公開日:2026年1月6日

国立博物館・美術館で訪日外国人観光客向け「二重価格」導入を検討

東京国立博物館では、一般入館料1000円から最大で3000円に上がる可能性も

東京国立博物館外観

国立の博物館や美術館の入館料をめぐり、訪日外国人観光客に対して一般料金より高い料金を設定する、いわゆる「二重価格」の導入が検討されている。2025年12月29日読売新聞が報じたところによると、文化庁は、国立施設を運営する独立行政法人に対し、導入を含めた検討を求める方針を固めたという。

この動きの背景にあるのは、国立文化施設の公共性と財政的な持続可能性をいかに両立させるかという課題である。現在、国立博物館や国立美術館の運営は、入館料収入や寄付金に加え、国からの交付金によって支えられている。いっぽうで、訪日外国人観光客の増加にともない、多言語解説パネルや音声ガイドの整備など、インバウンド対応にかかるコストも年々膨らんでいる。

政府は、こうした状況を踏まえ、国立文化施設が策定する2026年度以降の中期計画に、訪日外国人観光客向け料金を高く設定する二重価格の導入を盛り込むよう求める方針だ。あわせて、展示の公開期間の拡大や夜間開館日の増加など、来館者数の底上げにつながる施策も検討対象に含まれている。

対象となるのは、東京、京都、奈良、九州にある国立博物館のほか、国立西洋美術館、国立科学博物館など、全国11の国立施設である。とくに東京・上野公園に位置する東京国立博物館と国立西洋美術館は、訪日外国人観光客の来館が多い施設として知られており、今回の議論の象徴的な存在とも言える。

財務省の試算では、二重価格を導入した場合、訪日外国人観光客の入館料は一般料金の2〜3倍程度になる可能性があるという。たとえば、東京国立博物館では現在1000円の一般入館料が、最大で3000円程度に引き上げられるケースも想定されている。

こうした値上げは、日本に限った話ではない。海外の主要観光施設では、すでに居住者と外国人観光客で料金を分ける制度が一般化している例も多い。エジプトのピラミッドやインドのタージ・マハルでは外国人向け料金が設定されており、フランス・パリのルーブル美術館でも、EU域外からの来館者を対象に入館料を引き上げる方針が示されている。

もっとも、日本で同様の制度を導入する場合、たんなる収益確保策にとどまらず、「誰のための公共施設なのか」という根本的な問いが避けて通れない。訪日外国人観光客への負担増が、文化へのアクセスを狭めることにならないのか。あるいは、国内の居住者や納税者との公平性をどう担保するのか。制度設計次第では、差別的な印象を与えかねないという懸念もある。

インバウンド需要の拡大を背景に、国立文化施設の運営モデルは転換点を迎えている。入館料のあり方をめぐる今回の議論は、単なる価格設定の問題にとどまらず、日本の文化政策の方向性そのものを映し出すテーマとなりそうだ。

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