公開日:2021年12月11日

表参道、最新アートガイド。こだわりの光る個性豊かな9軒のギャラリーを訪ねる

国際色豊かなギャラリーからアートブックショップ内のギャラリー、地域を代表する私設美術館までバラエティに富んだアートスペースを紹介。

表参道駅から原宿方面へと伸びる目抜き通り

つねに人で賑わう街、表参道・原宿。並木通りに連なるビッグメゾンなど高級なイメージがある表参道のいっぽうで、原宿は古着屋やスイーツ店など若者向けの店舗がひしめくイメージがあるかもしれません。そのような多様な街の雰囲気と同様に、様々な個性を持ったギャラリーや美術館が多く所在しています。

今回は、表参道駅の南側、南青山エリアから原宿駅方面へ向かい、明治神宮球場方面へ抜けるルートで神宮前エリアを歩き、周辺のギャラリーを紹介します。

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*都内のエリア別アートガイド記事の一覧はこちらをチェック

Void+

voidは「空白」、+は「和=プラス」を意味し、人びとのつながりからその都度色を変えるニュートラルな空間を目指している本ギャラリー。デザインスタジオAzone+Associatesが運営するvoid+ は、4つの空間で構成されています。

7平米のホワイトキューブの展示スペースは、引き締まる緊張感と穏やかな安心感を同時に感じさせるメイン空間であり、これまで棚田康司、五月女哲平、蓮沼執太、東恩納裕一らが作品を展示。さらに、ジャンルに関係なく人々が集い思考を交換するサロン的スペースと、アトリエや倉庫に埋もれていたもう一度見直したい注目の過去作を展示と販売を行うスペース「void+stock」、建物の正面軒下に位置しポップアップ企画などを行うスペースがあります。

2020年11月に行われた、棚田康司「その場に、これ」展示風景
作家の過去作を扱うスペース「void+stock」

ファーガス・マカフリー東京

ファーガス・マカフリーは2006年の設立以来、アメリカ、日本、ヨーロッパの戦後および現代アートを世界に向け紹介しているギャラリー。ニューヨーク、東京、サン・バルテルミー島にスペースを構えています。東京のギャラリーは表参道駅からほど近い場所に位置し、2018年3月ロバート・ライマン展でのオープンを皮切りに、アリ・マルコポロス、ジャスパー・ジョーンズ、リチャード・セラ、白髪一雄、田中泯などと協働した国際的な展覧会を開催しています。

ギャラリースタッフの久保典子さんは以下のように語ってくれました。「国内では見られる機会の少ない海外の現代アーティストの展示、また日米間の美術史的な関係性を考察する展覧会は弊ギャラリーならではのプログラムだと思います。もしかすると入口が少し入りづらいように見えるかもしれないのですが、気軽に足を運んでいただければと思います」。

ギャラリー外観
「リチャード・セラ:ドローイング」展覧会風景, Fergus McCaffrey Tokyo, 2020.6 © Richard Serra/Licensed by Artists Rights Society, New York; courtesy of Fergus McCaffrey Gallery; 撮影:丸尾隆一

Spiral(スパイラル)

世界的な建築家、槇文彦による螺旋状のスロープが象徴的な空間「アトリウム」を有するスパイラルガーデンを満たすのは、自然光の降り注ぐ開放的な雰囲気。散歩するようにアート鑑賞ができます。ギャラリーのほかにも、カフェ、多目的ホール、レストランバー、生活雑貨を扱うショップ、トータル・ビューティ・サロンなど多様なスペースがあります。

スパイラルの活動テーマは「生活とアートの融合」。オープン以来、現代美術やデザインの展覧会、演劇・ダンスなどの舞台公演、コンサート、ファッションショー、シンポジウムなどを行っています。

スパイラルガーデン内観(photo:Junpei Kato)
「石本藤雄展」(Photo:Sohei Oya(Nacasa&Partners)

UTRECHT(ユトレヒト)

2002年にオンラインショップをスタートし、代官山、南青山などを経て14年から渋谷区神宮前に実店舗があるUTRECHT(ユトレヒト)。アートブックショップでであると同時に、ギャラリーもあるという本スペースは神宮前にいながら都会の喧騒を忘れ、ゆっくりとした時間を楽しめる場所です。

ここでは、個性的な選書に注目です。一般書店では目にすることの少ない、国内外のアート、デザイン、ファッション関連書籍を中心に取り扱っており、アーティストが自ら制作・発行したものや、デザインに特色のあるもの、少部数のものなど、作り手の顔が見えるような書籍も販売。併設されたギャラリースペースNOW IDeAでは、書籍と関連する企画やアーティストの展示が随時開催されています。

ほかにもユトレヒトは、アパレルショップのブックセレクトやディレクション、国内最大級のアートブックフェア「TOKYO ART BOOK FAIR」の共同開催など、アートにまつわる活動も行っています。

アートブックショップスペース 内観
ギャラリースペース内観

Blum

1994年、アメリカ西海岸のサンタモニカで開廊したBlum & Poe。創設者のひとりであるティム・ブラムは90年代初頭に東京でディーラーやキュレーターの経験から得た日本の現代アートへの強い関心によって、日本、韓国、ヨーロッパでの展覧会を米国内で積極的に企画しています。海外ギャラリーの東京支店であるBlumでは国際的なレベルでの展覧会企画を見ることができるはずです。

