最終更新:2021年6月21日

10のキーワードでたどるMame Kurogouchi:長野県立美術館「10 Mame Kurogouchi」レポート

日本を代表するファッションブランドのひとつ、Mame Kurogouchi(マメクロゴウチ)。美術館では初となる単独での展覧会をレポート

柔らかな曲線、日本の伝統工芸や技法から着想を得たオリジナルのテキスタイルなどを特徴に、唯一無二の世界観を生み出しているファッションブランド「Mame Kurogouchi(マメクロゴウチ)」。今年10周年を迎えたMame Kurogouchiの、これまで発表される事のなかった創造の源泉を10のキーワードでたどる展覧会「10 Mame Kurogouchi」が長野県立美術館でスタートする。会期は6月19日~8月15日。

Mame Kurogouchiにとって美術館では初の単独展覧会は、本ブランドデザイナー・黒河内真衣子の生まれ故郷でルーツである長野で行われることになった。本展の手がかりとなるのは、ブランドを象徴する「ノート」「曲線」「刺繍」「長野」「色」「クラフト」「私小説」「夢」「テクスチャー」「旅」の10のキーワード。これまで21_21 DESIGN SIGHTなどで会場構成を行なってきた中原崇志が会場構成を行った本展では、あえて美術館の什器(展示ケース等)を活用し、通常は古美術なども展示される場所にMame Kurogouchiの繊細な服が収まるという新鮮なコントラストを生んでいる。

会場風景。会場にはキャプションが存在せず、ハンドアウトを手に展示を見るスタイル
会場風景より。手前が2020年春夏コレクション「Embrace」

本展で初公開となるのは、黒河内の夢の記述や旅先でのデッサン、生地などアイデアの詰まったノート。ノート見開きに1日1写真、1デザイン、1日記を埋めていく行為から生まれた2019年初夏コレクション「The Diary」のルックとともに、ブランド創設以前から書きためたノートから360ページが厳選して展示されている。7月には青幻社から初の作品集「MAME KUROGOUCHI: The Storys」も発売され、同書内でもノートの中身は紹介されるが、細部まで読むことができるのは会場だけ。デザイナーの思考が親密な距離感で伝わってくる、展示の核となる部分だ。

会場風景より「ノート」のパート
1日1写真、1デザイン、1日記を埋めていく行為から生まれた
会場風景より、2019年春夏コレクション「The Diary」

このノートからもわかるように、個人的な事象からスタートし「私小説的」とも言えるMame Kurogouchiの創作をインスピレーション源、創造の手法、洋服やアクセサリーなどを横断的に紹介することで、ひとつの旅のような鑑賞体験がもたらされる本展。その名の通り「私小説」のパートでは、小説家・朝吹真理子の文芸誌での連載『TIMELESS』の切り抜きと、その小説世界への共鳴と自身の日常を重ね合わせて生み出された2017年のコレクション「Timeless」とともに展示されている。その横では、活動初期より、ブランド代表するアイコンとして人気を博してきたPVCバッグが。同素材のヘッドピースと、雪景色や氷柱を彫刻化したようなピースと雪を思わせるルックは「長野」がキーワードであり、黒河内の幼少期の記憶が背景に透けて見えるパートになっている。

会場風景より、2017年春夏コレクション「Timeless」
会場風景より「長野」のパート。手前がPVC製のバッグ、ヘッドピースなど(2011年春夏〜2020年秋冬)

Mame Kurogouchiの洋服を語るうえで多く用いられるのが「曲線」「刺繍」「クラフト」「色」のキーワード。本展でも、それらのキーワードにひもづく洋服や資料は半数を超える。なかでも「クラフト」は、本展を美術館という場で行う意味が際立つパート。Mame Kurogouchiのコレクションは、日本各地の伝統工芸や技法から着想を得たものも多くあるが、このクラフトのパートではコレクションと着想元を並置するという試み。黒河内家に伝わる家紋入りの九谷焼大皿や古代こぎん刺し着物など、黒河内がどのように伝統を見つめ、いかに解釈し洋服に取り入れているかが示されている。

会場風景より、「加藤藤昇斎/笑籠」(昭和時代)と2020年秋冬コレクション「Embracing」

会場風景より、家紋入九谷焼青粒大皿と2014年秋冬コレクション「Personal Memory」
会場風景より「旅」のパート。手前が2016年春夏コレクション「Alchemist」、奥には1204枚の写真が並ぶ

そして「旅」のキーワード。黒河内が個人的に撮りためてきた膨大なスナップの一部や直筆のメモ、2016年のコレクションルック「Alchemist」が浮かび上がらせるのは、日常を小さな旅の連続としてとらえるデザイナーの目線だ。

展覧会を訪れたなら、前後どちらかで美術館の隣にある善光寺にも立ち寄りたい。黒河内が美を見出してきた歴史や手仕事の技術をここでも堪能でき、展覧会と地続きの「旅」を感じられるはずだ。

会場風景

会場風景より「刺繍」のパート。ドローイングや刺繍図案とともにコレクションが展示されている
刺繍のドローイングや工場への指示書

長野県立美術館のスタッフユニフォームは黒河内真衣子がデザインを手がけた

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