「銅版画家・駒井哲郎 掌上にひろがる星座のように」が神奈川県立近代美術館 葉山で開催中。銅版画のパイオニアによる、詩情溢れる作品世界

初公開も含む多彩な作品から、駒井の創作と人間像に迫る。会期は11月15日まで

駒井哲郎 束の間の幻影 1951 サンドペーパーによるエッチング 世田谷美術館蔵 福原義春コレクション © Ari Komai 2026/JAA2600113

戦後日本における銅版画のパイオニア、駒井哲郎(1920〜76)。日本の版画史に重要な足跡を残したアーティストの没後50年を記念する展覧会「銅版画家・駒井哲郎 掌上にひろがる星座のように」が、神奈川県立近代美術館 葉山で11月15日まで開催中だ。

駒井は、10代半ばで銅版画と出会い、東京美術学校(現・東京藝術大学)油画科で学んだ。戦後、1951年に《束の間の幻影》で「第1回サンパウロ・ビエンナーレ」在聖日本人賞を受賞。若い美術家や音楽家らによって結成された芸術家グループ「実験工房」の活動にも参加している。その後、1954年に渡仏しヨーロッパの様々な版画に触れ、帰国後は晩年まで詩情溢れる作風で制作を重ねた。

駒井哲郎 アトリエにて 1967

また、詩画集の制作をはじめ、文学者らとの協働でも知られ、『銅版画のマチエール』(1976)といった著作も多数残している。技法を丹念に探求するなど、その創作への姿勢は、同時代のみならず、後の作家たちにも大きな刺激や影響を与えている。

駒井哲郎 Le Rêve(星月夜[夢No.3]) 1950 アクアチント、メゾチント、ドライポイント 世田谷美術館蔵 福原義春コレクション © Ari Komai 2026/JAA2600113
銅原版《束の間の幻影》 1951 個人蔵(世田谷美術館寄託) 撮影:上野則宏

世田谷美術館の福原義春コレクションを主軸とする本展では、油彩《作品名不詳(河岸風景)》や、童話『夢を追う子』のために制作された挿絵原画など初公開作品も展示。これまでに紹介される機会の少なかった初期の油彩画も含め、初期から晩年までの多彩な作品から駒井の軌跡をたどる。

会場風景
会場風景

展示は、「版画へのめざめ[1920-1948]」「満ちてゆく夢と抒情[1948-1955]」「白と黒の深淵[1956-1976]」「美しき色彩の世界[1956-1976]」「憧憬と探求―敬愛した作家たちと、愛用品」の全5章構成。代表作の版画に加えて、駒井が影響を受けたオディロン・ルドンや駒井旧蔵の長谷川潔、恩地孝四郎といった国内外の作家の作品、銅原版、制作道具、写真などの資料も並び、豊富な展示品から作家の多岐にわたる創作活動と、その人間像に迫る内容となっている。

駒井哲郎が使った道具 撮影:上野則宏
駒井哲郎が使った道具 撮影:上野則宏
オディロン・ルドン 『聖アントワーヌの誘惑』第1集 3. そして空から舞い降りた大きな鳥が彼女の髪のてっぺんに襲いかかる 1888 リトグラフ 神奈川県立近代美術館蔵 望月冨昉コレクション

10月31日には、作家・フランス文学者の堀江敏幸を迎えた講演会「駒井哲郎の装幀から見えてくるもの」を開催。本展の図録には、堀江の書き下ろしテキストや、駒井の長男の駒井亜里へのインタビューなどが収録されている。

展覧会図録書影

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