公開日:2022年8月23日

演劇・ダンスを軸に、芸術文化の未来を作る「東京芸術祭 2022」が9月1日からスタート。3か月間の会期から見どころ作品をピックアップ

開催は9⽉1⽇から12⽉11⽇まで。宮城聰、岡田利規、⼭本卓卓×北尾亘、倉田翠らの演出作、片桐はいり、佐々木蔵之介の出演作など注目作を多数上演

東京芸術祭 2022

都市と人につながる芸術祭がスタート

豊島区池袋エリアを中心に開催する「東京芸術祭 2022」は、東京発の多彩な芸術⽂化を通して世界とつながることを⽬指す都市型総合芸術祭だ。

スタートから今年で7年目を迎え、公演だけでなく、社会課題の解決、人材育成、まち作りといった、エデュケーションやアウトリーチにかかわるプロジェクトも中・長期的に展開しているのが特徴で、今回は上演・配信・地域を巻き込む催しなどからなる「東京芸術祭プログラム」と、教育普及の枠組みである「東京芸術祭ファーム」を2つの柱としている。

東京芸術祭

また、あらゆる人が芸術文化に触れられる環境の創造を目指し、上演作品の多⾔語対応⾞椅⼦席の⽤意会場までの送迎対応など、障がいをもつ人々のための様々なサポートも充実している。ここでは、上演作品を中心に同芸術祭の見どころをピックアップしていきたい。

評価の高い海外作品を一挙紹介

ルーマニアを代表するシルヴィウ・プルカレーテが上演台本・演出を担当する『スカーレット・プリンセス The Scarlet Princess』(東京芸術劇場 プレイハウス、10月8日〜11日)は、ヨーロッパ三⼤演劇祭のひとつであるルーマニア・シビウ国際演劇祭のワールドプレミアで⼤きな話題となった作品。歌舞伎の名作として名高い鶴屋南北「桜姫東⽂章」を原作に、これまで⾒たこともないようなヴィジュアルとスペクタクルが⽴ち上がる。

The Scarlet Princess 2018 Photo by Sebastian Marcovici

世界最高峰の演劇はスクリーン上映でも楽しめる。『WORLD BEST PLAY VIEWING ワールド・ベスト・プレイ・ビューイング』(東京芸術劇場 シアターイースト、10月5日〜9日)では、日本の文楽から大きな影響を受ける太陽劇団『モリエール』『最後のキャラバンサライ(オデュッセイア)』、イヴォ・ヴァン・ホーヴが演出したインターナショナル・シアター・アムステルダムの『ローマ悲劇』の3作品が特別上映される。1作品あたり2500円(一般、セット券もあり)という手頃な価格で海外の大規模作品に触れられるまたとないチャンスだ。

太陽劇団 最後のキャラバンサライ(オデュッセイア) © Michèle Laurent

宮城聰が主宰する「SPAC-静岡県舞台芸術センター」が上演する『夢と錯乱』(東京芸術劇場 シアターイースト、10⽉14⽇〜16日)は、2019年に亡くなったフランス演劇界の巨匠クロード・レジが自身最後の演出作として選んだひとり芝居を、演出・宮城聰と出演・美加理の座組で上演する注目の一本。薬物の過剰摂取で27歳の若さで死去した詩人ゲオルク・トラークル、彼が死の直前に遺した散⽂詩思索的な世界を表現する。

夢と錯乱 撮影:三浦興⼀

日本の注目作品も続々

ワンコイン500円で観られる野外劇『嵐が丘』(GLOBAL RING THEATRE(池袋⻄⼝公園野外劇場)、10⽉17⽇〜26日)を演出するのは、パントマイムで知られるカンパニーデラシネラ主宰の小野寺修二だ。英国の作家エミリー・ブロンテによる⽂学史上の名作を⼤胆に再構成し、池袋駅西口の円形舞台で上演する同作には、片桐はいりも出演する。

(左)⽚桐はいり (右)⼩野寺修⼆ 撮影:鈴⽊穣蔵 

現代演劇において海外での評価を年々高めているチェルフィッチュ主宰の岡田利規は、舞台映像デザイナーの⼭⽥晋平とともに取り組んできた「映像演劇」の新作、映像演劇『階層』(東京芸術劇場 シアターイースト、10⽉19⽇〜25⽇)を発表。俳優たち本人は登場せず、空間に配置されたパネル状のスクリーンに投影される等⾝⼤の俳優の映像が、特異な演劇的空間と時間を編んでいく。

