロマンス―現代譚(ばなし)を紡ぐ」(豊田市美術館、愛知、2018)、個展 「ブラインドデート」(丸亀市 猪熊弦一郎現代美術館、香川、2017)、個展「カナリア」(Foam 写真美術館、アムステルダム、2013)など。主な受賞歴に「第33回木村伊兵衛写真賞」(2007)、「ICP インフィニティアワード」新人賞(2009)。2008年から宮城県を拠点に、その地に暮らす人々と出会いながら、人間社会と自然の関わり、死の想像力から生を思考すること、何代にも溯る記憶などを題材に制作を続け、東日本大震災をきっかけに人間精神の根源を、様々な制作によって追及しようとしてきた。

審査委員による受賞理由は次のようなものだ。「制作や現実に対して思慮深く、真摯に向き合う態度と、写真というメディアの性質と人間の精神性との等価性の探求や、写真と身体のあり方を横断する視点といった独自性が評価された。東日本大震災からの『復興』をとおして近代社会がいかに人々の精神を抑圧してきたかを考えることにより、その制作と思考には、人間の本性、中心と周縁、死と喪、規制と自由、自然との調和、など私たちが生きている社会を考える重要な要素が凝縮されている。作品をつくることをとおして彼女がこれらと向き合おうとしていることを本アワードが支援することには大きな意義があると考える」。

志賀理江子《螺旋海岸 31》2010、Cタイププリント「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク 6F、2012-2013)

もうひとりの受賞者、竹内公太は1982年兵庫県生まれ、福島県在住。2008年東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。近年の主な展覧会に、個展「BodyisnotAntibody」(SNOWContemporary、東京、2020)、「第6回アジアン・アート・ビエンナーレ」(国立台湾美術館、台中、台湾、2017)、個展「メモリー・バグ」(ArtsCatalyst、ロンドン、2016)など。指差し作業員の代理人として、「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術-」(東京都現代美術館、2019)、「GLOBALE:GLOBALCONTROLANDCENSORSHIP」(ZKM、カールスルーエ、ドイツ、2015)など。受賞歴に「群馬青年ビエンナーレ2010」奨励賞。パラレルな身体と憑依をテーマに、時間的・空間的隔たりを越えた活動を展開し、第二次世界大戦中に使用された風船爆弾の行方を追う空撮、郷土史家が撮影した石碑写真の再現や、福島の原発事故に伴う立入制限区域での警備員をモチーフとした作品などで知られる。

審査委員は受賞理由を「作家は近年の日本の社会的な事象に応答した作品を制作、発表しているように見えるが、記憶を語り継ぐための方法、マテリアルが有するメディアとしての特質、そしてそれらに対する人々の受動性への関心という点においては一貫性が見られ、個人的および集団的記憶の形成やそれに引き起こされる感情的なインパクトの探求に対し深く関わっていこうとする制作態度が評価された。今回示された遠隔技術の倫理性を問う新作案は、遠隔攻撃の盲目性をも見据えており、デジタルメディアをとおして与えられる情報への私たちの依存性がますます高くなっている現在、その問題意識は日本固有の文脈を超えて、より多くの人々に共有される可能性を強く感じさせられた」と述べる。

竹内公太《盲目の爆弾、コウモリの方法》2019-2020、映像、32分
竹内公太《文書1: 王冠と身体》2020、インスタレーション、紙にレーザープリント

今年のTCAAは2020年6月に公募が始まり、選考委員のソフィア・ヘルナンデス・チョン・クイ(ヴィッテ・デ・ヴィット現代美術センター[旧称]ディレクター)、住友文彦(アーツ前橋 館長/東京藝術大学大学院 准教授)、高橋瑞木(CHAT[Centre for Heritage, Arts and Textile]エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター)、キャロル・インハ・ルー(北京インサイドアウト美術館 ディレクター)、鷲田めるろ(十和田市現代美術館 館長)、近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)によって受賞者が決定した。

「TCAA2021-2023」の授賞式とシンポジウムは今年3月に行われる予定だ。

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