公開日:2022年1月1日

2022年はこれを見たい! リヒター、Chim↑Pom、具体まで、全国の注目・おすすめ展覧会14選

2021年に開催が予定されている展覧会の中から、編集部おすすめの14の展覧会を紹介

ゲルハルト・リヒター 抽象絵画(649-2) 1987 キャンバスに油彩 ポーラ美術館蔵 © Gerhard Richter 2021 (20102021)

現代アートを牽引するアーティストの個展や、伝説の美術家集団の回顧展など、注目の展覧会が目白押しの2022年! 現時点で発表されている展覧会のなかから、現代アートを中心に14のおすすめ展覧会を会期順に紹介する。


田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」(福岡市美術館)

田部光子(1933年生まれ)は日本統治下の台湾に生まれ、1946年福岡に引き揚げ、絵画を独学。「九州派」の主要メンバーとして活動した後も、福岡の美術界や女性たちをも牽引してきた。同時代の社会の動きに敏感に反応し制作した《プラカード》や非常に早い時期に発表されたフェミニズム・アートとして近年注目を集める《人工胎盤》をはじめ、実体験と日々の思考から生まれた作品は、いまも見る者に強く訴えかける。
本展では、1974年に主宰した「九州女流画家展」などこれまでほとんど紹介されることのなかった1970〜80年代を含む、「九州派」時代から現在までの田部光子の活動を、作品と資料によって明らかにしていく。

会場:福岡市美術館
会期:2022年1月5日〜3月21日
https://www.fukuoka-art-museum.jp/

田部光子 人工胎盤 1961(2004再制作) 熊本市現代美術館蔵
「第3回九州・現代美術の動向展」パレードでの田部光子、福岡市内、1969年2月25日

ミケル・バルセロ展(東京オペラシティアートギャラリー)

ミケル・バルセロは1957年スペインのマジョルカ島生まれ。82年に国際美術展「ドクメンタ7」(ドイツ・カッセル)で鮮烈にデビューして以来、スペインをはじめパリ、アフリカのマリ、そしてヒマラヤなど世界各地に活動の場を広げ、各地の歴史や風土と対峙するなかで制作を続けてきた。現代アートを牽引するアーティストのひとりとして評価されながらも長らく日本でほとんど未紹介であったこの画家の、国内の美術館で初の個展となる本展。巨大なスケールの絵画作品を中心に、彫刻、陶芸、パフォーマンス映像などを加えた約90点で初期から現在までの活動を紹介する。
展覧会は2021年に国立国際美術館からスタートし、長崎県美術館、三重県立美術館を経て、東京オペラシティアートギャラリーが最後の巡回先となる。

会場:東京オペラシティアートギャラリー
会期:2022年1月13日〜3月25日
https://www.operacity.jp/ag/

ミケル・バルセロ 雉のいるテーブル 1991 作家蔵  © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021. Photo © Galerie Bruno Bischofberger

奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム(東京都庭園美術館)

芸術の枠を超えて、人々の意識の深層にまで影響力を及ぼした20世紀最大の芸術運動、シュルレアリスム。革新的な意匠を生み出し、時代を先駆けようとする優れたクリエーターたちの表現は、時にシュルレアリスムの理念と重なり合うものであり、モードの世界にもシュルレアリスムに通底するような斬新なアイデアを垣間見ることができる。
本展ではさらに、シュルレアリスムの感性に通ずるような作品群にも注目し、現代の私たちからみた「奇想」をテーマに、16世紀の歴史的なファッションプレートから現代アートに至るまでを幅広く展覧。シュルレアリスムがモードに与えた影響をひとつの視座としながら、その自由な創造力と発想によって、モードの世界にセンセーションをもたらした美の表現に迫る。旧朝香宮邸である会場と展示の化学反応も楽しみな展覧会だ。

会場:東京都庭園美術館
会期:2022年1月15日〜4月10日
https://www.teien-art-museum.ne.jp/

コルセット 1880年頃 イギリス 神戸ファッション美術館蔵
マルタン・マルジェラ ネックレス 2006 京都服飾文化研究財団蔵 京都服飾文化研究財団撮影

上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー(三菱一号館美術館)