映像演劇『階層』 Photo by Kaori Itoh

この数年で熱い注目を集める倉田翠が主宰するakakilile『捌く‒Sabaku』(東京芸術劇場 シアターウエスト、10月29日〜30日)を上演する。薬物依存の回復施設の⼊所者たちやビジネス街である東京・丸の内で働く人々など、舞台芸術と直接的なかかわりのない人たちとの協働から、人間の衝動欲求を注視するような作品を作ってきた倉田。2017年に初演された本作では、ある種の儀式的な時間を提示する。

捌く‒Sabaku ©Kai Maetani

⼭本卓卓×北尾亘『となり街の知らない踊り⼦』(東京芸術劇場 シアターイースト、11⽉4⽇〜11⽉6⽇)は、現代社会に蔓延する「他者への無関⼼」「無意識のうちの暴⼒」を描き出す⼭本卓卓のテキストと、人、電車、犬など25の役を巧みに踊り演じ分ける北尾亘の⾝体がコラボレートした作品。演劇でもありダンスでもあるハイブリッドな表現に注目だ。

となり街の知らない踊り⼦ 撮影:鈴⽊⻯⼀朗

このほかにも注目の上演作品、プログラムが盛りだくさん

以上、主だったものをピックアップしてきたが、1989年から続く地域密着型の演劇祭である「第34回 池袋演劇祭」(豊島区内14会場、9月1日〜30日)、日本とタイの戦後史をタイの歴史学者が語るレクチャーパフォーマンス『An Imperial Sake Cup and I ー 恩賜の盃と私』(東京芸術劇場 シアターイースト、10⽉28⽇〜30⽇)、豊島区の東⻄に伝わる⻑崎獅⼦舞、冨⼠元囃⼦、雑司ヶ⾕⻤⼦⺟神御会式万灯練供養を中⼼とした⺠俗芸能を上演する「⺠俗芸能 in としま 2022」(GLOBAL RING THEATRE(池袋⻄⼝公園野外劇場)、10月30日)、能楽界を代表する⼀流の演者による能楽公演「第35回 としま能の会」(豊島区⽴芸術⽂化劇場(東京建物Brillia HALL)、11月14日)、フランスを代表する劇作家モリエールの名作をルーマニアの演出家シルヴィウ・プルカレーテが演出し、佐々木蔵之介が主演する『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』(東京芸術劇場 プレイハウス、11⽉23⽇〜12⽉11⽇)など、注目作は多い。

An Imperial Sake Cup and I ー 恩賜の盃と私 Photo by Santiphap Inkong-ngam
守銭奴 ザ・マネー・クレイジー

また、教育普及を主目的とする「東京芸術祭ファーム」の枠組みでも、アジアで活動する若手作家らによる試演プログラムとして「Farm-Lab Exhibition パフォーマンス試作発表」が行われる。

フィリピンで活動するセリーナ・マギリュー『タイトル未定』(東京芸術劇場アトリエイースト・アトリエウエスト(予定)、10⽉7⽇〜9⽇)では、⻄洋の⼆元的な性の概念とは異なる、アジアにおけるクィアをコンセプトにした創作を発表。また、演出家と批評家のユニットであるy/n(橋本 清+⼭﨑健太)は、『Education (in your language)』(東京芸術劇場アトリエイースト・アトリエウエスト(予定)、10⽉7⽇〜9⽇)を通して、レクチャーパフォーマンスの実験を行う。この2作は、ともに無料(要申し込み)。新たな世代の表現に触れるチャンスとして、ぜひ足を運んでみたい。

2021年度 城崎国際アートセンター アーティスト・イン・レジデンス プログラム y/n『カミングアウトレッスン』試演会 城崎国際アートセンター(2021 ) Photo by bozzo

東京芸術祭 2022

会期:2022年9⽉1⽇〜12⽉11⽇
会場:東京芸術劇場、GLOBAL RING THEATRE(池袋⻄⼝公園野外劇場)、豊島区⽴芸術⽂化劇場(東京建物 Brillia HALL) ほか東京・豊島区池袋エリア

https://tokyo-festival.jp/2022/

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