兵庫県北部の豊岡エリアを会場とする「豊岡演劇祭2022」が2022年9月15日から25日までの日程で開催されることが発表された。新型コロナウイルスの影響を受け前回の開催を断念した演劇祭にとって、今回は念願の開催となる。
ディレクターを務める平田オリザは、会見のなかで「満を持しての開催。(豊岡市内に新設された)芸術文化観光専門職大学の学生にとっては初めての演劇祭になる。観光のみならず産業界と連携して、地域とつながる演劇祭を目指す」と述べる。新たな会場に養父市、香美町も加わり、作品公演は約80団体が参加、関連イベントも含めると100を超える催しが行われる日本最大級の演劇祭だ。
平田がディレクションする「ディレクターズプログラム」には9つの作品がラインアップされている。「目玉」と太鼓判を押す山海塾『降りくるもののなかで − とばり』や、異なる5つの会場で上演される岩下徹×梅津和時 即興セッション『みみをすます(谷川俊太郎同名詩より)』。平田オリザの戯曲をベルギーの演出家が演出し、ベルギー批評家賞新人賞を受賞したカミーユ・パンザ/エルザッツ『思い出せない夢のいくつか』や、チューリッヒの劇場と国際共同制作したノイマルクト劇場+市原佐都子/Q『Madama Butterfly』のように、国際性の強い作品も並ぶ。
また「地域とつながる」というコンセプトが演劇祭の全体を貫くものになっているのが特徴的だ。ディレクターズプログラムのPlatz市民演劇プロジェクト『新・豊岡かよっ!』(作・演出:内藤裕敬)は、豊岡市の合併を題材に市外・県外から同市を訪れた観客が地域についての知識を得るきっかけになる内容だという。また、烏丸ストロークロック『但東さいさい』のように、但東地域に3年間にわたってアーティストたちが関わり制作した作品もある。
三重県で行われてきたMPADの事業モデルを援用した『よるよむきのさき お食事×文学×リーディング』もユニークな試み。城崎温泉の旅館や飲食店などと提携し、俳優らによるリーディング公演を料理を食べながら楽しむことができる。平田は、将来的にこれを城崎の定番・名物にしていきたいと意欲を示した。同様に「スイッチを押すと始まる一瞬の演劇」を開発・上演してきたスイッチ総研が、観光列車「うみやまむすび」とタッグを組んで各停車駅で小さな演劇が上演される『城崎発演劇列車 西日本観光列車「うみやまむすび」×スイッチ総研』も、地域の財となる作品に成長させたいプロジェクトとのこと。さらに昨年も行われた同作は兵庫県知事のお気に入りの一本だったそうだ。
このほかにもナイトマーケットや演劇祭のための地域通貨の活用など、あらゆるシーンで演劇と地域のつながりが意識された豊岡演劇祭について、平田はこう語った。「ここでの演劇は観光や街を知るためのトリガーであって、これをきっかけに豊岡に一度来てもらい、豊岡ファンになってもらうのもこの演劇祭の大きな役割。それもあって、とくにディレクターズプログラムでは、アーティストとしてのコンセプトに偏らないものになることを意識した」。
コロナ禍を経て、芸術に限らず様々なシーンで人と人が関わることの重要さが再考されている今日。そういった時代のニーズを受けた演劇祭へと「豊岡演劇祭」は成長していくかもしれない。
豊岡演劇祭2022
会期:2022年9月15日〜25日
開催エリア:兵庫県豊岡市、養父市、香美町
チケット発売:但馬地域先行発売は7月28日12:00〜/全国発売は8月4日12:00〜
https://toyooka-theaterfestival.jp/