19世紀末のウィーンに生まれ海を渡った女性デザイナー、上野リチのデザイン世界の全貌を展観する世界初の回顧展が行われる。フェリーツェ・リックス(後の上野リチ・リックス、1893-1967)は、ウィーン工芸学校でウィーン工房のヨーゼフ・ホフマンらに師事、才能を開花させた。卒業後は同工房に入り、テキスタイルデザインなどを手がけ、自由な線と生命感あふれる色彩で鳥や魚、花や樹木といった身近な自然を組み合わせたデザインは人気を博した。
リチは京都出身の建築家・上野伊三郎と出会って結婚後、2つの都市を往復しながら、ウィーン工房所属デザイナーとして活動を続け、1930年の工房退職後も、テキスタイルだけでなく、身の回りの小物類など様々なデザインに携わり、第二次世界大戦後には個人住宅や店舗などのインテリアデザインに加え、教育者として後進の指導にもあたった。
本展では、リチの大規模コレクションを所蔵するウィーン、ニューヨーク、京都から作品が集結する。

会場:三菱一号館美術館
会期:2022年1月13日〜4月10日
https://mimt.jp/lizzi/

上野リチ・リックス プリント服地デザイン:ボンボン(2) 1925-35年頃 京都国立近代美術館蔵

生誕100年 松澤宥(長野県立美術館)

松澤宥(まつざわ・ゆたか、1922-2006)は、長野県諏訪郡下諏訪町生まれで、同地を拠点に国内外に芸術を発信し続けた、日本を代表するコンセプチュアル・アー ティストのひとり。2022年2月2日の松澤宥生誕100 年にあたり、生涯をたどる回顧展が行われる。
本展では、芸術家としての原点である建築や詩から、美術文化協会展や読売アンデパンダン展等に出品された絵画やオブジェ、1964 年に「オブジェを消せ」という啓示を受ける前後より国内外で発表された言語による作品やパフォーマンスまで、松澤の多彩な作品と活動を同時代の資料や写真を交えて紹介する。また、伝説のアトリエ「プサイの部屋」 の一部を再現するとともに、VRで体験できる多彩な展示となる。

会場:長野県立美術館
会期:2022年2月2日〜3月21日
https://nagano.art.museum/

松澤宥 パフォーマンス《消滅の幟》 1984 スイス・フルカ峠 撮影:大住建
松澤宥 実のプサイの部屋 1964

Chim↑Pom展:ハッピースプリング(森美術館)

都市、消費主義、飽食と貧困、日本社会、原爆、震災、スター像、メディア、境界、公共性など多岐にわたるテーマで、現代社会の事象や諸問題に対するメッセージ性の強い作品を発表してきたアーティスト集団のChim↑Pom。
核や放射能に言及する作品、メキシコと米国の国境沿いで境界をテーマにしたプロジェクト、東京の空きビルを舞台にした展覧会やイベント企画、公共空間としての「道」を制作するプロジェクトや、直近では、マンチェスター国際芸術祭(2019)で、19世紀に同地で流行したコレラとビールの歴史的関係をテーマにした大型の参加型プロジェクトを発表するなど、その活動の領域はますます拡がっている。
本展は、Chim↑Pomの初期から近年までの代表作と本展のための新作を一堂に集めて紹介し、結成17周年を迎える彼らの活動の全貌を回顧展という形式で検証する世界初の試みとなる。

会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)ほか
会期:2月18日〜5月29日
https://www.mori.art.museum/jp/

Chim↑Pom ポートレイト 撮影:山口聖巴
Chim↑Pom ブラック・オブ・デス 2008 ラムダプリント、ビデオ 写真:81×117.5 cm、ビデオ:9分13秒 Courtesy of ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)

池田亮司展(弘前れんが倉庫美術館)

池田亮司は1966年岐阜県生まれ、パリおよび京都府在住。電子音楽の作曲を起点に、音やイメージ、物質、物理現象、数学的概念などの様々な要素の精緻な構成を用いて、見る者・聞く者の存在を包み込むライブ・パフォーマンスやインスタレーションを発表してきた。
弘前れんが倉庫美術館の本展は、2009年以来となる国内美術館での大規模な展覧会であり、新作を含む近年の池田の活動を展覧。高さ15mの吹き抜けの大空間にプロジェクションを行うほか、各展示室の映像や音響が時に結びつきながら、煉瓦倉庫を改修した同館ならではの建築空間と作品とが共鳴・共振する。

