公開日:2022年1月8日

泉屋博古館東京が3月にリニューアルオープン。新設した展示室やカフェなど、館内の様子をお届け

美術館内外の改修はもちろん、カフェやミュージアムショップの増設も。

会場風景より、第3展示室「四季連作屏風の間」

改修工事のため休館していた泉屋博古館東京(六本木)が3月19日にリニューアルオープンする。アップデートした美術館の概要とプレオープン特別展示の様子を中心にお伝えする。

泉屋博古館は、かつての財閥として知られる住友家が収集した美術品や工芸品を扱う美術館。収蔵品の多くは15代目当主の住友春翠によって収集されたものであり、青銅器を中心に絵画や仏具など3000点を超える。本館は京都東山に所在しており、東京には2002年六本木に分館としてオープン。19年に改修工事のための長期休館に入ったが、今年3月リニューアルオープンを迎える。

泉屋博古館東京外観 写真提供:泉屋博古館東京

訪れた際にはまず外観の変化に驚くだろう。エントランスは庇(ひさし)が短くなったことで、以前より明るく親しみやすい印象に。また建物壁面がガラス張りになり光が差しこみやすく開放感にあふれている。取材時は雪が降っていたこともあり、館内からガラス越しに望む周辺の緑地は都心とは思えない趣ある景色を演出していた。

会場風景より、HARIO CAFE 泉屋博古館東京店

1月4日〜6日にはリニューアル・プレオープンの特別展示として「木島櫻谷と近代の花鳥画」が開催。住友家ともゆかりのある日本画家、木島櫻谷を中心に所蔵品が展示された。なお、この展覧会は1月9日から日経VRアプリ内コンテンツとして、一般向けにも無料公開が予定されている。

展示室全体としては背景に光が飽和せず汎用性の高いグレーを使用し、照明器具は最新のものにアップデートしたことで鑑賞性が向上。特別展では「四季連作屏風の間」と題された第3展示室に、住友家が櫻谷へ依頼した《四季図屏風》(1917〜18)が展示されている。金色に輝く屏風画を、最適な光でガラスの映り込みを気にすることなく楽しめるだろう。

会場風景より、第3展示室「四季連作屏風の間」
会場風景より、木島櫻谷《雪中梅花》(1918) 

第1展示室は壁面のガラスケースのうち一面を撤去し、ゆとりある空間を実現。「花鳥画モダン」というタイトルの本展においては、高島北海《草花図屏風》(1913)や山口玲熙《冠鶴》(1914)など草花や鶴を題材とした大正時代の屏風画などが展示されている。

会場風景より、香田勝太《春秋草花図(右隻)》(1917~18頃)
会場風景より、石川光明《羊置物》(19〜20世紀) 

改修した展示室に加え、2つの展示室が新設。第2展示室は、既存の第1展示室と第3展示室を結ぶ場所にある。本展では「玉泉 vs 櫻谷」というタイトルのもと、望月玉泉《雪中蘆雁図》(1908)と木島櫻谷《猛鷲波濤図屏風》(1903)二つの屏風画が対峙するように配置される。

会場風景より、望月玉泉《雪中蘆雁図》(1908) 
会場風景より、木島櫻谷《猛鷲波濤図屏風》(1903)

第4展示室はもともと事務室だった空間を改装。住友家の別邸としてこの地に建てられた通称「麻布別邸」の記憶を継承することをコンセプトに、他の展示室と異なる意匠が施されているという。「掛け軸の間」として本展を飾るのは、櫻谷の掛け軸4点と山本芳翠の彫刻《虎石膏像》(19〜20世紀)。

会場風景より、第4展示室「掛け軸の間」
会場風景より、第4展示室「掛け軸の間」

ミュージアムショップとカフェも新設された。ミュージアムショップでは絵葉書や図録、収蔵品をモチーフとしたグッズも制作、販売予定。カフェはガラス製品で知られるHARIO直営店となっており、一足早く昨年10月からオープン。鑑賞前後にグッズを買ったり、景色を眺めて一息つくのもよいだろう。

会場風景より、ミュージアムショップ

来たる3月にリニューアルオープンを迎えるが、記念展として、東京・大阪・京都で活躍した日本画家たちを展観できる「日本画トライアングル」が3月19日〜5月8日に開催される。生まれ変わった泉屋博古館東京に、ぜひ足を運んでみよう。

浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。