左から、メインヴィジュアル、大江正彦 きいろ 2023
2026年1月15日から25日まで、大阪・本町のOsaka Metro本町ビルにて「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が開催される。
本展は、障がいのある人の作品を現代美術として紹介し、その社会的認知を広げていくためのプロジェクト「Art to Live」のプログラムのひとつで、障害のある人と現代美術の作家を包括的に紹介するグループ展のシリーズ第3弾。本展は、大阪府が推進する「2025 大阪・関西万博に向けた障がいのあるアーティストによる現代アート発信事業」の一環として企画され、一般社団法人日本現代美術振興協会とカペイシャス(オフィス・エヌ)が共同で実施するものだ。

障がいのある人による独自の造形表現と、現代美術作家の多様な実践を同じ空間で紹介する本展は、作品同士の交差が生む新たな視点に焦点を当てる。2025年に東京・南青山で開催された「Exploring Ⅱ - 日常に息づく芸術のかけら -」を引き継ぎつつ、前回では伝えきれなかった表現や、描く喜びがそのまま筆致として立ち上がる絵画などを新たに加え、“人はなぜ表現し続けるのか”という根源的な問いに迫る。


展覧会タイトルが示す「かかわりから生まれる芸術のかけら」とは、作品の背後に潜む日常の経験へのまなざしを指している。学校生活や家庭環境、身近な動植物、慣れ親しんだ素材、人との関係性などの“小さな日常の積み重ね”が、作品のなかに静かに息づいているという考えだ。


言葉では伝えきれない感覚や気づきは、しばしば他者との出会いによって新しい意味を帯びる。本展ではこの「かかわり」のプロセスに注目し、学びや経験が形を得た造形、記録としての表現、感覚に導かれた作品群を通して、鑑賞者が自身の記憶や感覚を呼び覚ますような体験を目指す。
近年、海外の美術館では障がいのある人の作品を現代アートとして扱う動きが広がりつつある。本展はそうした国際的な潮流も視野に入れつつ、地域に根ざした実践として、多様な表現の在り方を社会に開いていく試みとなっている。
本展には、大江正彦、かつのぶ、勝山直斗、齊藤彩、高田マル、中根恭子、平田安弘、松本国三、森本絵利の9名が参加する。造形的な探求を深めてきた作家、日常の営みから静かに表現を積み上げてきた作者、感性のままに筆致を重ねる描き手など、その背景とアプローチは多様だ。


それぞれの作品が会場内で響き合い、差異を超えて新しい関係性を生み出すことで、鑑賞者は“表現することの根源”を多角的に感じ取ることができるだろう。作品と向き合い、背景に潜む経験や感覚に思いを馳せる時間は、現代を生きる私たち自身が持つ感性を揺さぶり、世界を新しい角度から見つめ直すきっかけをもたらすはずだ。



「Art to Live」とは、障がいのある人の作品を現代美術として紹介し、その社会的認知を広げていくためのプロジェクト。 大阪府「2025 大阪・関西万博に向けた障がいのあるアーティストによる現代アート発信事業」のプロジェクトとして2024年6月にスタートし、本展を含め5つのプログラムを実施してきた。 また、大阪府内の障がいのある人のアート作品等のアーカイブも行なっている。 詳細はこちら。