会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:2022年4月16日〜8月28日
https://www.hirosaki-moca.jp/

池田亮司 data-verse 1 2019 Courtesy of the Artist and Audemars Piguet Photo by Julien Gremaud © Ryoji Ikeda

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画ーセザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策(アーティゾン美術館)

石橋財団コレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」。鴻池朋子、森村泰昌に続くシリーズ第3回では、柴田敏雄と鈴木理策が登場する。
写真が19世紀に発明され普及し始めた頃と時を同じくして、絵画は印象派をひとつの起点として、それまでの伝統的な表現から大きな変革を繰り返し、そのモチベーションには写真の存在が少なからずあった。他方写真は19世紀半ばの誕生の頃より、美術作品として、記録的な目的ではない絵画的な表現が模索され、その意識はその後も現代に至るまで綿々と続いている。今回のジャム・セッションは、柴田敏雄と鈴木理策が活動初期より関心を寄せ続けていたセザンヌの作品を起点に、現代の写真作品と絵画の関係を問う試みとなる。

会場:アーティゾン美術館
会期:2022年4月29日〜7月10日
https://www.artizon.museum/

柴田敏雄 栃木県日光市 2013 作家蔵
鈴木理策 サント=ヴィクトワール山 NZ P-67 2001 作家蔵

ポーラ美術館開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」(ポーラ美術館)

ポーラの創業二代目の鈴木常司(1930-2000)が収集したコレクションと近年に新収蔵した作品をあわせて紹介する初の機会となる。企画の主要なテーマは「光」。モネや印象派の画家たちは光の表現を追究したが、リヒターなど現代の作家たちの作品にも、光への強い関心がうかがわれる。
2020年、約30億円でのオークション落札が話題となったゲルハルト・リヒター 《抽象絵画(649-2)》 も初のお披露目となる。

会場:ポーラ美術館
会期:2022年4月9日〜9月6日
https://www.polamuseum.or.jp/

クロード・モネ 睡蓮 1907 キャンバスに油彩 ポーラ美術館蔵
ゲルハルト・リヒター 抽象絵画(649-2) 1987 キャンバスに油彩 ポーラ美術館蔵 © Gerhard Richter 2021 (20102021)

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥(国立新美術館)

「もの派」を代表する作家として国際的にも大きな注目を集めてきた現代美術家、李禹煥(リ・ウファン)の大規模な回顧展が行われる。李は1936年韓国の慶尚南道生まれ。ソウル大学入学後の1956年に来日し、その後、日本大学で哲学を学び、東洋と西洋の様々な思想や文学を貪欲に吸収。60年代から現代アートに関心を深め、60年代後半に入って本格的に制作を開始した。
視覚の不確かさを乗り越えようとした李は、 自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」と呼ばれる美術の動向を牽引し、それを著述においても展開した。
東京では初の大規模な回顧展となる本展では、「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた「関係項」シリーズ、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会する。また、李の創造の軌跡をたどる過去作とともに、新たな境地を示す新作も出品される予定だという。

会場:国立新美術館
会期:2022年8月10日~11月7日
https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/leeufan/

李禹煥、フランス、アングレームでの《Relatum - The Shadow of the Stars》設置作業、2021 Photo ©︎ Lee Ufan

ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)

ドイツ人芸術家、ゲルハルト・リヒター(1932-)は、現代アートの最重要人物のひとり。私たちが世界を捉える条件自体を問い直すために、リヒターは、具象絵画、抽象絵画、写真の上に描いたもの、ガラスや鏡を用いた作品、映像作品など、じつに多岐にわたる制作活動を行ってきた。リヒターが90歳を迎える年に行われる本展は、彼が大切に手元に残してきた作品群を中心に、60年にわたる画業を紹介。とりわけ、第二次世界大戦時、ユダヤ人強制収容所でひそかに撮られた写真のイメージを出発点として描かれた抽象絵画の大作《ビルケナウ》(2014)は、彼がイメージを描くことの可能性と不可能性を追求してきたことを示す好例として、本展の見どころのひとつとなるだろう。2022年10月15日には豊田市美術館に巡回予定。

