公開日:2024年5月27日

杉本博司「桂花の舎」移築プロジェクト。江之浦測候所「甘橘山」に建築家・白井晟一が設計した個人邸宅を移築

公益財団法人小田原文化財団「江之浦測候所」と農業法人「植物と人間」の農地が共存する「甘橘山/KANKITSUZAN」に、建築家・白井晟一が晩年に設計した「桂花の舎(けいかのいえ)」 を移築。2025年竣工予定

「桂花の舎」 Photo: Yasushi Ichikawa

建築家・白井晟一が晩年に設計した個人住宅のひとつ「桂花の舎(けいかのいえ)」小田原文化財団 江之浦測候所「甘橘山/KANKITSUZAN」に移築するプロジェクトが始動する。

「桂花の舎」は、大和市・ 中央林間に建てられた個人住宅。建築家・白井晟一が晩年に設計し、1983 年白井の逝去後は、白井晟一研究所に引き継がれ竣工した。画家であった施主の依頼により、デザイン予算等に制限を設けず贅沢に設計され、その後、宅地開発により解体の危機に面したとき、ある篤志家により買い取られ、「甘橘山」への移築が決定した。

「桂花の舎」 Photo: Yasushi Ichikawa
「桂花の舎」 Photo: Yasushi Ichikawa

「甘橘山」 には、現代美術作家・杉本博司が設立した公益財団法人小田原文化財団の文化施設「江之浦測候所」と農業法人「植物と人間」が運営・管理する農地が共存している。杉本は「小田原文化財団 江之浦測候所」を拠点に日本文化の精髄を発信するとともに、農業法人「植物と人間」を設立。植物と人間の関わり方を再認識し、持続可能な植物と人間の共生を維持することをミッションとしている。

「甘橘山」では耕作放棄地の再生を目指し農薬不使用栽培に取り組み、野性味あふれる多種多様な柑橘類の販売もスタート 。自然体験イベントや農地活用の研究・教育事業を推進し、2022年には収穫された柑橘類を使用したドリンクやフードを提供する「Stone age Cafe」もオープン。サスティナブルな取り組みの実践の場として活用されている。

「桂花の舎」の住居と金木犀(桂花)が薫る庭は、小田原市江之浦の海に面した丘陵へ移設するにあたり、杉本博司の設計で改装される。「もし白井が生きていたとしたら」と問いかけ進められる移築計画は、杉本作品に通底する「本歌取り」の概念の新たな実践の場となる。

「桂花の舎」 Photo: Yasushi Ichikawa
「桂花の舎」 Photo: Yasushi Ichikawa

移築は2024年初頭から始まり、2025年に竣工予定。完成後は小田原文化財団「江之浦測候所」の施設として限定公開するとともに、農業法人「植物と人間」運営による宿泊施設としての活用も計画されている。

「桂花の舎」移築計画

所在地:神奈川県小田原市江之浦
主要用途:見学施設・宿泊施設
建主:株式会社植物と人間
移築計画コンセプト:杉本博司
移築実施計画:植物と人間/磯﨑洋才
特別協力:ART OFFICE OZASA/小笹義朋

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