公開日:2026年8月11日

【対談】トニー・アウスラー × 角由紀子。「AIは“普通”へ向かう」──超常現象と“本当のモンスター”をめぐって

魔術、心霊研究、UFO、AI。テクノロジーと人間の想像力を見つめてきたトニー・アウスラーに、角由紀子がインタビュー

左からトニー・アウスラー、角由紀子 撮影:西田香織

映像、彫刻、音、光を組み合わせ、不気味でありながらユーモラスな作品を生み出してきたトニー・アウスラー。立体物に映像を投影する表現を早くから開拓し、現代のプロジェクションマッピングにもつながる先駆的な仕事で知られる。

日本初の大規模個展「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」が、東京・虎ノ門のTOKYO NODEで開催中だ。初期から現在までの代表作に加え、デヴィッド・ボウイ、グレン・ブランカとの共作《空(くう)》や、本展のために制作された大型インスタレーション《キメラ》など約50点が並ぶ。

アウスラーの作品を貫くのは、テクノロジーへの関心、魔術、心霊研究、UFO、未確認生物、量子物理学、そして人間が何かを「信じる」ことまで及び、その境界をめぐる探究が、作品の奥深くに流れている。

オカルトや超常現象を長年探求してきた、オカルト研究家の角由紀子が、アウスラーの祖父と心霊研究、妖怪、AI、UFO、そして「本当のモンスター」の正体について聞いた。

左からトニー・アウスラー、角由紀子 撮影:西田香織

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会ったことのない祖父との対話

──展覧会、とてもおもしろく拝見しました! いろいろお聞きしたいことがあるのですが、まずはトニーさんのお祖父様について聞かせてください。お祖父様はマジシャンで、心霊研究にも関わっていたそうですね。直接お話ししたことはありますか?

トニー・アウスラー 祖父は私が生まれる前に亡くなったので、残念ながらありません。ただ、私はいまも祖父との大きな対話を続けているように感じています。その対話は、今回展示している《計り知れないもの(Imponderable)》にもつながっています。本作は、第一次世界大戦と第二次世界大戦のあいだを舞台にした、実話に基づく物語で、アーサー・コナン・ドイル、ハリー・フーディーニ、著名な霊媒師マージャリー・クランドン、そして私の祖父母が登場します。

「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」(TOKYO NODE)会場風景より、《計り知れないもの(Imponderable)》(2015-16) 撮影:灰咲光那

──主人公は誰なのでしょうか?

アウスラー ひとりの主人公がいるというより、彼らの関係そのものが主人公なのだと思います。マージャリー・クランドンは降霊会を行い、暗闇で光る塗料を身体に塗ってパフォーマンスをすることもありました。トランス状態で文章を書き、コラージュを作り、行為を写真で記録していた。私は彼女を、プロト・シュルレアリスト、あるいはフォーク・シュルレアリストのような存在として考えるようになりました。

いっぽう、私の祖父はマジシャンでしたが、のちにカトリックへ改宗し、聖書を再話した本を書いています。コナン・ドイルも、合理的な探偵シャーロック・ホームズを生み出しながら、私生活では妖精や幽霊を信じていました。彼らはみな創造的でしたが、それぞれ異なるものを信じていました。理性を信じるのか、宗教を信じるのか、それとも心霊現象や魔術を信じるのか。自分の人生を何によって導くのかをめぐって、彼らは揺れていたのです。それは、現代の私たちにも通じる問題だと思います。

「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」会場風景 撮影:灰咲光那

──トニーさん自身は、魔法的な出来事や超常現象を経験したことがありますか?

アウスラー 何度か予知夢のようなものを見たことがあります。ただ、本当に予知夢だったのかはわかりません。シンクロニシティを超常的なものと考えるなら、多く経験してきたとも言えます。アーティストは、そういうものを受け取りやすいのだと思います。それも制作プロセスの一部です。ある瞬間、空気中から何かをつかみ取るようなことが起こる。そしてあとになって、それがどうやって作品に現れたのか、自分でも不思議に思うのです。

──では、情報テクノロジーが人間にもたらすストレスや、現在の社会を先取りしたような作品も、予知夢によって生まれたのでしょうか?

アウスラー 面白い。いい質問ですね(笑)ただおそらく予知夢というより、テクノロジーの影響ですね。私は子供の頃、とても長い時間テレビを見ていました。その後、美術の文脈でビデオ・テクノロジーに出会い、テレビからインターネットへ、ソーシャルメディアの台頭からAIへ、その変化を生きてきました。テクノロジーを長いあいだ考え続けてきたから、作品が未来を先取りしたように見えるのだと思います。

「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」会場風景より、《mAcHiNe E.L.F.》(2023) 撮影:灰咲光那
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