
森万里子 Great Light Scroll 2024-26
一般財団法人未来文化創造財団は、文化が持続的に発展する社会基盤づくりの活動のひとつとして、京都御所の西南にタイム堂ギャラリーをオープンする。こけら落としとして、「森万里子:Shrine II ─ 内なる光のトポロジー」を開催。会期は11月6日から2027年3月31日まで。

森万里子は、人類と宇宙との関係を考察する作品で知られる、多分野にわたるアーティスト。大規模なパブリックアートでは、精神性の探究と未来的な美学を融合させ、自然、人類、テクノロジーが調和する関係性を描き出してきた。
本展は、現代社会における分断と不安のなかで私たちが抱える「個」という孤独に焦点を当てる。森は、自らが体験した圧倒的な光の記憶──あらゆる次元へと広がる、生命根源の無限の愛の出現──を通して、人類が本来つながっているはずの宇宙的全一性を呼び覚ます。森が提示する「聖域」は、たんなる日常からの逃避ではなく、私たち一人ひとりの内にある静かな光へと立ち返り、魂の永遠の絆を再発見するための試みだ。
空間の中核をなす立体インスタレーションと、壁面を囲む平面作品で構成される本展は、作品群の共鳴によって、ギャラリー全体をひとつの「知覚の装置(アパラタス)」へと変容させる。

立体インスタレーション《Shrine II》は、春日大社摂社・水谷神社の床下に鎮座する聖なる磐座(いわくら)へのオマージュ。重層的にレイアウトされた几帳の中心に、クリスタル製の磐座が据えられる。奈良時代以来、龍神信仰の霊地として崇められてきた水谷川の聖性をタイム堂の空間へと転移させ、自己と世界を静かにつなぎ直す親密な体験として立ち上がる。
空間の周囲には、8点の掛け軸が展観される。平安古筆の息づかいに身を委ね、森自身が体験した光の記憶が描かれている。本シリーズは、意味を伝達する情報記号としての文字ではなく、生命の脈動を宿した形而上学的な「持続(Durée)」へと還流させる試みだ。
本ギャラリーは、京都御所の南西角に建つ大正期の町家二棟を結び、ひとつのギャラリーへとリノベーションされたもの。新たな文化的価値を育み、次の創造へとつなぐ場の幕開けとなる本展に注目したい。なお、10月31日より森美術館では「森万里子:燦燦」が開催される。ぜひ合わせて見てほしい。