公開日:2022年12月12日

広島市現代美術館のリニューアルオープンは2023年3月18日。特別展には浸水被害を主題にした石内都の新作などが登場

多様な「前/後」をテーマとした記念特別展に、石内都、コウミユキ、髙橋銑、竹村京、毒山凡太朗らが新作を発表

石内都 The Drowned#2 2020 Courtesy of The Third Gallery Aya © Ishiuchi Miyako

新作公開だけでなく、リニューアル期間のプロジェクトなども一挙に紹介

大規模改修工事のため長期休館中の広島市現代美術館。同館では、2023年3月のリニューアルオープンにあたり、全館を用いた特別展「Before / After」が開催される。会期は2023年3月18日から6月18日まで。

シリン・ネシャット Land of Dreams 2019 Courtesy of the artist and Gladstone Gallery © Shirin Neshat

建物の改修工事を契機とする「前/後」を一つの足がかりとして、様々な「前」と「後」に着目するのが同展のテーマ。美術館が収蔵する作品・資料の経年変質や修復、原爆投下にさらされた広島の歴史やその後も推進される核エネルギーへの眼差しなどにかかわる作品やプロジェクトを通して、社会の変化やシステムにおける綻び、隠され葬り去られた過去や歴史があることを敏感に察知し、作品として発表してきたアーティストたちを取り上げる。

2007年から広島平和記念資料館に収蔵される被爆者たちの衣服などを撮影する「ひろしま」シリーズに継続的に取り組む石内都は、19年の台風による浸水被害でダメージを受けた自身の作品プリントを被写体とした「The Drowned」シリーズから未発表新作を交えて展示。

石内都 The Drowned#2 2020 Courtesy of The Third Gallery Aya © Ishiuchi Miyako

コウミユキは、通常は「オスワリ」のポーズで造形されることの多い犬の置物を、部分的に破壊し、組み立て直して立ち上がらせることで解放する「Stand Up!」シリーズの新作を発表。彫刻の保存修復の現場に身を置きながら現代美術の作家として活動する髙橋銑は、ブロンズの保存技法をそのままニンジンに適用し、その差異を問う「Cast and Rot」シリーズをはじめ、刻々と変化する香りを素材とした新作を発表する。

コウミユキ "Stand Up!" Series「駆け出した犬、浮遊する象」 2019 瀬戸内国際芸術祭2019/小豆島・三都半島での展示風景
髙橋銑 Cast and Rot No.13 2021 Photo by Ichiro Mishima Courtesy of LEESAYA

壊れた陶器の破損部分を絹糸で縫い直す「修復」シリーズなどを展開する竹村京は、美術館の改修工事を進める中で意図せず壊れてしまった回廊のガラスや、役割を終えた品々を用いた新作を発表。東日本大震災以降、故郷である福島の状況が一変したことをきっかけに作品制作を開始した毒山凡太朗は、広島でのリサーチを経てフクシマとヒロシマの考察を促す映像インスタレーションを発表。

竹村京 修復されたG.美術館の電球 2019(左)/竹村京 修復されたT.家の電球 2019(右) Photo by Shinya Kigure
毒山凡太朗 Long Way Home 2022 © Bontaro DOKUYAMA

このほかにも、平田尚也横山奈美和田礼治郎が新作を発表するほか、シリン・ネシャットの新規購入作品のお披露目、リニューアルにあわせて新設されるスペース「モカモカ」、広島市内にある様々な文字を調査し新しい文字を作る「新生タイポ・プロジェクト」の活動なども紹介される。今年12月8日に再開までいよいよ100日を切った広島市現代美術館の新たなスタートを期待して待ちたい。

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