ダラ・バーンバウム Photo by Francesca D'Amico
アメリカのヴィデオ・アートの先駆者として知られるダラ・バーンバウムさんが5月2日、78歳で亡くなった。
バーンバウムは1946年、ニューヨーク生まれ。1970年代後半より同地を拠点に活動を開始し、ヴィデオ・アートとテレビ、音楽、そして進化を続ける通信技術の交差点に立ち、マスメディアの構造や視覚文化に内在する権力関係を鋭く掘り下げてきた。アートとメディアの境界を横断する手法は、現代の映像表現に多大な影響を与えている。

代表作《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》(1978〜79)では、人気テレビシリーズの女性ヒーローが変身する場面を編集し、女性像の構築やその政治性を浮き彫りにした。また、《Kiss the Girls: Make Them Cry》(1979)では、米人気番組『Hollywood Squares』から女性芸能人の映像を抜き出し、ステレオタイプな身振りや表情を文脈から切り離して再構成。テレビが生み出す女性像の表象とその消費のあり方に問いを投げかけた。

2022年には、ニューヨークのヘッセル美術館(Hessel Museum of Art)で大規模な回顧展「Dara Birnbaum: Reaction」が開催。2024年には、ウィーンのベルヴェデーレ宮殿・オーストリア・ギャラリー(Österreichische Galerie Belvedere)にて個展「CARLONE CONTEMPORARY: Dara Birnbaum」も実現。近年、国際的に再評価が進んでいた。
日本においては、プラダ 青山で開催された個展「DARA BIRNBAUM」(2023年6月1日〜8月28日)が記憶に新しい。また、2024年には東京国立近代美術館で企画展「フェミニズムと映像表現」(2024年9月3日〜12月22日)が開催され、代表作《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》が出品された。同展は好評を受け、2025年2月11日から6月15日まで一部内容を変更して再開催されているが、本作は含まれていない点に留意したい。