「表参道・原宿エリアにはほかにもインターナショナルで野心的な企画を行っている素晴らしいギャラリーさんがいらっしゃいます。今後は、イベントの共同企画などコミュニティを一緒に盛り上げていけたらと思っています」と話してくれたのはディレクターの今井麻里絵さん。コミュニティの新たな動きも期待できそうです。

ギャラリー外観
アナ・パーク「Hello, Stranger」Blum & Poe (東京) での展示風景、2021年 (Photo: SAIKI, Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo)

NANZUKA UNDERGROUND

2005年に渋谷2丁目でオープンした本ギャラリーは、白金、渋谷での移転や統合を経て、21年6月、神宮前3丁目にリニューアルオープン。地下から地上へと飛び出してきたような味のある外観は、オープンにともない外壁を中村哲也がカスタムぺイントを、ギャラリーロゴを空山基が手掛けています。

ポップカルチャーと現代美術の接続を目指し、実験的な企画ギャラリーとしてスタートした
NANZUKA UNDERGROUND。「NANZUKA」時代を経て、再びギャラリー設立当初の名前を冠したことからもわかるように、フラグシップ・ギャラリーの場所や建物が変わっても現行のアートシーンや文脈の垣根を超えようとする姿勢は変わりません。

田名網敬一、空山基、山口はるみ、佐伯俊男といったイラストレーションとアートの境界を越境する作家や、モリマサト、Haroshi、ダニエル・アーシャム、佃弘樹、トッド・ジェームスといった国内外の新進作家などと協働しています。

ギャラリー外観
2021年8月に行われた、Christian Rex van Minnen「It Comes In Waves」展示風景

MAHO KUBOTA GALLERYは2016年にオープンした現代アートのギャラリー。ジェンダーの問題に着目して制作するアーティストの作品や、 「世界とは何か」という哲学的な問いをテーマに据えた作品など、認知心理学的なアプローチを実践しているアーティストの作品に主眼をおくギャラリーです。

「日常においてアートに触れ、アートと暮らすことで人生にどのように豊かな化学反応が起こるのか。国内外の優れたアーティストの展覧会を通し、鑑賞後も強く記憶に残り、その記憶が個人の思考のきっかけや探求へと広がってゆくような、そんな開かれた実験の場を目指しています」とスタッフの方は話してくれました。取扱作家には、古武家賢太郎、小川信治、播磨みどり、村井祐希、Atsushi Kaga、ジュリアン・オピーなどがいます。

ギャラリー外観
Atsushi Kaga「It always comes ; a solace in the cat」展示風景、2021、MAHO KUBOTA GALLERY

ユーカリオ

ユーカリオはセゾンアートギャラリー(2017年閉廊)のメンバーによって、2018年設立されたギャラリー。ギャラリー名の「ユーカリオ」は真核生物を意味し、ラテン語では「本当の核を持つもの」という意味があり普遍的価値として「本質」を持つ作品と作家を取り上げています。

表参道・原宿エリアとしての魅力を尋ねると「意図せず自然発生的に、アートな場所が増えていくのが神宮前エリアの面白さですね」と答えてくれたディレクターの鈴木亮さん。
所属作家は、菊池遼、楊博、ユアサエボシ、小川潤也、品川はるな、高橋直宏、菅原玄奨、磯村暖、畑山太志、海野林太郎、香月恵介、山口 聡一、石川 和人など。作家もギャラリストも1980〜90年代生まれの世代がが中心となっていることが、ユーカリオのひとつの特徴と言えるでしょう。

ギャラリー外観
2021年8月に開催された「EUKARYOTE GROUP SHOW 2021」展示風景

ワタリウム美術館

最後に訪れるのは、1990年に開館し、昨年30周年を迎えたワタリウム美術館です。スイスの建築家マリオ・ボッタによる美術館は三角地に建てられており、コンクリートに黒い石材で横縞が施された外観はこのエリアの景色を形作るランドマークの風格すらあります。

ナム・ジュン・パイク、ヨーゼフ・ボイスら国際的な作家の作品を展示するいっぽうで、日本国内やアジア圏の若手作家とも協働し、日本のアートシーンを後押ししてきました。展覧会以外のプログラムも充実し、一般参加可能なレクチャーやイベントも多数実施しています。

コレクションには、蔡国強、ドナルド・ジャッド、小沢剛、小野洋子、アンディ・ウォーホル、河原温、阿部浩二、ニキ・デ・サンファール、ルネ・マグリット、マンレイなどの作家作品があります。

美術館外観
「梅津庸一展 ポリネーター」2021年9月16日 - 2022年1月16日 Photo by Fuyumi Murata

そのほかにも表参道・原宿エリアには、日本庭園が印象的な根津美術館や浮世絵を専門とする太田記念美術館といった、個性的な美術館やギャラリーが存在しています。
活気あふれる表参道・原宿で、個性的なアートスペースに立ち寄り一息ついてみてはいかがでしょうか。

太田記念美術館外観

浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。