会田誠 著
幻冬舎 1600円+税 7月21日発売
会田誠が23歳のときに制作した作品「犬」は、2012年の森美術館での個展開催時に抗議を受けるなど、これまでに様々な波紋を呼んできた。本書は作家本人が本作について解説した書き下ろし「I 芸術 『犬』全解説」と、2013〜14年の連載をまとめた「II 性 「色ざんげ」が書けなくて」を収録。「犬」自体が「マルチな方向に向けられた抗議」だと語る筆者が、この社会においてその「抗議」とはいかなるものか、なぜ本作はこの世に存在して然るべきなのか。東京藝術大学の門戸を叩いた1980年代以降の自身の歩みとともに、ポップ・アートやヌード、ポルノ、鬼畜、オタク、アイロニー、ジレンマといった言葉を繰り出しながら徹底的に書き綴る。
山梨俊夫 著
水声社 4000円+税 6月24日発売
神奈川県立近代美術館館長、国立国際美術館館長を歴任してきた著者による現代美術論。20世紀後半から21世紀初頭までの美術の変転を物質性、自律性、独創性、現実性の4つの視点から読みとき、それに関わる作家、作品を詳述する。国立国際美術館が企画・監修する「現代美術スタディーズ」という叢書として刊行。
つげ義春、つげ正助、浅川満寛 著
新潮社 2500円+税 6月30日発売
2020年、「ねじ式」や「無能の人」などの作品で知られるつげ義春が、アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞。受賞式が行われるのはフランスだが、人前に出ることを嫌うというつげの性分もあり、事前には関係者さえ現地入りは半信半疑だったという。本書はその初海外旅行の様子を、旅立ちから帰国まで完全密着レポート。授賞式で手を振る姿をはじめ、現地でのポートレイトを多数掲載。同行した息子・正助さんの談話、帰国後のつげさんへのインタビューなど貴重な内容を収録。さらに「李さん一家」「もっきり屋の少女」など、7篇の原画を初めて全頁掲載する。
社会彫刻家基金 編著
MotionGallery 2200円+税 7月11日発売
新型コロナウイルス感染拡大後の「新しい日常」において、アートを触媒に社会に変化を創り出すアーティストを支援すべく設立された社会彫刻家基金。同基金が開催した「社会彫刻家アワード2021」の受賞者である、オルタナティブスペースコア、ボーダレスアートスペースHAP、マユンキキの3組への取材や、調査選考委員の飯田志保子、卯城竜太、ヴィヴィアン佐藤の3名による選考プロセスなどを振り返った鼎談、関連するテーマへの論考などを収録した1冊。社会彫刻家の活動やそれによる社会の変化を通して、これからの社会や社会彫刻について考えていくきっかけを与える。
ポストコロナ・アーツ基金 編
左右社 2500円+税 7月20日発売
新型コロナ禍以降の社会的課題と考えられる「新しい成長」に関する価値観・視点を、アーティストとの協働プロジェクトにより創出し、展覧会等で広く社会へ提起する試みとして始まったポストコロナ・アーツ基金。本書は同基金がコロナ禍の2021年11月に開催した展覧会「『新しい成長』の提起 ポストコロナ社会を創造するアーツプロジェクト」のコンセプトブック。参加アーティストは青柳菜摘、池田剛介、遠藤麻衣、大和田俊、小泉明郎、SIDE CORE、サエボーグ、竹内公太、Chim↑Pom from Smappa!Group、中村裕太、西村雄輔、長谷川愛、布施琳太郎、毛利悠子、百瀬文、柳瀬安里。アーティストのインタビューや作品図版のほか、椹木野衣、藪前知子、鷲田めるろ、毛利嘉孝の論考を掲載。
広瀬浩二郎 著
平凡社 940円+税 7月20日
「全盲の文化人類学」として知られる筆者は、「ユニバーサル・ミュージアム=誰もが楽しめる博物館」を掲げ、展覧会やワークショップの開催に取り組んできた。2021年には満を持して企画した大規模展覧会「ユニバーサル・ミュージアム──さわる!〝触〞の大博覧会」が開幕するも、想定外の新型コロナウイルスのパンデミックが展覧会を直撃。コロナ禍で人々が「さわること」を忌避する時代に、触常者として生きる著者は何を考え、何を語ったのか。「さわること」の無限の可能性に迫る。松岡正剛や服部しほり、マクヴェイ山田久仁子といった識者らとの対談も収録。
卯城竜太 著
イースト・プレス 3200円+税 7月23日発売
今年、森美術館での個展を開催したChim↑Pom from Smappa!Groupの元リーダー、卯城竜太による単著で、書き下ろし40万字(単行本3冊分)にも及ぶ1冊。Chim↑Pomの作品成立のもとには「プランニング」「スタディ」「ネゴシエーション」「オーガナイズ」「ステートメント」「ファンディング」「展開」などの様々なオペレーションが隠されているという。本書はそれらの理論とともに、日本でもっともラディカルなアーティスト・コレクティブの内奥をすべて開示。新しい未来を切り開くためのドキュメント&理論書となっている。
青野賢一 著
リットーミュージック 2400円+税 7月23日発売
ビームスにてPR、クリエイティブ・ディレクター、〈BEAMS RECORDS〉のディレクターなどを経て、現在は文筆家、クリエイティブ・ディレクターとして活動する筆者による1冊。音楽とファッションが出会うことで生まれたムーブメントや流行、そしてアイコニックなアーティストの姿から、現代の問題意識と通底しているトピックスをピックアップして紹介する。ジェンダー、他者の文化、レイシズムといった現代的な視点で、映画や文学にも接近しながら、音楽とファッションの相互作用を鮮やかに考察。ジャンルを横断しながら現代における問題意識を提示する。
デボラ・ソロモン 著
林寿美、太田泰人、近藤学 訳 白水社 5000円+税 7月30日発売
女優のブロマイド、天体図、貝殻などが箱に収められた作品を、生涯に800点以上制作した孤高のアーティスト、ジョゼフ・コーネル。多くの芸術家に影響を与えた作家の評伝が、没後50年を記念して新版として刊行。作品図版の代わりに、原注の翻訳を加え、索引を充実させたものとなっている。
よしながふみ 著 山本文子 聞き手
フィルムアート社 1800円+税 7月26日発売
『大奥』『きのう何食べた?』などの作品が高い評価を受けるマンガ家のよしながふみ。その語り下ろしによるインタビュー集が刊行。20時間超におよぶインタビューで、自身の歩みや自作の制作背景をはじめ、愛してやまないマンガ、一貫した仕事への思い、家族という集団に向けるまなざしといったことについて語られる。商業デビュー作の『月とサンダル』から、初めてBL誌以外で連載された『こどもの体温』、『西洋骨董洋菓子店』『愛すべき娘たち』、近年の代表作まで単行本化された全作品について語られ、その仕事観が明らかになる。
五十嵐太郎 著
晶文社 2400円+税 7月27日発売
建築は歴史的に、戦争によって大きな発展を遂げた側面がある。建築史家、建築評論家の筆者が戦争と建築の関係について論じた初版(2003)に、ウクライナ侵攻と9・11の受容についての新たな書き下ろし2篇を加えた増補版が発売される。ルネサンス要塞建築のデザイン、震災と空襲を経た東京の変貌、オウム施設と朝鮮半島非武装地帯、9・11、アフガン空爆、イラク戦争など様々な事例に言及し、大都市を襲うテロと戦争のなかで、建築は今後どう変わるのかを論じる。