公開日:2025年12月15日

多様な感性が響き合う「Exploring Ⅲ かかわりから生まれる芸術のかけら」が大阪で開催

障がいのある人の造形表現と現代美術作家の作品が交差する展覧会「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が、2026年1月、大阪・本町で開催される

左から、メインヴィジュアル、大江正彦 きいろ 2023

表現の交差点としての「Exploring Ⅲ」

2026年1月15日から25日まで、大阪・本町のOsaka Metro本町ビルにて「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が開催される。
本展は、障がいのある人の作品を現代美術として紹介し、その社会的認知を広げていくためのプロジェクト「Art to Live」のプログラムのひとつで、障害のある人と現代美術の作家を包括的に紹介するグループ展のシリーズ第3弾。本展は、大阪府が推進する「2025 大阪・関西万博に向けた障がいのあるアーティストによる現代アート発信事業」の一環として企画され、一般社団法人日本現代美術振興協会とカペイシャス(オフィス・エヌ)が共同で実施するものだ。

メインヴィジュアル

障がいのある人による独自の造形表現と、現代美術作家の多様な実践を同じ空間で紹介する本展は、作品同士の交差が生む新たな視点に焦点を当てる。2025年に東京・南青山で開催された「Exploring Ⅱ - 日常に息づく芸術のかけら -」を引き継ぎつつ、前回では伝えきれなかった表現や、描く喜びがそのまま筆致として立ち上がる絵画などを新たに加え、“人はなぜ表現し続けるのか”という根源的な問いに迫る。

大江正彦 きいろ 2023
かつのぶ Untitled 2024 Courtesy of atelier ripehouse

「かかわり」が作品を形づくる──日常が息づく表現の背景

展覧会タイトルが示す「かかわりから生まれる芸術のかけら」とは、作品の背後に潜む日常の経験へのまなざしを指している。学校生活や家庭環境、身近な動植物、慣れ親しんだ素材、人との関係性などの“小さな日常の積み重ね”が、作品のなかに静かに息づいているという考えだ。

勝山直斗 無題 久美学園の壁面の記録写真 2021年10月20日撮影 Courtesy of art space co-jin
齊藤彩 無題 2024 Courtesy of Galerie Miyawaki

言葉では伝えきれない感覚や気づきは、しばしば他者との出会いによって新しい意味を帯びる。本展ではこの「かかわり」のプロセスに注目し、学びや経験が形を得た造形、記録としての表現、感覚に導かれた作品群を通して、鑑賞者が自身の記憶や感覚を呼び覚ますような体験を目指す。

近年、海外の美術館では障がいのある人の作品を現代アートとして扱う動きが広がりつつある。本展はそうした国際的な潮流も視野に入れつつ、地域に根ざした実践として、多様な表現の在り方を社会に開いていく試みとなっている。

9名の作家がつくり出す“唯一無二の表現空間”

本展には、大江正彦、かつのぶ、勝山直斗、齊藤彩、高田マル、中根恭子、平田安弘、松本国三、森本絵利の9名が参加する。造形的な探求を深めてきた作家、日常の営みから静かに表現を積み上げてきた作者、感性のままに筆致を重ねる描き手など、その背景とアプローチは多様だ。

高田マル こわれながらうまれる(間違った言葉)1 2024 撮影:Maniwa Yuki
中根恭子 牛乳パック 2014ー(進行中)記録写真 2025年撮影

それぞれの作品が会場内で響き合い、差異を超えて新しい関係性を生み出すことで、鑑賞者は“表現することの根源”を多角的に感じ取ることができるだろう。作品と向き合い、背景に潜む経験や感覚に思いを馳せる時間は、現代を生きる私たち自身が持つ感性を揺さぶり、世界を新しい角度から見つめ直すきっかけをもたらすはずだ。

平田安弘 とうもろこし 2024
松本国三 能楽の翁は 2000
森本絵利 御影石(大) 2017 Courtesy of Gallery Yamaki Fine Arts 撮影:Kirico

「Art to Live」とは、障がいのある人の作品を現代美術として紹介し、その社会的認知を広げていくためのプロジェクト。 大阪府「2025 大阪・関西万博に向けた障がいのあるアーティストによる現代アート発信事業」のプロジェクトとして2024年6月にスタートし、本展を含め5つのプログラムを実施してきた。 また、大阪府内の障がいのある人のアート作品等のアーカイブも行なっている。 詳細はこちら

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