公開日:2023年8月28日

第18回西洋美術振興財団賞を小野寛子(練馬区立美術館主席学芸員)と崔敬華(東京都現代美術館学芸員)が受賞

西洋美術関連展を対象に優れた業績を上げた学芸員らを顕彰。

左から「日本の中のマネ━出会い、120年のイメージ━」展と「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」の会場風景

公益財団法人西洋美術振興財団(高階秀爾理事長)は8月25日、第18回西洋美術振興財団賞の受賞者を発表した。個人を対象とする学術賞は、小野寛子練馬区立美術館主席学芸員と崔敬華(チェ・キョンファ)東京都現代美術館学芸員に贈られる。団体対象の文化振興賞は、該当がなかった。

2006年に創設された本賞は、過去2年間に国内で開催された西洋美術関連展を対象に、西洋美術に対する理解促進や研究発展に顕著な業績をあげた学芸員や団体を顕彰するもの。今回の選考審査委員は、大髙保二郎・早稲田大学名誉教授、美術史家の太田泰人、笠原美智子アーティゾン美術館副館長、建畠晢埼玉県立近代美術館館長、三浦篤大原美術館館長の5人。受賞者の選考理由は以下の通り(大髙選考審査委員長の総合選評より抜粋)。

・小野寛子(対象展:練馬区立美術館「日本の中のマネ━出会い、120年のイメージ━」2022年9月~11月)

「マネから日本へ、という我われ日本サイドからのマネへの憧憬と受容の在り様を執拗かつ精確に調べ上げて一つのストーリィに仕立て上げたのが小野寛子氏であり、そこには本テーマに関しての積年の研鑽が活きている。小野氏は、日本人には理解が難しいが、しかし絵画史の本質に通じるマネ芸術を敢えて選ぶことにより、結果的に我が国の西洋美術受容の可能性と限界をも提示することになった。その意味でも、現代作家福田美蘭のマネへの参照は示唆的なものがあった」

「日本の中のマネ」展の会場風景より、左から中山巍《家族》(1925)と片岡銀蔵《融和》(1934)

・崔敬華(対象展:東京都現代美術館「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」2022年11月~2023年2月)

「(映像作品)《彼女たちの》の場合、ファン・オルデンボルフが本展のために来日して、崔敬華氏との緊密な対話をとおしてのコラボレーションにより成立した。大正から昭和の混乱と戦争の時代、林芙美子と宮本百合子(そして湯浅芳子)という、政治と文学の歴史に名を刻む二人の日本人女性の波乱に富んだ生涯をクローズアップさせながら現代を生きる人たちの声と共鳴させて、ジェンダー、政治、戦争といった我われが抱える今日的な問題を突き付けている。このユニークで刺激的な映像作品の成立は、ファン・オルデンボルフの映像制作に対して、崔氏からの積極的な資料提供と全面的な協働があってこそ可能となった」

「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」の会場風景より、《彼女たちの》(2022)

顕彰式は、10月30日に東京・上野で行われる。

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