公開日:2022年7月1日

今月の読みたい本!【7月】湯浅政明、ヴァージル・アブロー、タトゥー、人新世、建築、保存修復、批評論集など

アート、映画、デザイン、建築、カルチャーなどに関するおすすめの新刊を毎月紹介。

『湯浅政明のユリイカな日々』

湯浅政明 著  
東京ニュース通信社 2500円+税 5月25日発売

最新の劇場映画『犬王』が公開中のアニメーション監督、湯浅政明。『マインド・ゲーム』『ピンポン THE ANIMATION』『夜は短し歩けよ乙女』『映像研には手を出すな!』『日本沈没2020』といった作品を生み出し、アニメーションの可能性を更新してきたクリエイターの”脳内”はどうなっているのか? 本書では、子供の頃の思い出から、『クレヨンしんちゃん』などに携わったアニメーター時代、監督として話題作を次々と発表し続けている現在にいたるまでの歩みをひもとき、その創造性の原点や演出術の秘密を解き明かす。構成・文は映画ライターの渡辺麻紀。

『森の子レオ』

スタシス・エイドリゲーヴィチュス(写真・ドローイング)、中川素子(文)  
水声社 1500円+税 5月25日発売

スタシス・エイドリゲーヴィチュスはリトアニアに生まれ、1980年代からポーランド・ワルシャワに住むアーティスト。インスタレーション、彫刻、ブックアート、演劇など多岐にわたる創作活動を続ける。そのドローイングと写真に、絵本・美術評論家である中川素子が文を付した絵本が本書だ。森や水辺で遊ぶ少年レオの視点から、豊かな自然との対話が描き出される。

『美術作品の修復保存入門:古美術から現代アートまで』

宮津大輔 著  
青幻舎 2500円+税 6月9日発売

アート・コレクターであり横浜美術大学学長である筆者による、美術作品や文化財の「修復保存」に関する入門書。絵画作品、紙作品、立体作品、映像等のタイム・ベースド・メディア作品といった分類ごとに、技法や材料、保存・保管といった基礎を、豊富な事例やエピソードとともにわかりやすく紹介する。

『クリスチャンにささやく:現代アート論集』

小林康夫 著  
水声社 2500円+税 6月10日発売

哲学者で東京大学名誉教授の筆者による新刊。タイトルにあるクリスチャンとは誰のことか。本書を読めば、「クリスチャン、きみが誰だか、ぼくは識らない」の一文から始まるテキストが、2017年東京都庭園美術館でのクリスチャン・ボルタンスキー個展に寄せられたものだと気づく。本書はこのように、対象に語りかけ、ささやきかけるかのような「2人称のクリティーク」というスタイルによって「美」と「倫理」を問い、現代アートを論じる美術批評論集だ。1997年の「デ・ジェンダリズム~回帰する身体」展から、2021年のミケル・バルセロ個展、22年金沢21世紀美術館「Blue」展まで、約30年ほどのあいだに書かれたテキストを収録。

『ダイアローグ』

ヴァージル・アブロー 著  
平岩壮悟 訳 アダチプレス 1800円+税 7月15日発売 

2021年11月に41歳で急逝したヴァージル・アブロー。2014年にファッションブランド「Off-White c/o Virgil Abloh™」を設立し、18年にはルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任するなど、ファッションやアート、建築といった領域を横断しながら様々なかたちでクリエイティビティを発揮してきた。本書は2016年から21年までの主要な対話9本を、日本オリジナル編集で翻訳。ヴァージルのアイデア、仕事、思想、生きかたが、あますところなく語られている。シカゴ現代美術館での回顧展「Figures of Speech」カタログでのレム・コールハースとの対話や、『新潮』2022年3月号で紹介された最後のロングインタビューも収録。

『身体を彫る、世界を印す:イレズミ・タトゥーの人類学』

山本芳美、桑原牧子、津村文彦 編著  
春風社 4000円+税 6月17日発売 

日本初のイレズミ・タトゥーの学術論集。マルケサス諸島のテ・パトゥ・ティキ、ニュージーランド・マオリのタ・モコ、タイのサックヤン、沖縄のハジチ、千葉のヒップホップファッション・ストア店員のスミ、医学から見たイレズミ、アイヌのシヌイェなど、各地の事例を紹介しながら、それぞれの社会の文化、美学、歴史、政治を考察。皮膚の上で営まれる美や真正性に迫る。

『様式とかたちから建築を考える』

五十嵐太郎+菅野裕子 著  
平凡社 2800円+税 6月17日発売

「私たちは本当に建築を見ているのか」「近代建築の本やガイドを開いても、〇〇様式というラベルをはってすませているものが多い」「〇〇様式と機械的に分類して、デザインの説明は終わるものなのか?」(五十嵐による本書の巻頭テキストより)。このような問題意識から出発した本書は、建築史家であるふたりの筆者が、日本近代の様式建築と西洋の歴史建築を接続しながら、豊富な挿図・写真とともに、建築について解説。建築における様式とは何か、そしてそのかたちが語るメッセージに迫る。

『ポスト人新世の芸術』

山本浩貴 著  
美術出版社 2500円+税 6月28日発売 

『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社 、2019)で、社会と芸術の交わりといった視点から現代美術史の流れをまとめた筆者の新刊。人間活動が地球環境に重大な影響を与える「人新世」という新しい時代区分の到来が語られ、新型コロナウイルスのパンデミックにより人間と自然との関係の見直しが余儀なくされる近年。大きな環境の変化を迎えるこの時代に、どのような芸術が可能なのか。本書の目的について筆者は「人間と自然の関係を軸とした美術史を構築することである」(「はじめに」より)だと述べている。主に論じられるのは、AKI INOMATA、本田健、集団蜘蛛、天地耕作、山本鼎といった異なる時代に活躍したアーティストやグループの実践だ。脱人間中心主義的な視点から、動物や植物といったノンヒューマンな存在と人類を相対化しながら、新たな芸術の歴史を描き出す。

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