公開日:2023年5月25日

映画監督のケネス・アンガーが96歳で死去。『花火』『ルシファー・ライジング』のほか、書籍『ハリウッド・バビロン』など発表

アンダーグラウンドシネマの先駆者が亡くなったと所属ギャラリーが発表。エロスと同性愛の表現を通して、クィアな世界を切り拓いたパイオニア

「Sprueth Magers」ホームページより

クィア・カルチャーの礎を築いた前衛アーティスト

実験映画作家、芸術家、作家のケネス・アンガーが亡くなったことを、所属ギャラリーであるSprueth Magersが同ホームページで5月25日発表した。享年96。

1927年、カリフォルニア州サンタモニカ生まれのアンガーは、自身のキャリアのなかで30本以上の短編映画を制作。アメリカでゲイセックスが合法化される以前からエロスと同性愛をテーマとする作品を手がけ、1947年にアメリカで製作された最初のゲイセクシュアルに関する劇映画『花火』は、カリフォルニア州最高裁でその猥褻性が問われるなど、大きな物議を呼んだ。

その後、『スコピオ・ライジング』(1963)、『ルシファー・ライジング』(1972-80)など数々の代表作を手がけたほか、1959年にはハリウッド映画界の虚飾を暴露したゴシップ本『ハリウッド・バビロン』をパリで出版。数々のセレブ俳優たちについて記した同書はアメリカでは長いあいだ発売されず、アンガー自身も映画製作を断念せざるをえなかった(2000年に復活し、2013年までに十数本の短編映画を発表)。

アンガーは、豪華絢爛な映像、ポピュラー音楽そしてクィア性を通して、20世紀後半の前衛芸術シーンに大きな影響を与え、現代のクィアやユースカルチャーの基礎を築いた。

監督、プロデューサー、俳優、撮影、美術、衣装、編集のすべてを自ら担ったアンガーは、二重露光、ファウンド・フッテージ、フィルムの物質性を生かした視覚表現の実験者だった。同時に、欧米圏のキリスト教的規範に対するカウンターを実践するサタニストとしてのアイデンティティを有し、神聖に対する不敬、カウンターカルチャー、旧態的な映画への侵犯の姿勢は、その生涯に一貫する表現様式であった。

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