
徳島県庁 出典:Wikimedia Commons(663highland / CC BY 2.5)
徳島県の新ホール整備計画をめぐり、建築家・石上純也が設計した旧ホール計画を紹介する展覧会が、徳島市の万代中央ふ頭で開催される予定だったものの、開催直前に中止となった問題で、徳島県はTokyo Art Beatの取材に対し、同ふ頭での開催を見送るよう要請した理由について説明した。
県によれば、中止要請の主な理由は、展覧会の内容そのものではなく、会場である万代中央ふ頭の利用目的との関係にあるという。県は、同ふ頭を一般的な会館やホールとは異なる場所と位置づけており、民間主導によるにぎわいづくりやまちづくり、活性化の拠点として活用を進めている。そのため、今回の展覧会が同ふ頭の目指す方向性に合致しないと判断したと説明する。
県担当者は、展覧会の告知文に「一度立ち止まって、現在進んでいるホール計画を含めて考える機会を設けるべき」といった趣旨の記載があったいっぽうで、万代中央ふ頭のまちづくりや活性化には触れられていなかったと指摘。そのうえで、万代中央ふ頭は県内でも注目度の高い情報発信拠点となっているため、そこで展覧会が開催されることで、展示の趣旨が県の公式見解や県からの情報発信であるかのように受け止められる可能性を懸念したという。
また県は、現在進んでいる新ホール建設への影響も理由に挙げた。旧ホール計画を紹介する展覧会が万代中央ふ頭で開かれれば、新ホール建設をめぐる状況に混乱を招く恐れがあると判断したという。
いっぽうで県は、展覧会の開催そのものを否定するものではないとも強調した。問題視したのはあくまで「万代中央ふ頭」という特定の場所での開催であり、民間が別の場所で開催することについては「問題ない」との見解を示した。

開催見送り要請に至る経緯について、県は、万代中央ふ頭の第一倉庫で展覧会が予定されていることを初めて把握したのは5月25日だったと説明した。その後、内部で事実確認と方針検討を行い、倉庫所有者へのヒアリングなどを経て、5月29日に開催見送りを要請したという。
意思決定は、同ふ頭の利用に関わる県土整備部で行われた。県によれば、5月29日の要請時点では主催者側との直接の接触はなく、県は倉庫の所有者を通じて対応を進めたという。
その後、主催者側から詳しい説明を求める声があったことを受け、6月3日に県担当者が倉庫所有者と主催者に対し、行政判断の理由を説明した。県は今後も、必要に応じて丁寧な対応を行うとしている。
今回の中止要請は、開催予定日の直前に行われたため、表現活動への介入ではないかとの批判や懸念を招いている。この点について県担当者は、結果的に直前の要請となったことを認めたうえで、展覧会内容や表現そのものを否定する意図はないと説明した。
県担当者は、5月25日に展覧会開催を把握して以降、会場利用のルールと照らし合わせて行政手続きとして判断したとしつつ、「結果的に直前になったことについては、丁寧な説明が必要だった」との認識を示した。
今回の県の説明により、中止要請の理由は、展示内容そのものではなく、万代中央ふ頭という県が関与する場所の利用目的との整合性にある、という県側の立場が明らかになった。ただし、公共性のある場所での表現活動や政策検証の機会に対して、行政がどこまで関与できるのかという論点は残っている。