新型コロナウイルス感染拡大により、今年は美術館やギャラリーをはじめ多くの文化施設が閉鎖され、その対策として様々な形式のオンラインビューイングが生まれている。
そうしたなかで立ち上がった、6月8日に始動する「Project le Bosquet(プロジェクト・ル・ボスケ)」は、どのようにすれば人々と芸術表現との出会いを生むことができるのかを考え、実践するプロジェクトだ。
まずは、オンラインで展示を見るのではなく、実際に参加者が能動的に自宅で展示を行なってみるという試みを促す。必要なのは、コンビニネットプリントと自宅の空間。参加者は、「Project le Bosquet」に賛同するアーティストの作品データから4人分のデータ(作品)を選んでコンビニでプリントアウトし、作品データに付属する指示書にしたがって、家で作品を展示してみるというものだ。
参加アーティストは、うらあやか、大谷陽一郎、大橋鉄郎、奥誠之(企画者)、小山維子(企画者)、久保田智広、黒沢聖覇、関根ひかり、鈴木健太、中川元晴、花沢忍、ピエール・ボナールの12名。
このプロジェクトへ参加費は1500円〜(任意)。参加者全員には、論考や対談などが収められた約40ページの展覧会カタログが送られる。プリント期間は全3回で、1回目は6月8日10:00〜6月15日23:59、2回目は6月16日10:00〜6月23日23:59、3回目は6月24日10:00〜7月1日23:59(発行されたプリント番号は各期間内のみ有効)。
プロジェクト名にある「le Bosquet」とは、画家ピエール・ボナールが1926年に購入した南仏ル・カネに構えた家の名前で、フランス語で「茂み」や「木立」の意味を持つ。第二次世界大戦下の1939年から1945年まで、この家に引きこもり、家の中の食堂やアトリエ、浴室、また窓から見える風景や庭、近所の散歩道をひたすら描いたというボナール。
友人・マティスに宛てた手紙の中ではこの時期、日々の暮らしと将来の不安を吐露していたというが、それは今の私たちの暮らしにも通じる状況とも言えるだろう。制限や不安の多い日常で、どのように「茂み」を見出せるのか? このプロジェクトを通してそのヒントを見つけたい。