最終更新:2022年8月12日

「瀬戸内国際芸術祭2022」夏会期レポート! 小豆島の注目作をめぐる

夏会期がスタートした「瀬戸内国際芸術祭 2022」。青木野枝の新作野外彫刻、アニミズムを感じさせるアジア圏作家の作品、新建築社+砂木による革新的なリノベーションなど、小豆島で公開中の作品を紹介

会場風景より、ワン・ウェンチー《ゼロ》

「海の復権」をスローガンに、地方の魅力を再発見することを目指す瀬戸内国際芸術祭は今年で5回目。夏会期は9月4日まで開催される。本記事では小豆島のレポートをお届け。プレスプレビューで取材した新作を中心に紹介する。直島・豊島・女木島・男木島・宇野港の作品を紹介したレポートも合わせてチェックしてほしい。

▶︎夏会期、 直島・豊島・女木島・男木島・宇野のレポートはこちら金氏徹平冨安由真坂茂+大岩オスカールらの新作を紹介。

▶︎春会期のレポートはこちら草間彌生、小沢剛らの作品が公開された直島の「ヴァレーギャラリー」(安藤忠雄設計)などを紹介。

会場風景より、青木野枝《空の玉/寒霞渓》

寒霞渓周辺

日本三大渓谷美にも数えられる寒霞渓(かんかけい)では春会期からの新作、青木野枝《空の玉/寒霞渓》が展示。撮影時は残念ながら曇天だったが、直径約4メートルの球体彫刻の階段を上がった踊り場からは瀬戸内海の絶景を一望できる。地域を代表する景勝地であることをふまえ、作品自体よりも風景を際立たせることに主眼を置いた本作は、これまで機能的な作品を制作してこなかった青木にとっても挑戦になったという。

踊り場に出ると、全国屈指の瀬戸内海を望む絶景が広がる

寒霞渓から福田港に向かう道中にあるのは、韓国のイー・スーキュン(李秀京)による《そこにいた》。古来、大きな岩石が信仰の対象になっていたことに注目したオブジェだ。小豆島産の花崗岩に、悟りを開いたブッダをイメージした金色の塗装や金箔が施されている。残念ながら作家の来日は叶わなかったが、港を望むロケーションや岩は作家自身が選定しつつ、塗装作業などは島の人々の手を借りたという。

会場風景より、イー・スーキュン《そこにいた》

福田港周辺

続いて、福田港にほど近い福武ハウスへ。福武ハウスは旧小豆島町福田小学校の建物を利用した施設で、アジア地域とつながることを目指し2013年にオープンした。館内では潘逸舟(はん・いしゅ)、カンチャナ・グプタ、アマンダ・ヘンらアジアにゆかりのある作家にフォーカスした「アジアギャラリー『時代の風景・時代の肖像+++』」や、写真を通じて福田地域の歴史を紹介する「福田からのお手紙」といった企画展が開催中だ。は空の鳥籠を「人」の漢字のように交差させた《よりそう鳥籠》と、古布の裏面をキャンバスとして描いた《ぬりえ》を出展している。

福武ハウス外観
福武ハウス2階で開催されている「アジアギャラリー『時代の風景・時代の肖像+++』」展会場風景
会場風景より、潘逸舟《よりそう鳥籠》と《ぬりえ》

夏会期からスタートした「アジア・アート・プラットフォーム協同展『Communal Spirit/共にある力』」は福田港周辺の民家などを会場に、アジア地域の作家と交流を図る企画展。本年はカンボジアのリノ・ヴス(ササ・アート・プロジェクト、アーティスティック・ディレクター)によるキュレーションのもと、アニミズムを感じさせる踊りを映像に収めたカンボジアのクヴァイ・サムナン、リサーチに基づいて食べ物とそれを売る人々のコラージュを制作したアナン・サプトトなど、5組の作家が参加した。

会場風景より、クヴァイ・サムナン《Preah Kunlong(The Way of Spirit)》
会場風景より、サマー・ファン&ツァイ・ジアイン《Blessing from Sunshine》
会場風景より、アナン・サプトト《EXPLORING FARMER GROUPS JOGLA X FUKUDA》

坂出港周辺

坂出港近くの「小豆島ハウスプロジェクト」は新建築社が運営するレジデンス施設。砂山太一と木内俊克による建築事務所・砂木によって、昭和期の住宅に改修が施された。レジデンスとしての運用を重視する新建築社の意向によって、砂木は企画運営にも携わっている。
彼らは近年、築100年を超えるような古民家の価値が広く評価されているのに対して、ここ数十年に建てられた「いまいち古くない建築」が評価されていないことを指摘。本プロジェクトにおいては「古いものと新しいものをパッチワーク状に織り混ぜていく空間作りを念頭に置いた」と語った。壁や梁、柱などは古いものをできるかぎりそのまま使用しつつ、補修が必要な箇所のみ改修し、魅力的なリノベーションを実現した。2023年からの運用開始後は、国内外の建築家や研究者、アーティストを招き、リサーチやワークショップ、滞在制作が行われる予定だ。

新建築社と砂木による「小豆島ハウスプロジェクト」内観
2階からは海も見えるロケーションだ

草壁港周辺

シャン・ヤン(向阳)《辿り着く向こう岸》は数百年前の中国の建具を用いた、入ることのできる巨大な船型作品。文化大革命や天安門事件によって、長い歴史を持つ文化が破壊されるのを目の当たりにしたシャンは、その苦しい経験をもとに7年前に本プロジェクトを開始。古いものに新しい命を与えることをテーマとした。上部のアーチ構造はじつは船の構造を逆さまにしたものになっており、それは戦争や差別など、現代社会の抱える矛盾を示しているという。船内に配された山水画に糸を縫い付け画面の背後に伸ばした初期の立体作品は、ぜひ直接見ておきたい。

会場風景より、シャン・ヤン《辿り着く向こう岸》
作品について語るシャン・ヤン

中山地域

ツアーの最後を飾ったのは、2010年の開催以来、毎回中山の千枚田で作品を公開してきたワン・ウェンチー(王文志)。本年は直径15メートルの竹で編まれた巨大なオブジェ《ゼロ》を公開する。コロナ禍で人間関係や社会システムがリセットされたことからタイトルを着想した本作は、オブジェ内部に入ると虫の鳴き声や木々のさざめきなど、自然の音が心地よく聞こえてくる。

会場風景より、ワン・ウェンチー《ゼロ》

瀬戸内海のほかの島々に比べ、ひとまわり大きい小豆島。施設や展示作品の数も充実しているため、1泊2日で全島を回ってみるのもよいかもしれない。オリーブやそうめん、醤油など名産品も多く、作品鑑賞と観光を存分に楽しめるはずだ。夏季は特に日差しが強いので、熱中症対策をして足を運ぼう。

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浅見悠吾(編集部インターン)

浅見悠吾(編集部インターン)

1999年千葉県生まれ。2021年6月からTokyo Art Beat エディターインターン。現代美術を中心に勉強中。現在、東京工業大学大学院在籍。

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