公開日:2023年7月12日

さいたま国際芸術祭2023のテーマは「わたしたち」。目 [mé]がディレクションし、準備やリハーサル風景も公開へ

2023年10月7日から12月10日まで、さいたま国際芸術祭2023が開催へ。記者会見が行われた。

上段左から浅見俊哉、飯島浩二、松永康、増井宏文、南川憲二、荒神明香、清水勇人(さいたま国際芸術祭実行委員会会長/さいたま市長)、芹沢高志(さいたま国際芸術祭2023ディレクター)

さいたま国際芸術祭とは、さいたま市を舞台に3年に一度開催される芸術の祭典。2016年に初回開催以来、文化芸術を活かした地域の活性化や都市の魅力向上を目指し、国内外のアーティストとともに展開されてきた。そして2023年10月7日〜12月10日、第3回となる「さいたま国際芸術祭2023」が行われる。

ディレクターを務めるのは、アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二、インストーラーの増井宏文を中心とする現代アートチームの「目 [mé]」。1970年に完成し、2022年に閉館するまで多くの人々に親しまれた「旧市民会館おおみや」が期間限定で復活し、芸術祭のメイン会場となる。

メイン会場では、音楽コンサート、新作パフォーミング・アーツの公演、映画作品の上演、市民文化団体による公演など、様々な演目を展開。それらの準備やリハーサル風景も連日公開される。また、メイン会場の各展示室では、美術家や写真家、編集者や盆栽師などによる作品を展示。なかには日によって変化していく作品もあるという。

イメージヴィジュアル。背景の写真は写真家の白鳥建二によるもの


参加アーティストは、アーニャ・ガラッチオ、荒川弘憲、イェンズ・パルダム、伊藤比呂美、今村源、エム・ジェイ・ハーパー、L PACK.、小田香(『セノーテ』と『OUR CINEMAS』を上演)、オルヤ・オレイニ、川島拓人、グザヴィエ・ドラン(『たかが世界の終わり』を上演)、倉田翠、近藤良平、さいたまを拠点とする市民文化団体、沙青(シャー・チン)、白鳥建二、田口陽子、谷口真人、短編アニメーション・プログラム、テレンス・マリック(『ボヤージュ・オブ・タイム』を上演)、濱口竜介(『ハッピーアワー』を上演)、平尾成志、プッティポン・アルーンペン(『マンタレイ』を上演)、マーク・ペクメジアン、ミハイル・カリキス、村川拓也。オープニングアクトはテリー・ライリー、クロージングアクトはジム・オルークが務める。

記者会見にて、プロデューサーの芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)は「さいたま市民を中心に、私たちがアーティストともに作品を作り世界に発信していく。そういう考えによって芸術祭を作ってきました。いまはなかなか難しい時代で世界にも問題が山積み。そんななかで目 [mé]が打ち出したテーマは『わたしたち』というテーマは適切であり、国際的にも注目されるようになってくと思う」と自信をのぞかせた。また今年から来年にかけ札幌では札幌国際芸術祭、横浜では横浜トリエンナーレといった芸術祭が行われるが、「それぞれの芸術祭の性格がはっきりしてきたのでやっと日本でも芸術祭の多様性についての議論ができるようになってきた」との考えも語った。

目 [mé]のプレゼンテーション

目 [mé]の南川は、今回の芸術祭が「営みの集合体」「スケーパー(SCAPER)」「さいたま」「もう一度『みる』」の4つのキーワードで構成されると解説。

そのなかで注目したいのは、聞き慣れない「スケーパー(SCAPER)」というキーワード。これは「景色の人」を意味する目 [mé]の造語で、たとえばベレー帽にくわえパイプでイーゼルを立て風景画を描いている “絵に描いたような画家”や、計算されたように並んだ落ち葉など、演出なのか現実なのかが曖昧になる現象のこと。近藤良平、田口陽子、目 [mé]によってこうした仕掛けが芸術祭の各所に現れる。

現在は、秋の開幕に向けた準備の真っ只中。「自分が持つ力を全部ぶつけるつもりでやっている」(南川)、「みんなが本気でやっている。こんなところから良い芸術祭ができると実感している」(増井)、「どのアーティストも独自の世界観があって、さいたまとの縁も合わさり本当に良い作品ができてきている。ぜひ会場に足を運んでほしい」(荒神)と、それぞれに意気込みを語った。

浅見俊哉

メインプログラムに加え、さいたまで長きにわたり創作を行っているアーティスト、アートプロジェクトを牽引してきたアート・コーディネーターがキュレーターとなり市内全域で実施されるプログラムでは、浅見俊哉、飯島浩二、松永康が選出。浅見は、日常生活のなかで誰でもアートに参加する習慣を生み出す「アーツセンター」を創造するプロジェクト「さいたまアーツセンタープロジェクト2023*(SACP2023*)」。飯島は、さいたま市に点在する「盆栽」「マンガ」「人形」「鉄道」をテーマにした施設をアートでつなぐプロジェクト「アーツさいたま・きたまち」。松永は、さいたま市内で活動する画廊や美術家に声をかけ、普段はバラバラに行われている展覧会が一堂に会する「創発inさいたま」を行う。

気候変動、社会格差、分断など様々な問題を抱える世界を、新たな目線でもう一度「みる」きかっけをつくる本芸術祭。開催を楽しみに待ちたい。

目 [mé]。左から南川憲二、荒神明香、増井宏文

名称:さいたま国際芸術祭2023
会期:2023年 10月7日~12月10日
会場:メイン会場:旧市民会館おおみや(「さいたま新都心駅」「大宮駅」より徒歩約15分)
※メイン会場のほか、市内の文化施設やまちなかでも関連プロジェクトを展開
メイン会場開館時間:[日・火~木]10:00~18:00[金・土]10:00~20:00
メイン会場休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)

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