公開日:2022年11月24日

スカジャンの魅力と歴史に迫る。「PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」が横須賀美術館で開催中

テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)が所蔵する貴重なヴィンテージ・スカジャン約140点が集結!

Mt. Fuji, Cherry Blossoms and Eagle 1950年代中期 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵

憧れのスカジャンと基地文化の歴史を紐解く

戦後のアメリカ兵の日本滞在のおみやげ(スーベニア)として誕生した「スカジャン」。和装由来の鷲、虎、龍などの豪華な刺繍を施したジャケットは、やがてアメカジ(アメリカンカジュアル)やヴィンテージブームなどにあらわれるアメリカ文化に対する憧れの象徴としてむしろ日本人の側に親しまれ、「横須賀ジャンパー」略して「スカジャン」として定着し、高い人気を誇ることになる。横須賀美術館で開催中の「PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」では、その歴史と主要な販売地であった「ドブ板通り」の文化に触れることで、日本全国の米軍基地周辺で展開した「基地文化」の一端を紹介する。会期は2022年11月19日から12月25日まで。

YOKOSUKA Dragon 1946 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵

展覧会の中心となるのは、戦後、スカジャンをはじめとした衣料品を米軍施設へ納入していた「港商商会」を前身に持ち、半世紀以上スーベニアジャケットを作り続けてきたテーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)が所蔵する貴重なヴィンテージ・スカジャン約140点。「目を見開き天に昇る龍」の絵柄としてはこの1着のみしか発見されていない、1946年制作の《YOKOSUKA Dragon》をはじめ貴重なスカジャンが並ぶ。

これらの1940年後期から60年代頃にかけて制作されたヴィンテージ・スカジャンの特徴は、特殊なミシンを用いて実現された日本独自の刺繍技術である「横振り刺繍」だ。展覧会では、職人の手によって生まれる独特の立体感や美麗な色合いは当時の米兵たちを魅了したこの技術を用いて作品を作る大澤紀代美田沼千春NUICOOZAKI FUMINAら現代のアーティストの作品も展示されている。

ドブ板通りの米兵向け土産物店「スーベニヤ」 1956年9月 米公文書館蔵(横須賀市立中央図書館郷土資料室提供)
ドブ板通りを歩く米兵 1955年10月 米公文書館蔵(横須賀市立中央図書館郷土資料室提供)

展示内には、戦後の全国米軍基地周辺で展開した基地文化の一端をドブ板通りの写真や資料、実際に米兵向けに売られていた商品から紹介するコーナーも。スカジャンという地域性の強い文化表象を入口として、戦後から現在に至るまで大きな影響を与え続けるアメリカ文化、そして日本とアメリカの関わりに光を当てる展覧会と言えるだろう。

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