会場:東京国立近代美術館
会期:2022年6月7日〜10月2日
https://richter.exhibit.jp/

ゲルハルト・リヒター ビルケナウ(937-1) 2014年 ゲルハルト・リヒター財団 キャンバスに油彩 260×200cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)

「ジャン・プルーヴェ」展(東京都現代美術館)

1990年代以降再評価が高まり、国内外で高い人気を誇るジャン・プルーヴェ(1901-1984)の大規模な展覧会が行われる。
画家の父と音楽家の母のもとパリに生まれたプルーヴェは、産業と芸術の融合を図ったアール・ヌーヴォーの一派であるナンシー派の影響下で、金属工芸家としてキャリアを出発させ、その後ル・コルビュジエ、シャルロット・ぺリアンらとの数々の共同作業を行いながら、家具から建築へと仕事を拡大していった。
アルミニウムやスチールといった新たな建築素材を探求するとともに、解体・持ち運び可能な椅子やプレファブ建築などの新技術を開発したプルーヴェの仕事はひとつの分野に収まることなく、ジャン・ヌーヴェルやレンゾ・ピアノをはじめ、20世紀の建築・工業デザインの分野に大きな影響を与えた。
本展は、現存するオリジナル家具およそ100点、ドローイング、資料の展示に加え、移送可能な建築物の屋外展示を通じて、プルーヴェの仕事を網羅的に紹介する。

会場:東京都現代美術館
会期:7月16日〜10月16日
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Jean_Prouve/

左から、ジャン・プルーヴェ 《カフェテリアNo.300組立チェア》(1950年頃)© Galerie Patrick Seguin、マクセヴィルのアトリエ・ジャン・プルーヴェにて(1955年頃)© Centre Pompidou-MNAM/CCI-Bibliothèque Kandinsky-Dist. RMN-Grand Palais

東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」(東京国立博物館)

東京国立博物館の膨大な所蔵品の中から国宝89件すべてを含む名品と諸資料を通して、東京国立博物館の全貌を紹介する展覧会が開かれる。展示は2部構成で、約150件を展示予定。
第1部「東京国立博物館の国宝」では、所蔵する国宝89件すべてを展示(会期中展示替えあり)。これは150年の歴史上初めてのことで、誰も見たことがない、メモリアルイヤーにふさわしい展示が実現。第2部「東京国立博物館の150年」では、日本の博物館の歴史ともいえる東京国立博物館の150年を3期に分け、関連する作品や資料、再現展示、各時代の映像などを通してわかりやすく紹介する。

会場:東京国立博物館
会期:2022年10月18日~12月11日
https://www.tokyoartbeat.com/venues/-/1DC8EF86

古今珎物集覧 一曜斎国輝 東京国立博物館蔵 明治5(1872)

すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合(大阪中之島美術館、国立国際美術館)

1954年に結成された美術家集団「具体美術協会(具体)」は吉原治良を絶対的指導者とし、50〜70年代にかけ日本の前衛美術を牽引してきた。その活動の軌跡は国内外で注目を集め、戦後日本美術の原点としてもとらえられている。
本展は、具体の活動拠点「グタイピナコテカ」が建設された地、大阪・中之島で行われる初の大規模な具体展となる。2022年2月に開館する大阪中之島美術館と、道路一本を隔てて隣り合う国立国際美術館。具体が解散して50年の節目となる2022年、2館同時開催で行われる本展は、「分化と統合」というテーマを掲げ、新たな具体像の構築を目指す。

会場:大阪中之島美術館国立国際美術館
会期:2022年10月22日〜23年1月9日
大阪中之島美術館ウェブサイト国立国際美術館ウェブサイト

吉原治良 作品(黒地に白丸) 1967 キャンバスにアクリル 大阪中之島美術館蔵
白髪一雄 ミスター ステラ 1958 和紙・キャンバスに油彩 大阪中之島美術館蔵

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